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第13話 座敷ハタチになるまで(三) ③
ノブオの異様な雰囲気に、チラッと横を見たジュンジは驚いた。
視線も感情も、どこかに吹っ飛ばしてるじゃん……
そして思い出す。
ノブオの感情の波は、どんな一流のサーファーも乗りこなせない、荒くれ波だということを……狂おしいほど面倒くさい……
「ノブオさん! ノブオさん帰ってきて!! プリーズカムバックだよ!!!」
ジュンジはまるで悪霊を払うかのように、ノブオの背中をバシッバシッとチョップした。
はっと我に返ったノブオは不意に、どこから出しのかもはや不明の上擦った声で、今までにはなかった言い回しで発する。
「は、はよう、続きを、はようお話くださいまし……」
「そ、そうですよね。あー、これから出会うのかー。楽しみだなー」
うん、楽しみ、楽しみ……とたいして心にもないことを、お得意の棒読みで言いながら、ジュンジは上下に体を揺らし、今できる精一杯の楽しみ感を表現する。
ただし、ジュンジのそんな心の内は、誰にも伝わることはない。
「えー、参ったな。そんなに楽しみなのかぁ。そんじゃ、話すけどさ」
「そうよね。聞きたいわよね、ジュンちゃん。ほらぁ、もう、早くして。雅ちゃん!」
こうして、雅親の話はもうしばらく続くのだった。




