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第玖話 lost memory

 ……こんな風に曇りのない笑顔を誰かから向けられたのは、いつ以来だっただろう。

 ――もしかしたら、初めてだったかもしれない。

 言葉を失い、木に懐いた那由他に向かって、元気良く頭を下げ、

「え、えーと、ふ、ふつつか者ですが! よろしくお願いします!」

やる気に満ち満ちた眼差しでこちらを見上げてくる。

 「えっと、えっと。村の長さまは、お仕事について何にもお話ししてくれなかったんですけど、私、何をしたらいいですか?」

 「――先程、話した通りだ。私の糧となる事が、巫女いけにえの仕事。十日に一度、私に血を差し出せばそれで良い。住まいへ案内する。後はそこで好きに過ごすと良い」

 木から身体を引き剥がし、何とか立ち直った那由他は路の先にある小屋へと彼女を導いた。

 村の長屋の一屋分程の広さの小屋。歴代の巫女達が日々戦々恐々としながら、任期満了の日を待ちわびつつその日暮らしを続けてきた場所だ。

 扉を開けて入るとすぐ土間があり、水場とかまどが据えられている。板の間には囲炉裏があり、寝具一式が部屋の隅に畳んで置かれている。

 鍋やら何やら生活用品は一通り棚に並んでいるし、生活に困る事は無いはずだ。

 「今日登って来た路の途中、先程のあの場所に祠があったのを覚えているか?」

 チエが頷くのを見て、那由他は続けた。

 「週に一度、あそこに村人らからの供物として農作物などが捧げられる事になっている。それと、山の山菜や木の実などは自由に採って良いから、それで日々の食事は間に合わせると良い」

 「分かりました! 早速ですが那由他様、好き嫌いなどございますか?」

 「は、いや、特には……っ、て、おいこら、何処へ行く!?」

 勢い込んで尋ねてきたかと思えば、即座に踵を返し、山の奥へと駆けだしていく元気な少女の背に、那由他は慌てて声をかける。

 「もちろん、那由他様のお夕飯の為の材料調達に参るのですよ! ……て、あれ。ええと、那由他様はもしかしてお食事は……血以外はお召し上がりにはならないので?」

 「いや……そんな事はないが……」

 ああ良かった、巫女の“お役目”はきちんと理解しているようだ……と那由他は少しホッとする。もしかして……まだよく理解できていないのではないのか、という疑惑が晴れたからだ。

