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心臓と騎士団復帰

魔導都市フィレンツェの空は、鈍色に曇っていた。

魔導塔の尖端が雲に沈み、街の水路には冷たい風が流れていた。

魔導喫茶ピッコロッソの扉が静かに閉まり、葉月はカウンターの奥で魔導焙煎器の火を落とした。


「神月、私の魔導心臓…もう限界なのね?」


神月は魔導端末を操作しながら、目を伏せた。

「残された魔力は、あと二ヶ月分。アドニムーン機関が細工していた。意図的に寿命を縮めてる」


星月は窓辺で魔導銃の手入れを止め、葉月の背中を見つめた。

「それを止める方法は?」


「心臓の交換。でも、それにはアドニムーン機関の協力が必要。あるいは…騎士団の技術部に頼るしかない」


葉月は紅茶を淹れながら、静かに言った。

「騎士団に戻るしかないのね。でも、私はもう戦いたくない」


その夜、騎士団本部から使者が現れた。

彼は葉月に向かって言った。


「君の力が必要だ。魔導塔の防衛任務に参加すれば、心臓の延命処置を施す」


葉月は使者の言葉に目を伏せた。

「条件付きの命なんて、いらない」


星月は一歩前に出て言った。

「私が騎士団に戻る。その代わり、葉月の命を守ってもらう」


使者は星月の瞳を見つめ、静かに頷いた。


翌朝、魔導都市の空は晴れていた。

星月は騎士団の制服に身を包み、魔導銃を腰に装着していた。

葉月はカウンターで紅茶を淹れながら、彼女に言った。


「ありがとう。でも、無理はしないで。あなたが傷つくのは、見たくない」


星月は紅茶を受け取りながら、ほんの少しだけ微笑んだ。


その日、神月は魔導端末で騎士団の作戦を解析し、グランデロッソはカウンターで魔導式クッキーをつまみながら、静かに星月の背中を見つめていた。


魔導都市の夜空には、星が瞬いていた。

喫茶店の窓から見えるその光は、どこか儚く、そして優しかった。


魔導喫茶ピッコロッソの一日が終わる頃、店内には静かな音楽が流れていた。

葉月が紅茶を淹れ、星月が窓辺で外を見つめ、神月が端末を操作し、グランデが魔導式のクッキーをつまむ。

ピアノとストリングスが、夜の空気に溶けていく。


空に浮かぶ大図書塔の影が、魔導都市フィレンツェを静かに包んでいた。


次回、喫茶ピッコロッソの閉店と、葉月の旅立ち。

振袖に込められた想いと、育ての親との別れ。

葉月は「この場所が、私のすべてだった」

と語り、星月は「あなたの未来を、私が守る」

と誓う。


魔導喫茶の双花 〜選ばれた命と選び直す未来〜、次回もお楽しみに。


その夜のエンドカードには、騎士団の制服を着た星月が、葉月の紅茶を受け取る瞬間が描かれていた。

背景には魔導都市の夜景が広がり、星が静かに瞬いていた。

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