第14話 座敷ハタチと淑女の出会い ②
それを見ている家族たちも、もう一人の息子は今ここにいるんだな、と分かるようになった。
美希果が生まれてから、雅親と家族の距離はどんどん短くなっていくのだった。
そして、美希果は成長していく。
美希果が小学生になる頃には、雅親の名前や素性が伝わり始めた。
江戸時代に生まれ二十歳で亡くなったこと、この家が建つ時からずっと居ること、二階の屋根裏部屋に住んでいること、好きなテレビ番組、ゲーム、マンガ、部屋にできれば布団とテレビが欲しいこと……
それでも、言えなかったことがある。
女性に刺されて死んだことと、美希果が雅親の初恋の人であることだ。
「さすがに遊びすぎて、恨まれて、刺されて死んだなんて言えないだろ。子どもに……それにみんな引くだろ? ごはん、もらえなくなりそうだし」
「確かに……それに、美希果さんが初恋の人の生まれ変わりだなんて、なんとなく言えないですよね」
ジュンジはたいして内容のない感想を述べる。
「だろ? 変に言ってしまって、みんなを混乱させるわけにもいかねぇしな。それと……美希果にはそんなこと気にせずに、自由に生きてもらいたかったんだ。俺はただ、見守って、そばにいられればそれでよかったんだ」
そう言って、雅親は美希果と見つめ合う。
「雅ちゃん……大好き」
二人はチューでもしてしまいそうなくらい、顔が近い。
それにしても……
生まれた時から知る美希果と、どうしたらこんな関係になれるのか。
赤ちゃんのときを知っているのに、初恋の人だろうというだけで、女性としてこんなに好きになれるものなのか……
美希果の方にしたって、こんな兄弟みたいな人をこんなにも男性として見られるものなのか……
あれっ、しかも雅親はいつの間にか兄さんから弟、息子ぐらいに年が離れるようになってるし……
ジュンジはこの不思議なラブロマンスにドキドキしながらも、ややこしく考えたせいで、いつもの頭痛が始まった。
あっ、と思いだしたジュンジは隣のノブオを横目で確認する。
すっかり感情を地獄にでも捨ててきたかのようなノブオは、微動だにせず、変わらず顔を真っ赤にし、レンズの奥の大きく見開いた目を瞬きするのも忘れ、血走らせていた。
ジュンジは静かでほっとした。けれども、これはこれでかなり怖い。
ジュンジに緊張が走る中、なんとノブオは口を開いた。
「はー、雅親さんは本当にお優しいですな。は、はよう……続きを、はよう続きを聞かせてくださいまし」
さっきよりさらに上擦った声で、まるで壊れたおもちゃのようだ。
ノブオのことは心配だが、ややこしく面倒くさそうなので、ジュンジは何もせず無視することにした。




