第9話 叔母さんの家 ⑧
「実は2時間くらいかけて、そこの道を登ってきたんです。あそこの下の駐車場の所に、気が付いたらノブオさんと二人で、その……落っこちたんです、ピンクの世界から……あの、信じてもらえますか?」
恐る恐るジュンジが話す。隣でうんうん、とノブオは頷く。
「えー! あそこから登ってきたの!? そりゃ、大変だったわねぇ。どうせなら、家の前に落としてくれればよかったのに、ねぇ」
叔母さんはワッハッハーと豪快に笑った。
つられたのか、ノブオもはっはっはと笑い、ジュンジもへらへら笑いだした。
「きっと、ちょっとだけ意地悪されたのね、というか冗談かしら、きよちゃんの」
「えっ! きよちゃんを知っているんですか?」
ジュンジは言うと、ノブオと顔を見合わせた。
「そうよ、きよちゃんからなんとなくね。なんとなくそれとなく話は聞いてるから。大丈夫よ、何事もね、なんとかなるものよ……」
はっはっは、と叔母さんは再び大きく笑う。
だがその視線は遠く、この大丈夫とかなんとかなるという言葉は、叔母さんが自身に向けて言っているのかもしれない。
「そうでしたか! きよちゃんから話があったとは、ちょっと安心だな。ところでジュンジ、お前、叔母さん、叔母さんって言ってたけどよ。叔母さんっていうには失礼なくらい若くてお綺麗じゃないか! お姉さんぐらいにしか見えないな」
せんべいをバリバリ食べながらノブオは言った。
きれいな艶のある黒髪を上品にまとめているせいか、Tシャツにジーンズというラフな格好にもかかわらず、美希果からは妖艶なオーラが放たれているようだ。
化粧もしているのかしていないのか、ノブオとジュンジのような男性には全くわからないくらい自然で、それでいて痩せすぎず健康的なプロポーションは完璧だ。
ただ若作りしているのとは違う。けれども四十代半ばにも見えない。
こんな品のある美しい女性と、この古びた一軒家はなんとなくミスマッチだと、改めてノブオもジュンジも思うのだった。




