第11話 座敷ハタチになるまで ③
「それでさ……」
ピンクの世界へ行った後、川なのか湖なのか海なのか、よくわからない広い広い水のある場所に、雅親はたどり着いた。
そこには木造の小さな船が一艘泊まっていて他には誰もなく、何もない。
何も考えずに乗ってみると、すーっと勝手に進みだした。おとなしく、ただ座っているとやがて岸についた。
夜中のように真っ暗で月のように照らす光源もない中、そこからはサラサラの砂地で、少しも黄みがかってない真っ白な砂で、この砂だけがうっすらと白く光っている。おかげで、足元は明るかった。
そこから雅親は歩き続けた。
うっすらと一本道のようになっていて、自然と足が進むのだ。
疲れることもなく、どれくらい歩いたのか検討もつかなかった。
すると、先の方で道の真ん中に人が立っているのを見つけた。
ここまで誰とも出会わず、とても不安で寂しかったことを急に思い出したようになった。
雅親は走り出していた。
近づくにつれ、その人が女性であることがわかり、さらに近づいてはっとした。
その人は、雅親の初恋の人だった。
雅親が五歳のとき家の近所に住んでいて、忙しい両親や兄たちに代わり、よく面倒を見てくれた十歳ほど年上の女性だ。
雅親は三男で皆からチヤホヤされていたといっても、やはり寂しい時は多々あった。
そんなとき、彼女はいつも優しく微笑みながら声をかけてくれた。
雅親はそんな彼女が大好きで、時々、わざといたずらをして困らせたりした。彼女の困った顔もいとおしかった。
そんな幸せな日々はずっと続くものだと思っていたが、あっけなく終わってしまった。
彼女は流行り病で亡くなった。
幼い雅親はただ、彼女の枕もとで涙を流すしかなかった。
雅親の女性との遊び癖は、彼女を失った悲しみでぽっかりと開いた心の穴を、埋めるためだったのかもしれない。




