ある日突然、ゲーム世界と現実が融合したので、最強プレイヤーの俺が本気で街を救ってみた件
「うおぉぉぉぉ!ついにレベルカンストしたぁぁぁ!」
俺、有岡カイトは深夜二時、自室でVRMMO『エターナル・ワールド』の最高レベル9999到達を達成し、ガッツポーズをキメていた。
三年間やり込んだ甲斐があった。
全スキルコンプリート、全装備最強化、課金総額?そんなの聞くな。
バイト代と小遣いを全ツッパした結果だ。
「さて、明日は学校だし寝るか……ん?」
VRゴーグルを外したその瞬間、部屋の空気が変わった。
ビリビリと空間が震え、窓の外から奇妙な光が差し込んでくる。
「なんだ、地震か?」
窓を開けて外を見た瞬間、俺は息を呑んだ。
街の上空に、巨大な魔法陣が浮かんでいた。
それは見覚えのあるデザイン。
まさに『エターナル・ワールド』のゲート召喚魔法陣そのものだった。
「マジか……?」
次の瞬間、街中から悲鳴が聞こえてきた。
窓から身を乗り出すと、商店街にゴブリンの群れが現れて暴れている。
マジのゴブリンだ。ゲームで何千体と狩ったあのゴブリンが、現実の街を襲っている。
「おいおい、冗談だろ……」
そう言いかけた時、俺の視界に半透明のウィンドウが表示された。
『システム統合完了。プレイヤーデータを現実世界に適用します』
『有岡カイト Lv.9999』
『HP:999999/999999』
『MP:999999/999999』
『攻撃力:99999』
『防御力:99999』
『スキル:全447種保有』
「……マジかよ」
試しに手を伸ばすと、空中にステータス画面が現れる。
完全にゲームのインターフェースだ。
そして俺の全身から、淡い光が溢れ出した。
体が軽い。いや、軽すぎる。
ちょっと飛び跳ねただけで、天井に頭をぶつけそうになった。
「これ、完全にゲームのステータスが反映されてるじゃん!」
外からまた悲鳴が聞こえる。
「……仕方ねぇな」
俺は窓から飛び降りた。
三階からの高さなんて、このステータスなら余裕だ。
着地と同時に地面に小さなクレーターができたが、気にしない。
商店街に向かって走る。
いや、走っているつもりだが、一歩で十メートル以上進んでしまう。
「おっとっと!」
慣れない機動に戸惑いながらも、あっという間に現場に到着した。
商店街は阿鼻叫喚の地獄絵図だった。
二十体以上のゴブリンが、逃げ惑う人々を追いかけている。
警察官が数名駆けつけているが、拳銃の弾がゴブリンに当たっても効いていない。
「ちっ、このゴブリン、多分レベル30くらいか。現代兵器じゃ無理だな」
俺は軽く指を鳴らした。
「スキル起動——《瞬間移動》」
次の瞬間、俺はゴブリンの群れの真ん中にいた。
「よぉ、久しぶりだなゴブリン共。現実でも狩らせてもらうぜ」
俺が手を翳すと、空中に炎の球体が十個同時に出現した。
「《多重火球》——発射」
火球はそれぞれのゴブリンに吸い込まれていき、一瞬で爆発炎上。
悲鳴を上げる間もなく、ゴブリン達は灰になって消えた。
「つっよ……我ながらえぐいわ」
周囲の人々が唖然としている。警察官も口をポカンと開けている。
「だ、誰だあんた!?」
「ただの通りすがりのゲーマーです」
そう答えた瞬間、今度は商店街の奥から巨大な咆哮が響いた。
地響きとともに現れたのは、体長五メートルはあるオーガだ。
片手に大木のような棍棒を持ち、凶悪な顔でこちらを睨んでいる。
「オーガかよ。レベル60くらいか?まあ、俺には関係ないけど」
オーガが棍棒を振り上げて突進してくる。
その速度、普通の人間なら避けられないだろう。
でも俺には、スローモーションに見える。
「遅っ」
俺は軽くステップで避け、オーガの脇腹に拳を叩き込んだ。
ドゴォォォン!!!