 「では、行って参ります。少々お待ち下さいね、今夜はとびきりのごちそうをご用意いたしますから!」

 だが、安心したのもつかの間。キャッキャとはしゃいで山へ分け入っていく少女に、

「こら、だから待て……! 山には獣やモノノケも多く棲んでおるのだぞ!?」

「きゃー、おっきくて美味しそうな猪!」

「は、猪!? あっ、危なっ!!!」

慌ててついていくハメになる。


 ――それは、これから続いて行く、ドタバタな日々の始まりの日。

 「こら、チエ! 待て!」

 京、と名乗る同族が、海を渡ってやって来るその日まで続く……幸せな日常は、こうして始まったのだ。



 ――教会の鐘の音が聞こえて。

 那由他はふと目を覚ました。暖かに温もった布団の中から暗闇の向こう――天井を見上げる。

 ここは愛羽家――千恵の家だ。自分にあてがわれた和室に敷いた布団の上に、今、那由他はいる。

 「今のは……何だ。夢……?」

 既に、夢の記憶は大半が霧散し、揺らぐ残像だけが脳裏に焼き付いている。

 自分に向けられた、屈託のない笑み。

 「チエ……、千恵?」

 口の中で転がすたび、甘やかに響く言霊。

 「何故だ。……何故、まだ記憶が戻らない」

 封印されていた間に弱体化した身体は、今朝方吸った千恵の血のおかげで大方は元に戻った。混乱していた記憶も戻った。

 ――が。肝心の、封印された頃の記憶……まさに、今必要とされる京との因縁が記されているはずの記憶だけがごっそり抜けおち、どうしても思い出せない。

 「今の夢……は」

 歴代、幾人もの巫女が自分に捧げられてきた。その事は既にきちんと思いだした。那由他はその歴代の巫女を全て、少なくとも顔と名前は全部覚えている。

 だが……。

 「あれ……は、誰……だ?」

 夢の少女の笑顔が、思い出せない。思い出そうとすると、取って代わる様に千恵の顔と入れ替わる。

 もう一度。あの夢へ戻れないだろうか?

 那由他は目を閉じる。

 そう、もう一度あの幸せな日々へ――。



 ふと気付くと、……何故だろう。暖かい……が――僅かに息苦しい。何か、少し重たいものが乗っかっている様な。

 けれどそれは不快な感覚ではなく、むしろ程良い熱がじんわりと身体に浸透していく様で心地良い。

 うつらうつらとまだ夢の半ばに意識を漂わせながら、その温もりを楽しむ。

 今の時期の朝晩はまだ冷える――が、血の熱さえ足りていれば、外気の寒暖――暑さ寒さを不快に感じるなどあり得ない身に感じるこの温もりの心地良さと言ったら。

 しばらく布団から出たくなくなりそうだ。

 (……ん、布団?)

 ……妙だ。

 普段の寝床は、いつでも小屋の外。

 例えばそこらの草むらか、丈夫な木の上だとか、枯れ木のうろの中だとか。

 猛吹雪の中に素っ裸で居ても平気な身体だ。当然、野宿をするのに布団など使わない。場合により、枕くらいなら持ち歩く事もあるが……。

 しかしこれは間違いなく敷布団を敷き、掛け布団を掛け、しっかり全身布団に包まっている状態だ。

 しかも、敷布団の下にあるのは霜に濡れた草はらや、ごつごつした小石が散らばる地面や、やや安定性に欠ける木の枝などではない。れっきとした床だ。

 この山で、寝床となり得る床面など、たった一か所にしかない。

 ――巫女の住まいである小屋にしか、そんな物は存在しない。

 もう一つ。布団だって、ただ一組だけしか無かったはずだ。……そう、もちろん巫女の住まいである小屋にある、ただ一組だけ。

 ……これが夢なら良いが。もしも夢でないとしたら、今自分は巫女の住まう小屋で、巫女が寝るはずの布団に転がって寝こけている、という事になる。

 考えれば考える程、ふわふわしていた夢心地がとぐろを巻いてそこを漂う意識を締め付ける。まるで真綿で首を絞めるかのように。

 心地良い眠りにあったはずの意識を慌てて水面へと引き上げ、那由他は恐る恐る目を開けた。

 真っ先に目に映ったのは、小屋の天井。そしてそこから視線を斜め右下へと持っていったところで、那由他は全身を強張らせた。

 身体の上に掛けられた布団のその上で、布団にしがみ付く様にうつ伏せに眠る一人の少女――温もりと、重みと、少しの息苦しさの正体は、つい昨日、新たに迎え入れたばかりの巫女だったらしい。

 告げられた事実の全てをあっさり受け入れ、怖がるどころか意気揚々と山で食材集めに励み、実に楽しそうに鼻歌など歌いながら集めた食材を調理し、出来た料理を嬉々として那由他の前に並べ、綺麗に空になった食器を満足げに眺めた後で、せっせと後片付けに勤しんでいた。


 そう、そうだ。食材集めの為と山に分け入った少女は、食材に関する知識は一通り持っている様で、食べられる山菜やキノコ、木の実と、毒がある等で食べられないものとをしっかり見分け、きちんと必要な分だけ採り分けていた。

