第10話 座敷ハタチはイケメン ⑥
「はっ、あっ……はぁ……」
ノブオは帰ってきた。ジュンジの願いは通じたようだ。
ゴロゴロと転がるのをピタッとやめ、固まる。
「また、まただよ……いろいろ思い出して……」
「ノブオさん、大丈夫ですよ。ここは岩手県だし、何も悪いことはないですよ」
ノブオが半身を起こすのを助け、ジュンジはその背中をさすった。
「あの二人のイチャイチャは正直……僕もイラついてます、嫉妬というか、妬み嫉みというか……いや、ただ羨ましいだけかも。まぁ、とにかく僕もイラついてますから、でも一緒に乗り越えましょう」
「乗り越える……?」
真っ赤な目で救いを求めるように、ノブオはジュンジを見つめた。
「そうです、乗り越えるんです。奴らの馴れ初めでもなんでも聞いてやりましょうよ! それを聞き終えた我々はおそらく、人間として一回りも二回りも大きく成長していることでしょう!!!」
洗脳するかのように、ジュンジもノブオの目をまっすぐに優しく見つめ返し、さらに諭す。
「大丈夫、大丈夫……僕らは大丈夫、ノブオも大丈夫」
優しくノブオの薄い頭を抱き寄せると、ジュンジはそっとそれを撫でた。
「ノブオは大丈夫……ありがとう、そうだ! 俺は大丈夫なんだ!!!」
ノブオは力強く言った。そして涙を流した。
「そう、ノブオは大丈夫! そして、これから強くなるんですよ!!!」
強めに、ジュンジはノブオの背中を一発、バシッと叩いた。今度は何か新しい物を吹き込むために。
「さぁ、戻りましょう……」
「おう……」
二人は立ち上がった。台所を通り、ガラス戸の向こうへ、戦いに行くため……
「あっ、おかえりー」
「おかえりなさーい」
そこに戻ると、先ほどよりも美希果と雅親、二人だけの世界、空気が色濃くなっているようだった。




