第9話 叔母さんの家 ⑨
「やだぁ、ノブオさんったら。褒めても麦茶とお菓子くらいしかでませんよ! でも、そう言ってもらえるなら、美希果さんって呼んで頂こうかしら」
さっきまでの豪快な笑い方とは違い、急に照れたように小さくフフフと美希果は笑う。
「美希果さんか、ステキなお名前ですな。うんうん……ところで、この家にはお一人でお住まいだとか? いやぁ、立派なお宅で羨ましい! 俺なんて小さな、小さなアパート暮らしで……はぁ」
何かを思い出しているのだろうか。ノブオの目は遠くを見ている。
また錯乱するのではないかとジュンジは心配になった。
「えぇ、まぁ……一人といえば、一人なんだけど……」
美希果が歯切れ悪く言ったその時、天井の方からドタドタっと人が走るような音がして、それは階段を下りてきた。
ノブオとジュンジの座る背後のガラスの引き戸が大きく開けられた。
「なぁ、美希果! 腹減ったよぉー!! 夕飯早く食べようぜー!!!」
チャラい、チャラすぎる若い男性の声がした。
自分たちの他に誰もいないと思っていたノブオとジュンジは、同時に体をビクッとさせ、固まった。
「あの、もしかして聞こえた? 雅ちゃんの声……もしかして、見えたりする? 雅ちゃんのこと……」
美希果は二人に聞いた。
「えっ、見えるって? どういうこと??」
ジュンジは言いながら振り向いた。ノブオもそれに続く。
そこには長身の品の良い、若い男性が立っていた。
おしゃれなセミロングの銀髪を上半分だけ結び、よく時代劇に出てくる金持ちの商人のような着物姿で、シュッとし顔の整ったイケメンが、二人を見下ろしている。
「めっちゃイケメン……」
ノブオとジュンジは下から彼を見つめ、同時に声を漏らすのだった。




