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余命と偽りの依頼

魔導都市フィレンツェの空は、秋の風に揺れていた。

魔導塔の尖端が夕陽に染まり、街の水路には金色の光が差し込んでいた。


魔導喫茶ピッコロッソの扉が開くと、葉月がカウンターで魔導焙煎器を調整していた。


「星月、今日の依頼はちょっと変わってるわよ。都市案内なんだけど、依頼人が…貴族なの」


星月は魔導銃の手入れを止め、葉月の言葉に眉をひそめた。

「貴族? 護衛任務か?」


「まあ、そうとも言えるわね。彼は余命が短いらしくて、最後に都市を見て回りたいんですって」


その言葉に、神月が魔導端末を操作しながら口を挟んだ。

「依頼主の名前はロベルト・ガリレイ。魔導貴族の末裔。記録によれば、心臓に魔導障害を抱えていて、治療は不可能」


葉月は紅茶を淹れながら言った。

「だから、最後の思い出作りってわけ。私たちで案内してあげましょう」


その午後、葉月と星月はロベルトを連れて魔導都市を巡った。

水路沿いの市場、魔導塔の展望台、古代魔導図書館──彼は静かに街を見つめ、時折微笑んだ。


「この街は、魔導と人の記憶でできている。私はその一部になりたいんだ」


星月はその言葉に、何か引っかかるものを感じていた。

彼の瞳は澄んでいたが、どこか作られたような違和感があった。


夜、三人は魔導庭園に立ち寄った。

魔力で咲く花々が風に揺れ、ロベルトはその中で立ち止まった。


「ありがとう。今日という日を、私は忘れない」


その瞬間、魔導障壁が発動し、周囲に敵の気配が走った。

葉月が魔導弾を構え、星月が銃を抜いた。


「罠だったのか…!」


敵の魔導士たちが現れ、ロベルトの周囲を囲んだ。

だが、彼は動かず、ただ静かに立っていた。


「私は操られていた。記憶も、言葉も、すべて仕組まれていた。私は…人形だったんだ」


葉月は魔導弾を放ち、敵を制圧していく。

星月はロベルトを守りながら、彼の言葉に耳を傾けた。


「命って、なんだろうね。僕には、それがわからない」


戦闘が終わり、敵は撤退した。

ロベルトは魔導障壁の中で崩れ落ち、静かに消えていった。

彼の身体は魔導霧に包まれ、やがて何も残らなかった。


喫茶店に戻った夜、葉月は紅茶を淹れながら言った。

「命を奪うより、守る方が難しい。でも、守る価値はあると思うの」


星月は窓辺で外を見つめながら答えた。

「それでも、私は守りたい。誰かの時間を」


神月は魔導端末を操作しながら、静かに呟いた。

「人形でも、誰かの記憶に残れば、それは命になるのかもしれない」


グランデロッソはカウンターで魔導式クッキーをつまみながら、星月を見つめていた。

「おかえり、星月。今日も、あなたは誰かを守った」


魔導都市の夜空には、星が瞬いていた。

喫茶店の窓から見えるその光は、どこか穏やかで、そして優しかった。


魔導喫茶ピッコロッソの一日が終わる頃、店内には静かな音楽が流れていた。

葉月が紅茶を淹れ、星月が窓辺で外を見つめ、神月が端末を操作し、グランデが魔導式のクッキーをつまむ。

ピアノとストリングスが、夜の空気に溶けていく。


空に浮かぶ大図書塔の影が、魔導都市フィレンツェを静かに包んでいた。


次回、連続襲撃事件。

星月は葉月の家に同居し、守ることを決意する。

じゃんけんで家事分担を決める日常の中、敵の魔導士が暗躍を始める。


葉月は「勝ったら掃除ね!」と笑い、星月は「負けたら料理か…」と呟く。


魔導喫茶の双花 〜選ばれた命と選び直す未来〜、次回もお楽しみに。


その夜のエンドカードには、魔導庭園の中でロベルトが花に囲まれ、静かに微笑む姿が描かれていた。

背景には魔導都市の夜景が広がり、星が静かに瞬いていた。

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