 ――が。この山には獣も、モノノケもいる。

 まずから、大きな成獣の猪を見て、最初に浮かぶ感想が「美味しそう」とは……。

 前足で地面を掻き、突撃開始までの秒読みに入る猪を前に、少女は目を輝かせていた。

 その巨体が幼い少女にぶつかればどうなるか。那由他は慌てて間に入り、一言命じた。

 「退け、獣よ」

 九十九神でもない、ただの獣が相手だ。その一言で、猪は脱兎のごとく逃げ出す。

 「あー……牡丹鍋の主役が……」

 那由他の後ろで、少女は残念そうに呟いた後で、

「次は、逃がしません!」

めらめらと闘志を漲らせ、さらに山の奥へと駆けだしていき――

「あっ、こら待てっ!!」

……と。こんな調子で一日中山の中を駆け回るハメになったのだが。

 彼女の作った料理は、美味しかった。物凄く旨い、とはもちろん言えない。あくまで家庭料理として、普通に食べて美味しい、と思える程度だが、それは久々に食べた暖かな手料理で。

 那由他がぼそりと無愛想に「うまい」と呟いた言葉に、少女は嬉しそうに笑った。

 朝から調子が狂いっぱなしで、身体はともかく精神的に相当疲れていたのに違いない。食事の後の記憶は曖昧、しかも途中で完全に途切れている。……食事の後でつい眠り込んでしまったらしい。

 野宿が常の那由他だ。眠りこんだ後で無意識に布団に潜り込むなんて事は多分ないはず。……と、すると。

 くしゅん、と小さくくしゃみをしたこの少女の仕業だろう。

 ……それにしても。例え寒いからなのだとして、更に那由他が眠っていたとはいえ、よくもまあ、この自分にこんなにくっついていられるものだ。

 寒さのせいか、身を縮こまらせてはいるが、実に平和で幸せそうな少女の寝顔。

 と、不意に規則正しい寝息が途切れ、少女の目がぱちりと開き、那由他とばっちり目があった。

 一瞬、間があった。彼女が現状を把握しつつ、昨夜の出来事を回想するだけの間が。

 そして次の瞬間、蒼白な顔で飛びのき、部屋の隅で平伏し。

 その様子に那由他は(ああ、やっぱりか)、と心の中で呟いたが。

 「も、申し訳ございません!」

 チエは思い切り良く土下座をしながら謝罪の言葉を叫んだ。

 「すみません、すみません、昨日は確かに囲炉裏の端っこで寝ていたはずだったのに。い、いつの間にか那由他様のお布団に潜り込もうとしてたなんて……」

 良く見れば、目には涙まで浮かんでいる。

 「た、大変な失礼をいたしまして。本当に申し訳ございません、この通り、謝りますから。お願いです、巫女を辞めろとか山を降りろとか仰らないでください」

 「……は、今……何と?」

 那由他は聞き間違えたのかとつい聞き返した。今の言い様はまるで巫女を辞めたくない、山を降りたくないと言っている様に聞こえたから。

 「昨日、言ったはずだ。巫女の任期は5年。それが過ぎるまで、山を降りて村へ帰る事は出来ぬのだと。ところで……昨夜、私を布団へ寝かせたのはお前か?」

 「はい、お食事の後、そのままお休みになってしまわれたので。それで……あ、あの……無礼を働いた分のお咎めは……?」

 恐る恐る顔を上げて尋ねる少女に、那由他は片眉を上げた。

 「無礼?」

 「おっ、畏れ多くも山神様のご寝所に潜り込むなんて、とんだ御無礼を……」

 どうやら今、彼女が畏れているのは那由他自身ではなく、自分がやらかした行為に対する那由他の反応であるらしい。

 「それも、昨日言ったはずだ。私は神などではない、ただのモノノケだと。布団の件ではむしろ私が謝らねばならん。……人の身、それも女子供の身ではこの時期の山の上の朝晩の冷えは堪えるだろうに、お前の布団を私が使ってしまったからな。寒かったのであろう?」

