表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/13

正義と選択

魔導都市フィレンツェの空は、戦の予兆に満ちていた。

魔導塔の尖端が赤く脈打ち、都市の魔導網が不安定に揺れていた。

魔導喫茶ピッコロッソの扉が開くと、神月が魔導端末を片手に駆け込んだ。


「マジマ・ガリレイが再び動いた。魔導塔の最深部に爆弾を設置してる。都市全体を巻き込むつもりよ」


葉月は紅茶の湯を止め、静かに言った。

「彼は、正義を語る。でもその正義は、誰かの命を踏み台にしてる」


星月は魔導銃を腰に装着しながら言った。

「私が行く。あなたの命を守るために」


葉月は頷きながら、魔導弾を装填した。

「私も行く。これは、私自身の選択だから」


魔導塔の内部は、魔導障壁で満たされていた。

階層を登るごとに、過去の記憶が葉月の胸を締めつける。

かつて命を奪った場所、心臓を与えられた瞬間、そして星月と出会った日。


最深部で待っていたのは、マジマ・ガリレイ。

彼は魔導爆弾の起動装置を手にしながら言った。


「この都市は腐っている。選ばれた命だけが生き残る世界なんて、間違ってる。だから、壊す」


葉月は一歩前に出て言った。

「あなたの正義は、誰かの命を奪ってる。それは、私が拒んだもの」


マジマは魔導弾を放ち、戦闘が始まった。

塔の障壁が軋み、魔導波が都市全体に広がる。

星月は葉月を守りながら応戦し、神月は喫茶店から魔導端末で爆弾の解除コードを解析していた。


グランデロッソは魔導心臓の構造を再解析し、葉月の命を救う方法を探していた。


「葉月の心臓には、予備の魔導核がある。それを起動すれば、命を繋げる」


戦闘の中、葉月はマジマに向かって叫んだ。


「私は、誰かの選択じゃなく、自分の意思で生きる。あなたの正義には従わない!」


マジマは爆弾の起動を試みるが、神月の解析が間に合い、魔導波が逆流する。

爆弾は花火のように空へと昇り、都市は救われた。


葉月は倒れかけたが、星月が彼女を抱きとめた。


「あなたを救うために、私はここにいる」


葉月は微笑みながら言った。


「ありがとう。あなたがいてくれて、よかった」


その夜、喫茶店に戻った葉月は、静かに紅茶を淹れた。

星月がそれを受け取り、神月が端末を閉じ、グランデがクッキーをつまむ。


ピアノとストリングスが、夜の空気に溶けていく。

魔導都市の夜空には、星が瞬いていた。

喫茶店の窓から見えるその光は、どこか儚く、そして優しかった。


魔導喫茶ピッコロッソの一日が終わる頃、葉月はカウンターで紅茶を差し出しながら言った。


「私は、まだ生きてる。それだけで、十分」


星月は紅茶を受け取りながら、ほんの少しだけ微笑んだ。


空に浮かぶ大図書塔の影が、魔導都市フィレンツェを静かに包んでいた。


次回、最終話。

マジマとの決着、そして葉月の未来。

爆弾は花火に変わり、喫茶店は新たな地へ。

葉月は「諦めていたことから始めよう」

と語り、星月は「その言葉、信じる」

と答える。


魔導喫茶ピッコロッソ、最後までお楽しみに。


その夜のエンドカードには、魔導塔の最深部で葉月と星月が肩を寄せ合い、爆弾が花火となって空に舞う瞬間が描かれていた。

背景には魔導都市の夜景が広がり、星が静かに瞬いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