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③婚約破棄と断罪


それから一年と少し。


「ヘレナ・ユーフリクス。私はお前との婚約を破棄する!」


 それは、ハロルドの学年の卒業パーティーの一幕だった。

 高らかに宣言したのは、ハロルドであった。その手はアリスの手が握られている。


 祝辞を読み上げようと壇上に上がった私を追って、二人は壇上へ上がってきた。


「どうしてですか……ハロルド様。」


 震えた声で、私は聞き返す。


「俺は真実の愛を見つけた。それがアリスだ。お前はそれに嫉妬し、彼女をいじめたそうだな」


「私、いつもヘレナ様に睨みつけられて……怖くて。校舎裏に呼び出されてハロルドに近づかないでと脅されたこともありました」


「そんな痴れ者、俺の婚約者に、ましてやこの学園にふさわしくない。どうか学友たち。そしてお集まりの教諭の方々、この悪女をこの学園から追い出してやりましょう!この学舎に悪女は必要ない!それが、元生徒会長として、この学園に貢献してきた私ができる学園への最後の贈り物です!賛同できる方は拍手を!」


 しんと、静まり返った会場に、アリスの拍手だけが響き、やがてすぐに止まった。


 アリスの言うことは全て事実だ。だが、


「は、拍手を……」


 もう一度、ハロルドは叫ぶが、誰一人として手を打ち鳴らしてくれる人はいない。


 賛同者0


「な、なんで……この悪女は俺のアリスをいじめたんだ。この学園に貢献してしたこの俺の言うことが分からないのか……!?」




「だって、当たり前じゃない?」



 誰がぽそりと呟いた。


「睨まれただけでいじめって……」


「何もしてないならわかるけど、婚約者に色目使われたらね……」


「私も睨むなぁ」


「私、呼び出されたってとき一緒にいたけど、ヘレナさん泣いてたし、見てていたたまれなかった」


「牽制するよな。ふつー、婚約者なら」


「むしろそれだけで済んでるなんて寛大だよ」


 ざわざわと会場は波を打つ。


「お、お前たち!俺が、俺が言ってるんだぞ。こいつは悪女だ!追放しろ!俺は元生徒会長だぞ!俺の言うことに間違いはないだろ!」


 その狼狽に、会場からはくすくすと笑いすら湧いていた。


「生徒会長?それがなんの権力が……あるってんだよ」


「あはは、ていうかさ。ハロルドさんってなんか発表とかする時だけ前に出てたよね」


「ねー、いつも、生徒会室で仕事してたのヘレナさんたちだったし」


「いつも遅くまでヘレナさん頑張ってたよな」


「俺たちみたいな小さなクラブとかも気にして声かけてくれて」


「相談事にも乗ってくれたよね」


「というか押し付けてたんでしょ。仕事」


「名ばかり生徒会長。しかも元!」

 

 ハロルドは、きっと自分が慕われていると信じていた。生徒会長として学園に尽力してきたと本気で信じてる。だがその実ほとんどの仕事をしていたのは私だ。


 私がしたのは三つ。


 一つ目、生徒会室の窓を常に開け、時には図書室や教室にも仕事を持ち込んだ。私が生徒会の仕事をしているところを皆に見せた。


 二つ目、積極的に生徒たちに声をかけ、相談に乗り、細かな事象は全て私が解決した。


 この二つは、ハロルドが仕事をしてないことを暗に察っせられようにするためのもの。


 そして三つ目、私はハロルドに「貴方は、皆に慕われている」、「貴方は仕事のできる生徒会長です」、「貴方が言うことは全部正しい。みんな貴方に従います」、「貴方は皆を導くのが仕事なのですから、雑務は全て私にお任せください」と囁き続け、虚妄と虚飾を抱かせた。

 

 頼れる生徒会長。しかも元。信じてきた虚栄が崩れ去ったバカな男を、そんな男に恋をした馬鹿な主人公(ヒロイン)が支えていた。


 最後のダメ押しに、私は涙を一筋流す。


「ごめんなさい。アリスさん。私、そんなつもりじゃ……嫉妬してごめんなさい。ごめんなさいハロルド様。お仕事うまくやれなくて……」


 私の声は、祝辞用のマイクを通って会場に響き渡った。


 ありがとう。ハロルド。ずーっとクズでバカで愚かなままでいてくれて。

 ごめんねアリス。こんな恋の障害で。


「謝るな!ヘレナ嬢!!」


「お前が謝れハロルド!!」


「アリスさんもいつまで被害者ぶってんの!この泥棒猫!!」


「学園を追放されるべきなのはお前たちだ!!」


「そうだそうだ!」


 私は、泣き崩れる。嬉し涙だった。私を心配した友人たちが壇上に上がり、私を支えて壇上を降りてくれた。


 その瞬間あらゆる物が壇上に投げ込まれる。


 飛来物に右往左往しながらハロルドはアリスを抱いたまま、最後まで私を蔑み喚いていた。

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