 「あ、はい……いえ、あの。わ、私、うちにはたくさんのきょうだいがいて。いつも狭い部屋でぎゅう詰めで寝るのが当たり前で。こんな広いとこで寝るのは初めてで……それで、人恋しくなって……つい」

 涙目のまま、必死に訳を言い募る。

 「巫女は、私の大事な糧。体調を崩されては私が困る。この布団は本来お前の為の物。お前が謝る必要はないし、もちろん咎めなどせぬ」

 そう言ってやると、少女は身体の緊張を解き、明らかにホッとした顔でようやく床から立ち上がった。ぺこりと、一度頭を下げ、

「ありがとうございます。すぐに朝食の支度を致しますので。少々お待ち下さいね」

そしてやはり嬉しそうな顔で言う。

 さすがに那由他も認めざるを得なかった。

 彼女が、那由他じぶんを畏れはしても、恐れや嫌悪の感情などただの一かけらも抱いていないのだという事実を。那由他の巫女である事に、真実喜びのみを感じているのだと。

 那由他の心に、かつてない程大きな疑問が渦巻いた。――何故、と。

 野菜の煮物とみそ汁に白米と言ういたって純朴な朝食を、やはり彼女と2人で摂る。

 あからさまな恐怖や嫌悪を向けられるのが当たり前だった那由他にとっては実に新鮮な光景である。

 今、彼女から向けられるのは純粋な畏れと好意。

 少しばかり決まり悪く、尻の座りが落ち着かない気もするが、悪い気はしないし、居心地も良い。

 「チエ、今日も山へ行くのか?」

 「はい。でも、その前に弓矢か釣り竿など調達できないものかと思っておりまして……」

 「弓矢と竿?」

 「兄さまについて川へ釣りに行ったり、弓の稽古などもよくしておりましたので。狩りや漁ができれば、お肉やお魚料理を那由他様に召し上がっていただけます」

 少女は張り切って言った。

 「弓矢の腕前は、兄さま達より上手いと、師範にお褒めの言葉も頂きました。村へ迷い込んで来た鹿を仕留めた事もございます。昨日は逃げられてしまいましたが、今日こそはあの猪で牡丹鍋を……」

 グッと、箸を握りしめ堂々とその決意を宣言する。

 「チエよ。この山には獣だけでなく、モノノケも多く棲まっている。人の子が一人、山の奥まで分け入れば、あっという間にそれらの餌食となろう」

 空になった茶碗を静かに置きながら、那由他は言った。

 「私は、神ではない。私は、モノノケ――この山に棲まう全てのものの主だ」

 湯のみに、淹れたてのお茶が注がれる。

 「私の命に逆らえるものは、この山には居ない。この小屋の周辺には決して近づかぬよう厳命してある故、この小屋周辺は安全だ。だが、山に於いては自然の規律が唯一かつ絶対の掟であり、弱肉強食は当然の理。一歩そこへ踏み入れば、お前もその理に組み込まれる事になる。」

 注がれた茶を一口啜り、湯のみを置く。

 「この山に棲まう幾多のそれら全てにお前を紹介して回るのは不可能だ。そうである以上、お前がただの非力な人の子である限り、お前はそれらの餌となる定めにある」

 安い茶葉だが、淹れ方が上手いせいか、割合に美味い。

 「――お前に、私の“印”をやろう」

 それは、全ての巫女に提示してきた提案だ。

 「その“印”は、お前が私のものだという証。主の所有物ものに手を出す輩はこの山には居ない。……お前が真実、私の巫女ものである事を受け入れるのならば、お前にこの那由他の“印”を授け、刻んでやろう」

