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LN東條戦記第1部「不戦宰相」  作者: 異不丸
第1章 卿に組閣を命ず
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初閣議

昭和16年10月18日土曜日、午後5時、首相官邸


親任式を終えた東條内閣の閣僚は、総理大臣官邸で初閣議に臨んだ。

ここで、東條首相は再度白紙還元の御諚を披露し、日米交渉妥結への全員の協力を求めた。これには全閣僚が同意した。さらに東條が言う。

「念のために申し上げておく。9月6日の御前会議の決定を白紙に戻した今は、和戦のいずれにも定まっておりませぬ。これより大本営との連絡会議を開き、国策を再検討する所存です」

全閣僚が頷く。


「さらに申し上げるが、さきほど閣僚名簿を捧呈の後、木戸内府に申し上げた」

「「「「・・・」」」」

「白紙還元の御諚は統帥部にも思し召しや、と。」

「「「「ほーぅ」」」」

「内府は言われた。両総長を召すと」

「「「「!!」」」」

「一両日の内に、再検討の要項をお配りするので各省で検討されたい」

「「「「承知!」」」」

「連絡会議は来週の木曜日から開始したい。その前に内閣の見解を統一したい」

「明日は日曜日、確かに日数はない」

「要項の順番から片づけてもらいたいと思う」

「「「「片づけよとは軽く思われたものだ」」」」

「そこで、帝国の国力、米英の国力を示す陸軍省の資料を用意しました」

「「「「え、えーっ」」」」

「また、前内閣の調査資料、総力戦研究所の模擬演習の報告書もある」

「総理、それは!」

「それはまずい。その結果は、帝国の敗・・・いや、むにゃむにゃ」

「へーっ、そんな便利なものがあるのですか。それはありがたい」

「捗りますなー」

「総理、軍機を出すのはいかがなものでしょうか?」

「なんの、海軍大臣。統帥部は早さを求めているのです」

「それに、海軍の資料はここにはありませんぞ」

「「「「そうだ、そうだ。日曜出勤のこっちの身も考えろ」」」」

「げふんげふん。ま、それならよろしい」


星野書記官長は、二人の言い争いにかまわず、さっさっと資料を配布する。

①内閣総理大臣直轄総力戦研究所「総力戦机上演習」 昭和16年8月

②政府委嘱満鉄調査部「新情勢ノ日本政治経済ニ及ボス影響調査」 昭和16年8月

③陸軍参謀本部(出仕)新庄健吉主計大佐「米国国力見積」 昭和16年7月

④陸軍省経済戦研究班(秋丸機関)「英米合作経済抗戦力調査」 昭和16年7月

⑤陸軍省戦備課「南方処理ノ一想定ニ基ク帝国物理的国力判定」昭和16年1月 


鈴木企画院総裁は、資料の内容を検めて驚愕した。

(なんということを。これでは帝国国力は一目瞭然)

(まさか、うちの数値と大きく相違しないだろうな)

(海軍省や軍令部にも個別の数字を出したことがあったが)

(だ、大丈夫かな~)

鈴木は冷や汗をかいていた。


「なお、大本営政府連絡会議だが、今回は蔵相と企画院総裁にも出席してもらう」

「おう!」

「ぎく!」

「最後です。このあと政府声明を出します」

星野書記官長がガリ版の声明草稿を配る。数人が首を傾げたが、ほとんどの者は頷いている。


『政府声明

支那事変を完遂し大東亜共栄圏を確立し世界平和に寄与するは帝国の国是なり。

今や未曾有の重大世局に臨む政府は、

外は愈々各国との交誼を厚くし、内は益々国防体制を完備し、

御稜威の下、挙国一致、聖業の達成に邁進せんことを期す』


「総理、7時から放送です」



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