衝撃波が広がり、オーガの巨体が吹き飛ぶ。
そのまま建物に激突し、ズシャアァァと崩れ落ちた。
一撃だ。
「……やべ、手加減忘れてた」
でもまあ、魔物だし問題ないよな。
周囲から拍手と歓声が上がった。
「すげぇ!」
「助かった!」
「あんた、何者なんだ!?」
「だから、ただのゲーマーですって…」
その時、また新しいウィンドウが表示された。
『クエスト発生:街の危機を救え』
『報酬:経験値、街の人々の信頼』
「クエストまで出るのかよ。完全にゲームの中のシステムじゃねーか」
街の中心部に向かうと、さらに多くの魔物が出現していた。
スケルトン、オーク、ダイアウルフ。
ゲームでお馴染みの雑魚敵オールスターズだ。
ただ現実で見ると大きいし見た目も厳つく、知らない人間からしたらこれは怖いだろう。
「まとめて片付けるか」
俺は空中に手をかざした。
「《天雷召喚》」
上空に巨大な雷雲が発生し、無数の雷が魔物たちに降り注ぐ。
一瞬で二十体以上が感電死。
経験値がガンガン入ってくるが、もうカンストしてるから意味ないんだよな。
「待てぇぇぇ!」
背後から声がした。
振り返ると、白い鎧を着た女騎士が走ってくる。
その顔に見覚えがあった。
「……セリア!?」
ゲーム内で俺のパーティメンバーだった聖騎士セリア。
NPCキャラのはずだが、完全に実体化している。
「カイト様!やはりあなたでしたか!」
セリアは俺の前で膝をついた。
「この世界の融合により、我々NPC達も実体化しました。そしてカイト様を探しておりました」
「マジか。つーか、膝つくのやめてくれ。恥ずかしいから」
「しかし、カイト様は我がマスター。当然の礼儀です」
うわぁ、ゲームの設定そのまま引き継いでやがる。
現実で見るとなかなか恥ずかしいな…
その時、別の方向から声がした。
「よぉ、最強プレイヤーさんよぉ」
派手な赤いコートを着た男が、不敵な笑みを浮かべて歩いてくる。
「お前は……リュウジか」
リアルでもゲームでも知らない仲ではない。
ランキング上位プレイヤーとして何度か共闘したこともある。
「ククク、俺もレベル8000のデータが引き継がれたぜ。この状況、最高に楽しいじゃねーか」
「お前、楽しんでる場合か」
「当たり前だろ。ゲームが現実になったんだぜ?こんなワクワクする状況、他にねーよ」
まあ、気持ちは分かる。俺も正直、テンション上がってる。
「とりあえず、街を救うのが先だ。協力してくれるか?」
「おう、任せとけ」
市役所前の広場に到達すると、そこには巨大な魔法陣が展開されていた。
そして中央に、全身黒い鎧に包まれた巨大な騎士が立っている。
『デスナイト Lv.500』
「レベル500か。ボスクラスだな」
デスナイトが重々しい声で告げた。
「……我は融合の守護者。この世界の統合を完遂する」
「やべぇ、ラスボス的なやつじゃん」
リュウジが横で笑う。
「面白くなってきたな。お前、一人で倒せるだろ?」
「まあ、余裕だけど」
セリアが剣を構える。
「カイト様、私も戦います!」
「おう、頼む」
その時、デスナイトが剣を振るった。
巨大な闇の波動が放たれ、周囲の建物を破壊しながら迫ってくる。
「《絶対防壁》」
俺は手をかざし、光の壁を展開。闇の波動を完全に防ぎきった。
「よし、反撃だ。《神速移動》」
一瞬でデスナイトの背後に回り込み、背中に掌を当てる。
「《魔力爆発》」
ドゴォォォン!
