第13話 座敷ハタチになるまで(三) ②
家族が増えるとなって、家族中、もちろん雅親も喜んだ。
そして皆、ここぞとばかりに雅親に毎日、赤ちゃんが無事に生まれてきますように、安産でありますように、と願掛けをするのだった。
当然、雅親にはどうすることもできない。
仕方がないのでそのときは、雅親も一緒になって、存在するのかしないのかわからない神様に一生懸命、お願いするのだった。
季節が二つくらい過ぎて、一人、二階でオロオロしながら待っている雅親の家に、家の者たちが帰ってきた。
皆の中に小さな赤ちゃんが一人、増えている。女の子だ。
その子を見て、雅親は目を見張った。
あの人だ、と一瞬で分かった。初恋のあの人だ。
確かな証拠など何もないが、強いて挙げるなら、左の目じりにあるホクロが彼女と同じだ。
本当に、生まれ変わったんだ……
「ねっ? めっちゃロマンチックっしょ」
雅親は美希果の肩を抱き寄せながら、ジュンジとノブオに同意を求める。
「あっ、うん……本当に……ねぇ、ずずっ」
もう入っていない麦茶のグラスをすすりながら、ジュンジは適当に相槌を打った。
これまた空になりかけの麦茶のボトルから、なけなしの最後の茶をグラスに注ぐ。
美希果はうっとりとした目で、上目遣いに雅親と見つめ合う。
「もーう、雅ちゃん!早く続きを話してあげなきゃ。まだ私たち出会ってないじゃない」
「えー、あんまり言わないでよぉ、美希果。オチが見えちゃうじゃん」
二人はキャッキャと楽しそうにのろけている。
それを見ているノブオは、足の痺れと感情のやり場がなくなってきた。
顔は正面を見据え、血走る目を全開にし、ブルブルと震えながらグーにした手で、うーん、うーんと太ももを殴り始めた。




