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LN東條戦記第1部「不戦宰相」  作者: 異不丸
第3章 慎重なる考究を加うる
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国策検討会議 第二日 その1

昭和16年10月24日金曜日、午後2時、宮城


第60回となる大本営政府連絡会議がはじまった。

「第1項です。対米戦争の勝算如何」

「「よし来た」」

「まずは、開戦の形態。宣戦布告、奇襲、強襲・・・」

「議長。奇襲云々は作戦の問題。説明する必要を認めない」

「そうですね。統帥事項ですね」

「「やったー」」

「しかし、宣戦は政府所轄です。宣戦布告について」

「「なにぃ」」

「統帥部にお聞きしたい。まさか、宣戦布告なしで?」

「外相。だからそれは作戦の問題だと」

「では、停戦や講和交渉も統帥部でおやりになるのか?」

「「なにを!」」

「外務省としては、宣戦布告なき戦争の終結には責任が取れません」

「そうだな。政府は責任が取れん」

「も、もちろん、宣戦布告はやってよい」

「そう、やればよい」

「では、奇襲ではありませんな?」

「作戦に関しては言えん。宣戦布告はする。それで察しろ」

「お上は、正々堂々のやり方をお好みです。卑怯未練の奇襲開戦なぞ容れられまい」

「「うー」」

「そうです。国際法に則り、どこからも非難が出ない、正々堂々の戦争」

「「く、国際法?」」

「外相、具体的にどんな条項があるか」

「帝国はパリ条約に批准しております。自衛戦争以外の戦争はできません」

「自衛戦争はできるのだな?」

「実は、加盟国内でも議論があり、明確な統一見解はありません」

「どうやれば、違反にならないのか?」

「加盟国間で見解が合えばよろしい。米国は自衛戦争は可としています」

「では、よいのだな?」

「精確には米国が受諾する必要がありますが・・・」

「「そんなもん、するわけがないだろ!!」」

「米国議会の解釈は議事録で残っています。布告の中で明言すればよろしいかと」

「「ほっ」」

「ちなみに、米国は経済封鎖も戦争という解釈をしています」

「「なんと!」」

「それみろ。帝国の開戦は反撃ではないか」

「ですから、帝国がそれを指摘し米国が認める必要があるのです」

「まだ、やっとらんのか?」

「いきなり、これは戦争ですね?、では交渉になりません」

「わかった、わかった」

「まとまる話もまとまらない。でしょ?」

「この話は、もうよかろう」


議事は進む。

統帥部はほとんどの問題を作戦事項として不問を主張したが、重光外相と賀屋蔵相が食い下がる。議長の東條首相は、統帥部の主張を認めつつ、外相と蔵相の発言は止めなかった。慎重なる考究と急速なる決定を両立させようとすれば、一つずつ議事を前に進めるしかない。

午後6時に弁当休憩を取り、7時より再開となった。


「次は、如何なる事態条件をもって勝利、また敗北と判断するか」

「「それも作戦事項、よって」」

「そうはいきませんよ」

「「なにを」」

「そこに至る経過は作戦事項ですが、結果である事態状況は聞かせてもらう」

「統帥部の回答を求めます」

「海軍部では、開戦およそ半年で米英蘭の主要艦艇を撃滅する」

「陸軍部も、海軍と共同して主要地を占領ないし確保する。半年から1年だ」

「占領地には、蘭印・マレーの資源地帯が入ってますね?」

「あたりまえだ」

「それで政府が原材料を還流すれば、帝国は不敗だろう」

「はい。それは政府も研究しました」

「では、和戦の決は明確だな」

「「はっはっは」」

「2つ、質問があります」

「「まだあるのか」」

「1つは、南方資源地と国内工場地との間の商船の護衛体制」

「もう1つ、資源地とその防衛に必要な地域以外には進出しませんね?」

「1つめは、連合艦隊がしっかりと守る。安心せよ」

「連合艦隊の全力ですか?」

「ばか言え。1個か2個戦隊を回す。それで十分だ」

「そうはいきません。必要な資源と食糧を還流するには、輸送船が300万トン」

「隻数で言えば、500隻から700隻。10隻で船団を組むと50以上」

「「えええ」」

「たしか、1個戦隊は4隻から8隻ですな。2個戦隊で50船団は無理でしょう」

「1個戦隊で2船団としても、25戦隊。100隻の軍艦が要る」

「ば、ばかな。聯合艦隊の半分も回せるか!」

「では、どうします?」

「船団が沈めば生産はできません。軍需も滞りますよ」

「軍令部長。開戦初頭はともかく、決戦後はもう少し回せんのか?」

「いや、総長。島嶼根拠地隊にもフネは要る・・・」

「海軍はいったいどこまで進出するつもりですか?」

「「げふんげふん」」

「休憩を取ります。20分」

「お、首相。ありがとう」



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