凄まじい爆発がデスナイトを包み込む。
煙が晴れると、デスナイトの鎧にヒビが入っていた。
「……強い。だが、我も負けぬ」
デスナイトが巨大な剣を振り下ろす。
その一撃は地面を割り、衝撃波が広がる。
リュウジが横から火炎魔法を撃ち込み、セリアが聖なる光で攻撃する。
三人がかりでボコボコにしていく。
いや、正直俺一人でも勝てるんだけど…みんなで戦った方が楽しいよな。
「《最終奥義・因果改変》」
俺は最強スキルを発動した。
これは世界のルールそのものを書き換えるチートスキル。
「デスナイトのHPを1に」
瞬間、デスナイトの体がガクンと崩れた。
「な、なに……!?」
「悪いな。俺、ルールも書き換えられるんだわ」
リュウジが呆れた顔をする。
「お前、それ完全に反則だろ」
「まあまあ、チートですから」
セリアがトドメの一撃を放ち、デスナイトは光になって消えた。
『クエストクリア:街の危機を救え』
『称号獲得:街の救世主』
翌日。
街は一夜にして変わっていた。
魔物は全て消え、ゲームとの融合も安定。
人々はステータス画面を使いこなし始め、新しい日常が始まっていた。
俺は一躍、街の英雄として扱われるようになった。
学校に行くと、クラスメイトに囲まれた。
「カイトくん、昨日すごかったね!」
「サイン欲しい!」
「あの、よかったら一緒にパーティ組まない?」
女子たちがキャッキャ言ってくる。正直、こそばゆい。
「まあ、ほどほどにな」
教室の隅で、クラス委員長の綾瀬ユイが冷ややかな目でこちらを見ている。
「調子乗らないでよね」
「お前も昨日、俺に助けられただろ」
「……それは、まあ、感謝してるけど」
顔を赤らめて目を逸らすユイ。分かりやすいやつだ。
放課後、屋上に呼び出された。
行くと制服姿のセリアが待っていた。
「カイト様、この学校に転入することになりました」
「マジか。NPC転入とか、もうなんでもありだな」
「これからもカイト様のそばで仕えます」
「だから、仕えるとか言うなって」
そこにリュウジも現れた。
「よぉ、カイト。今日も魔物狩りに行くか?」
「お前、本当に楽しんでるな」
「当たり前だ。ゲーマーとして、こんな世界は最高だろ」
確かに、と俺も頷く。
VRゲームと現実が融合した世界。
最強のチート能力を持ったまま、現実で無双できる日々。
悪くない。
いや、かなり最高だ。
いままで現実を捨ててゲームだけに打ち込んできたけど、現実でも最強になるなんて!
その時、空に新しい魔法陣が現れた。
『緊急クエスト:古代龍の襲来』
「おいおい、またかよ…」
「面白くなってきたな」
リュウジがニヤリと笑う。
「カイト様、参りましょう。」
セリアが剣を抜きながら答える。
俺も笑った。
「よし、行くか!」
こうして、俺の無双生活は続いていく。
最強のチート能力を持ったまま、この融合世界で好き放題やってやる。
魔物も、クエストも、全部クリアしてやる。
だって俺は、レベル9999の最強ゲーマーなんだからな。
エピローグ
数週間後。
街は完全に新しい秩序を取り戻していた。
ゲームシステムが日常に溶け込み、冒険者ギルドが設立され、人々はレベル上げに励んでいる。
俺は相変わらず最強のまま、街の守護者として活動していた。
セリアは俺の専属パーティメンバーとして、いつも隣にいる。
リュウジはライバルとして、時々俺に勝負を挑んでくる。まあ、最強の俺には勝てないんだけど。
ユイは「別にあんたのこと気にしてないし」とか言いながら、困ったときはいつも俺を頼ってくる。
ある日、街の展望台で夕日を眺めていると、セリアが隣に立った。
「カイト様、この世界をどう思われますか?」
「最高だよ。やりたい放題できるし、毎日が冒険だ」
「ふふ、カイト様らしいです」
空に、また新しい魔法陣が現れた。
『新エリア解放:地下迷宮』
「おっ、新コンテンツか」
リュウジから通信が入る。
『カイト、さっきの見たか?さっそく潜るぞ』
「おう、了解」
ユイからもメッセージが届く。
『あんた、また危ないことするつもり?仕方ないわね、ついていってあげる』
「素直じゃないやつだな…」
俺は笑った。
この世界、本当に最高だ。
ゲームが現実になった世界で、最強のチート能力を持ったまま無双する。
これ以上の楽しい娯楽があるか?
「よし、次の冒険に行くぞ!」
俺、有岡カイトの無双ライフは、まだまだ続く。
最強ゲーマーの伝説は、これからも刻まれていくのだ。
——この街に、新たな冒険が始まる。
【完】




