↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
LN東條戦記第1部「不戦宰相」  作者: 異不丸
第4章 坂のはじまり
PR
41/43

明治節

昭和16年11月3日月曜日、首相官邸。


今日は明治節で祭日である。

早朝、東條首相は明治神宮での参拝をすます。赤松秘書官は、時計を見る。

東條の秘書官は3人になった。赤松に加えて、海軍省から海軍中佐の鹿岡円平が、内務省からは地方局の広橋真光が着任した。広橋は伯爵である。内務省枠と決められた中で、華族を選び出して指名する。この辺りが、星野書記官長の非凡なところだ。


首相秘書官が全員揃ったので、毎週の日課を打ち合わせる。

「これからは来訪者を制限するわけにはいかん」

「お召しと上奏は最優先だ」

「陸軍省と内務省は毎日行って決裁しないと、事務が滞る」

「では」


『首相日程 昭和16年11月 

月曜午前:内務省、総理官邸、正午:省部長次長会食、午後:陸軍省

火曜午前:総理官邸、10時閣議、午後:陸軍省、内務省

水曜午前:陸軍省局長会議、10時枢密院、大本営、正午:内務省局長会食、午後:総理官邸、面会

木曜午前:陸軍省、10時大本営政府懇談会議、午後:総理官邸、内務省、陸軍省

金曜午前:総理官邸、10時閣議、午後:内務省、陸軍省

土曜午前:陸軍省局長会議、10時大本営情報交換、正午:対満事務局、午後:面会または出張

日曜終日:公邸または自邸にて静養

備考1:上奏その他宮中の行事等により日程を変更することあり

  2:状況急を要するものは随時決裁を受くるものとす

  3:毎月第一、第三木曜午后1時30分大政翼賛会総務会に出席するを例とす』


東條は秘書官らと毎週の日課を打ち合わせた後、訓示を行った。

「今日は明治節である」

「明治大帝と元老諸公らは、帝国の独立を全うされた」

「そのために捨てるべきは捨てられた」

「おおいに習うべきところだ」

「「「こくり」」」

「明治維新は日本国の独立が目的であった。武士たちは、己の身分と特権を捨てた」

「肝に銘ぜねばならん」

「「「こくり」」」

「独立、自存自衛は大きな山であり、どこからも見える」

「頂上へ至る道は複数ある。どれも一長一短だが、坂道には違いない」

「「「ふうむ」」」

「どれか1つを選ばねばならん。その後は上るだけだ」

「難路であったとしても、上りきるか。あるいは、元に戻るかだ」

「戻れば、頂上は遠くなる」

「「「なるほど」」」

「今、ようやく道の入り口についた。これからは、ずっと坂道である」

「きっと、帝国の独立を護る。全員、心して務めてもらいたい」

「「「はっ」」」


9時になると、東條は参内して明治節の記帳をする。

官邸に戻ると、秘書官らに告げた。

「今日の勤務はここまでだ。ご苦労だった」



その頃、志郎と吾朗の親子も、明治神宮に参拝していた。

護衛の清水と岩山も一緒だ。今日は、4人共に背広を着ている。参拝をすませたら、今夜は横浜に泊まる予定だ。

(はじまりがここだった)それからの2週間あまりを、清水憲兵中尉は考えていた。

清水と岩山は、志郎の講義を毎日聞いている。志郎が強い国を作ろうとしているのがわかった。

(しかし、どうも迂遠ですね)それが岩山憲兵伍長の感慨だった。

(それが、国力というものだろう)清水の答だった。

(いずれ、断崖絶壁に遭うかも知れません)

(やり直せばいいのさ、何度でも。それも強さだろう)

(強い国です、それが出来るのは)

向こうに立っている岩山がこちらを見ていた。二人は目線で、頷き合った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。