表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/13

護衛任務と幻の魔導士

魔導都市フィレンツェの朝は、霧に包まれていた。

街路の石畳が湿り気を帯び、魔導塔の影が長く伸びる。

魔導喫茶ピッコロッソの扉が開くと、葉月の軽やかな声が店内に響いた。


「おはよう、星月。今日も魔導カフェは元気よ」


星月は無言で頷き、カウンターの奥に座った。

昨日の転属以来、彼女はこの喫茶店の空気にまだ馴染めずにいた。

葉月はそんな彼女に、魔力入りのミントティーを差し出す。


「飲んでみて。頭がすっきりするわよ」


その時、喫茶店の扉が再び開き、神月が魔導端末を片手に現れた。

彼女は無表情のまま、葉月に向かって言った。


「依頼が来たわ。護衛任務。対象は“フランチェスコ”」


葉月は眉をひそめた。

「あの幻の魔導士? 都市伝説かと思ってたけど、本当にいたのね」


神月は端末を操作しながら説明を続ける。

「彼は魔導ネットワークの深層に潜り込み、都市の魔導情報を操っている。敵対組織に狙われているらしい。依頼主は匿名だけど、報酬は高額」


星月は立ち上がり、魔導銃を腰に装着した。

「護衛任務なら、私が行く」


葉月は微笑みながら言った。

「もちろん一緒に行くわ。ピッコロッソの仕事は、命を守ることだから」


その日の午後、三人は魔導都市の地下路へ向かった。


フランチェスコとの接触地点は、廃棄された魔導倉庫。

霧が立ち込める中、葉月は非殺傷魔弾を装填し、星月は周囲を警戒する。


倉庫の奥に、フードを被った小柄な人物が立っていた。

彼がフランチェスコだった。


だがその瞬間、魔導爆弾が炸裂し、敵の魔導士たちが現れた。

葉月は素早く魔導弾を放ち、星月は銃撃で応戦する。


「神月、出口を探して!」

葉月が叫ぶ。


神月は魔導端末を操作し、倉庫の構造を解析する。

「南側に非常口がある。急いで!」


戦闘の中、フランチェスコは敵の魔導弾を受け、倒れた。

星月が駆け寄ると、彼の身体は魔導霧に包まれ、消えた。


「死んだ…のか?」

星月が呟く。


葉月は首を振った。

「違う。これは偽装。彼は生きてる。姿を変えて逃げたのよ」


その夜、魔導喫茶ピッコロッソに戻った三人は、店の奥で再び集まった。

神月が魔導端末を操作し、映し出した映像には、喫茶店の裏口から入ってくる少女の姿があった。


「彼女がフランチェスコの正体よ。名前はグランデロッソ。魔導解析の天才。年齢は不詳」


葉月は驚きながら言った。

「まさか、こんな小さな子が…」


グランデはカウンターに座り、魔導端末を取り出した。

「ここなら安全ね。しばらく匿ってもらえる?」


葉月は笑顔で答えた。

「もちろん。魔導喫茶ピッコロッソへようこそ」


その夜、喫茶店には静かな音楽が流れていた。

葉月が紅茶を淹れ、星月が窓辺で外を見つめ、神月が端末を操作し、グランデが魔導式のクッキーをつまむ。

ピアノとストリングスが、夜の空気に溶けていく。


魔導都市の空には、星が瞬いていた。

喫茶店の窓から見えるその光は、どこか懐かしく、そして優しかった。


空に浮かぶ大図書塔の影が、魔導都市フィレンツェを静かに包んでいた。


次回、星月は騎士団への復帰を願い、模擬戦に挑む。

だが、そこに待っていたのは冷たい拒絶と、葉月との絆の試練。


魔導喫茶の双花 〜選ばれた命と選び直す未来〜、次回もお楽しみに。


その夜のエンドカードには、喫茶店のカウンターでグランデが魔導端末を操作し、葉月が紅茶を差し出す瞬間が描かれていた。

背景には魔導都市の夜景が広がり、星が静かに瞬いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