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みっかめ


 ぼくは学校のトイレの個室の中にいた。

 薄汚れた壁がぼくを取り囲み、檻の中にいるかのような圧迫感に襲われていた。

 かぶりを振って、そんな考えを頭の中から排除する。

 今、ぼくの頭の中には恐ろしい想像が浮かんでいた。


 昨日、ぼくは学校を休んだ。

 それにもかかわらず、昨日は誰もぼくにプリントのひとつも届けに来なかったのだ。


 うちの中学校では、学校を休んだ人の家には、必ず誰かが今日の授業の分のプリントを届けに来ることになっている。

 それが届かないというのは、明らかにおかしいのだ。


 いつものぼくなら、その違和感を小さなものとして見過ごしたかもしれない。

 けれど、今のぼくの頭の中に思い浮かんだのは、恐ろしい想像だった。




 もしかしたら昨日、自分のドッペルゲンガーが、ぼくの代わりに学校へ行ったのではないか。




 その真偽を確かめるために、ぼくは今ここにいる。

 今日もぼくは学校を休み、自分のクラスの目の前にあるこのトイレの個室で、ドッペルゲンガーが来るのを今か今かと待ち構えているのだ。


 ドッペルゲンガーと会ったら、その人間は死んでしまうと言われている。

 だから、ぼくはドッペルゲンガーと顔を合わせるわけにはいかないのだ。


 そして、汗でだらだらになりながら待ち続けて、どれぐらい経っただろうか。

 男子生徒が二人、トイレに入ってくる気配がした。


「ってかマコト。お前マジでアレやったの? 『鏡のトイレ』のやつ!」


 聞きなれた声が聴こえた。

 聞き間違えるはずがない。

 それは、ぼくの親友の哲也てつやの声に他ならない。


「昨日もやったけど、何も起こらなかったよ? やっぱり嘘なんだよ、ああいうのって」


 そして、次に聴こえてきた声にも聞き覚えがあった。


 まこと。

 それはぼくの名前だ。

 そしてこの声は、間違いない。


 あれは、ぼくのドッペルゲンガーだ。


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