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同居とじゃんけん魔法

魔導都市フィレンツェの夜は、静かに沈んでいた。

魔導塔の尖端が月光に照らされ、街の水路には冷たい風が吹き抜けていた。


魔導喫茶ピッコロッソの扉が閉まる音が響き、葉月はカウンターで魔導焙煎器の火を落とした。

「星月、最近聖花騎士団が狙われてるって噂、聞いた?」


星月は魔導銃の手入れを止め、葉月の言葉に目を向けた。

「騎士団の報告にもあった。連続襲撃事件。標的は、私たちのような魔導士」


神月が魔導端末を操作しながら言った。

「犯人はまだ不明。でも、魔導痕跡からして、かなりの実力者よ。都市の魔導網に干渉してる」


葉月は紅茶を淹れながら、星月に向き直った。

「というわけで、今日からうちに泊まってもらうわ。守るためには、近くにいるのが一番よ」


星月は少しだけ眉を動かした。

「同居…?」


「そう。魔導喫茶ピッコロッソ別館、葉月の部屋へようこそ。じゃんけんで家事分担も決めるから、覚悟してね」


その夜、葉月の部屋には魔導ランプの柔らかな光が灯っていた。

星月は簡素な寝具に座り、葉月が持ってきた魔導式の湯沸かし器を見つめていた。


「じゃんけんで負けたら、明日の掃除ね。勝ったら、私が料理する」


葉月の声に、星月は静かに手を上げた。

「了解。勝負だ」


魔導式じゃんけん盤が光り、二人の手が重なる。

結果は──葉月の勝ち。


「やった! 掃除は星月ね。私は明日、魔導カレーを作るわ」


星月は無言で頷きながら、どこか楽しげな空気に包まれていた。


翌朝、魔導都市の空は晴れていた。

喫茶店の営業が始まると、葉月はカウンターで魔導カレーを仕込み、星月は店内の掃除を始めた。

神月は魔導端末で都市の魔導網を監視し、グランデロッソはカウンターで魔導式クッキーをつまんでいた。


その日、喫茶店に現れたのは、魔導塔の管理者を名乗る男だった。

彼は葉月に向かって言った。


「最近、魔導塔の周囲で不審な魔力の揺らぎがある。調査を依頼したい」


葉月は紅茶を差し出しながら答えた。

「もちろん。でも、私たちは命を守るのが仕事。調査の先に、誰かを傷つけることがあるなら、断るわ」


男は静かに頷き、魔導塔の座標を残して去っていった。


その夜、葉月と星月は再びじゃんけんをした。

今度は星月が勝ち、葉月が掃除を担当することになった。


「負けた…! でも、明日は私が魔導パスタを作るから、楽しみにしてて」


星月は窓辺で外を見つめながら、静かに微笑んだ。


魔導都市の夜空には、星が瞬いていた。

喫茶店の窓から見えるその光は、どこか穏やかで、そして優しかった。


魔導喫茶ピッコロッソの一日が終わる頃、店内には静かな音楽が流れていた。

葉月が紅茶を淹れ、星月が窓辺で外を見つめ、神月が端末を操作し、グランデが魔導式のクッキーをつまむ。

ピアノとストリングスが、夜の空気に溶けていく。


空に浮かぶ大図書塔の影が、魔導都市フィレンツェを静かに包んでいた。


次回、葉月の過去が明かされる。

魔導心臓を与えた人物との再会と、アドニムーン機関の真実。

葉月は「私は、選ばれた命なんかじゃない」と語り、

星月は「それでも、あなたは生きている」と答える。


魔導喫茶の双花 〜選ばれた命と選び直す未来〜、次回もお楽しみに。


その夜のエンドカードには、葉月と星月がじゃんけんをする瞬間が描かれていた。

背景には魔導都市の夜景が広がり、星が静かに瞬いていた。

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