第17話 ジシャコウ ①
お昼近くになって、ジュンジは美希果に叩き起こされた。
「いつまで寝てんの!! 間に合わなくなるよ!! 早く起きなさい!!!」
美希果の起こし方は非常に豪快で、まず掛け布団を引っぺがされた。
敷布団もどこかの手品師のテーブルクロス引きのように引かれ、ジュンジは否応なしに布団から転がり出た。
「早く顔洗うのよ」
そう言ってジュンジを一瞥すると、美希果はさっさと部屋を出て行った。
うつむき、正座の姿勢をとっていたジュンジは、寝ぼけた頭をフル回転し、静かに考えていた。
はて、ここはどこだっただろうか……
そうだ、昨日は美希果と雅親の馴れ初め話を聞かされたんだっけ。
それで、話が終わったのが夜中になって、それから、疲れすぎたのでそのままお風呂に入って、二階の雅親の屋根裏部屋の向かいの部屋に布団を敷いてもらって、寝て……
で、今か。なるほど……
思いだしたジュンジはゆっくりと立ち上がった。
「で、何に間に合わないんだ?」
背中をパジャマの中からボリボリかいた。
「はあぁ、あああぁ……わかんねぇなぁー……」
声を出しながら欠伸して、伸びもして、部屋を出ると階段を下りた。
「ほら、早くしなさいよ!!!」
美希果の大声が響いている。別の部屋で寝ているノブオは手ごわいようだ。
へへっ、と思わず笑いながら、ジュンジは先にトイレを済まし、洗面所へ行く。
もう夏だというのに、蛇口から出る水は想像以上に冷たかった。ここが岩手県だったことを再確認させられる。
顔を洗って、髭剃りをどうしようかと思った時、新品の髭剃り用のカミソリが二つ、きちんと並べられ、用意されていた。
「お、ジュンジ。おはよ」
同じくトイレを済ませたノブオがやってきた。
お互いの姿を見て二人は、はっとした。




