序
ぽちっ、ぽちっ。
50過ぎの男が二人、PCの画面とルールブックを交互に見詰めている。
「第1ターンは、やることが多いな」
「初期設定と第1ターンが肝心です、こまめなセーブを」
「ああ、もう。100コマンドまでいってたのに」
そう言って、またリロードする。
「コマンドを200使い切りますよ、第1ターンだけはね」
「えーと。あとなんだっけ?」
「200、300ターン過ぎて、最初の落としに気づくんですよねぇ」
「おどかすなよ」
「でも、部隊名や艦隊名を考えるのはいいもんです」
「ああ、これだけは楽しいな。第41強襲揚陸艦隊・・・と」
「段取り八分、という言葉もあるんですよ」
「お、おう。えいっ、まただ」
「ああ、それはトラップですよ。ボーナスに見えますが」
「もう少しなんとかならんのか。その、操作がうざい」
「だって、UI改造版をディスったのは、東條さんですよ」
「うう、だってぇ。あれではロジックがわからないものぉ」
「これだと700ターン完了まで、1週間はかかりますよ」
「ふん。初志貫徹だ」
「楽しみ方は、それぞれですがね」
「悪いか」
「いろんな設定で進行の違いを比べるのが、シミュレーションかと」
「いーや。突発イベントへの対応が、指揮官の決心だ」
「ま、それぞれです」