第18話 ジシャコウ (二) ①
部屋に入ると、リュックにあるはずのスマホを探した。
うっかりして充電するのを忘れていたのだが、なぜか電池の残量は100パーセントになっている。
ジュンジはもしかして、と思いながら電話帳の「き」の欄を探してみた。
「あった。きよちゃんで入ってる……」
登録した覚えのない、きよちゃんという名前があった。
おそらく、間違いないだろう。
思い切って電話をかけてみる。すると、相手はすぐに出た。
「あっ、あの、きよちゃんですか?」
「あら、ジュンジ遅いじゃないの! ちゃんとご飯食べさせてもらったの?」
きよちゃんはそんなことを心配してくれるのか、とジュンジには意外だった。
「はい、とてもいい朝ご飯をいただきまして……で、なんですか?」
「それなら良かったわ。食事はとても大切よ。あぁ、そうだ。もうすぐバスの時間でしょ? ちゃんと支度できてるの? 今日からちゃんと通うのよ」
「あっ、そうだった……バスって何のバスなんですか? 美希果さんがジシャコウとか言ってたけど、なんなんです?」
「はぁ? 何言ってんの!! 免許取りに行くんでしょ!! 運転免許証!!!」
すっとぼけた様子で言うジュンジに、きよちゃんは軽くキレていた。
「あぁー、そのバス……ジシャコウって自車校か……初めて聞いたから全然わかんなかった……なるほど、自車校ね、自車校……」
何度もつぶやきながら、ジュンジの中で一本の線が繋がったようになる。
「美希果にお願いして、ジュンジの自動車学校の申し込みを先にしておいてもらったのよ。今日は入校説明と適性検査があるはずよ」
「そうだったんですか……」
「ジュンちゃーん!!! 着替え、夜のうちに洗濯して干したら、何とか乾いたから!!! 早く着替えてー、バス来ちゃうから!!!」
階段の下から、美希果が叫ぶように声をかけた。
「あっ、はーい!!!」
ジュンジも叫び返す。
「じゃぁ、きよちゃん。とりあえず、ちゃんと行きますから……行ったら何とかなるよね?」




