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いちにちめ
ぼくたちの学校には、妙な噂が流れている。
いわゆる七不思議というやつだ。
その中に、特にまことしやかに囁かれているものが一つある。
生徒たちの間では『鏡のトイレの怪』と呼ばれている七不思議だ。
真夜中の二時。
三階のトイレの洗い場に備え付けられている鏡に向かって「お前は誰だ」と言うと、鏡の中の自分が笑い始め、もう一人の自分が鏡の中から姿を現す。
いわゆるドッペルゲンガーというやつだ。
ドッペルゲンガーは、しばらくはその辺を徘徊しているが、ちょうど一週間後の真夜中の二時に、その人間の命を奪いに来るという。
……バカバカしい。
そんなことがあるわけないのに。
今、ぼくの目の前には、例の鏡がある。
噂を聞いて、それならば試してみようじゃないかと思い至り、夜中に家を抜け出してここまで来たのだ。
そのまましばらく眺めてみるが、何の変哲もない普通の鏡でしかなかった。
やはり噂は噂。
本当にドッペルゲンガーなどというものがいるわけがないのだ。
特に何が起こるでもなかったので、ぼくは夜の学校をあとにした。