 これは、より確実な身の安全を保障する為の提案。

 だが、これまで誰一人として那由他の印を受け入れたものは無かったのだ。

 ――当然だ。化け物の所有物である証を欲しがる者などいるはずがない。

 これまで気の遠くなる程の間ずっと、そう思っていたのに。

 この少女は、那由他の当たり前をいとも容易く打ち砕く。

 少女は、あっさり頷き、期待に満ちたまなざしをこちらへ向けた。

 「……では、手を貸せ。お前、利き手はどちらだ、右か? そうか、では右手を出せ」

 差し出された手を取ると、好奇心で輝いた瞳で、ジッと那由他の手元を見つめるチエの頬がほんの僅かに赤らんだ。

 その手の甲に、血で己の印の紋様を刻む。

 印は、証。ある一定以上の力を有したモノノケのみが有する、己の力の象徴。

 血は、那由他の力そのものであり、全てのモノノケにとって、力こそが存在の証。

 ちからを用い描いたあかしは強力な“力の誇示”

 それを刻むという事は、これは自分のものだという主張――獣が己の縄張りを主張して行う匂いつけと意図は同じ。

 刻まれた印は皮膚から身の内へ取り込まれて見た目には消えるが、獣やモノノケはそれを感覚で察知する。

 だが、自身では分からないのだろう。チエは印の消えた右手の甲を左手で撫でさすりながら、首を傾げている。

 「……目には見えずとも、山に棲まうものたちは必ず気付く。お前が、私のものだとな」

 もう一口、茶を啜り。

 「そうと知りながら、お前に手を出す輩はこの山には居ないはずだが、もし万が一そういう輩に出くわしたら、私の名を呼べ」

 印を刻んだ手の手に視線をやる。

 「その印は、私の一部。それを持つお前の声ならば、この山のどこに居ようと私は察知できる」

 そう、だからこれで一安心だ……。

 ――そう、那由他は思っていた……の、だが……。


 「ただ今戻りました!」

 朝食の片付けを済ませ、洗濯をし、洗ったものを表に干して。

 太陽もだいぶ高く昇り、気温も朝より上がって過ごし易くなってきた頃合いを見計らい、今日も元気に山へ出かけて行った彼女が、やっぱり元気いっぱいに戻って来たのは昼前の事。

 だが、その彼女には連れがいた。

 「あ、主……」

 大きな体躯に似合わない声を出したのは。

 「じん……?」

 大陸に棲むものと比べればやや小柄ながら、山の王者であるはずの日本狼の九十九神。

 それが、目に涙を一杯にためながら、得意げな笑みを浮かべるチエの後ろにつき従っている。

 狼は本来家族単位の小さな群れをつくる。その中での順位は絶対で、自分より強いものの前に立って歩くなどあり得ない。逆をいえば、自分より弱いものが前に立とうとしたなら、当然それ相応の報復をし、自らの位を主張する。

 それは、長く生きて九十九神となった後も変わらぬ狼の性だ。

 この山に、迅より強いものは那由他以外には居ない。この山で迅を従えられるのは那由他のみ。確かにチエにはその那由他の“印”があるが、あれはあくまで“所有印”だ。単に危害を加える事を禁じているだけで、それ以上の意味は無い。

 しかし、狼はチエの後ろに黙ってつき従っている。……今にも泣き出しそうではあるが。

 群れの中で順位を上げようと思えば、上位のものに闘いを挑み、勝って奪い取らねばならないはずだが……。

 「……迅?」

 「主……あの娘、何者ですか。巫女? 人間? 嘘でしょう?」

ついに堪え切れずに溢れた涙を滂沱と流し始めた迅がこぼした言葉に那由他は唖然とするしかなく。

 「ええ、ええ。主の“印”を持ってましたからね、しかも相手は人間の女、それも子どもで非力だし、怪我させちゃマズいと油断してたのは認めますよ。でも、まさか……この俺がこんな小娘にしてやられただなんて……」

 うおぅ、うおぅ、と泣きながら愚痴る狼と、機嫌良く笑うチエを前に、那由他は、顔を引きつらせながら黙り込むしか、なかった――。

挿絵(By みてみん)

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