タイトル未定2025/04/20 23:30
毎日彼への恋文を書く
“拝啓、ウェンディール様”
この書き出しで一体何通書いただろう。自分でもよくわからなくなるくらいたくさん書いたので、もう書くことが思いつかなくて頭を抱えた。
私、アーデリアは、仕事で代書屋を請け負っている。代書屋は字の読み書きができない人や、字を書くことを得意としない人たちがお客様。そんな人たちがお金を払って手紙や品書きを代筆屋に依頼する。
貴族令嬢は労働を恥とされるけれど、私は仕事をしていた。それは家が貧しいからだ。そもそも父の始めた事業が失敗した時の借金が原因で、うちには弟の学費分のお金すらなかった。
せめて弟だけでもまともな教育を受けさせようと、母は礼儀作法の先生として働きに出ることになった。私も力になりたいと思ったけど、嫁入り前に働くなんて外聞が悪いと反対されてしまう。
しかし、なるべく人目につかない、かつ、私の得意が活かせるものならいいだろう、ということで、代筆業をすることになった。
それから色々あったけれど、なんとか代筆の仕事をこなし、ちょっとずつお客様も増えてきた矢先、社交界では大事件が起きた。
件の山ほどの恋文を受け取るウェンディール様が、国外遠征から帰国されたのだ。凱旋式典での凛々しく麗しいお姿に、心ゆさぶられた令嬢が貴族、平民問わずで、街に溢れかえった。
「だからって恋文くらい自分で書きなさいよ」
平民なら字が書けないから依頼するのはわかる。しかし明らかに字を書くことができる貴族令嬢が依頼するのは違うのでないかと思う。いくら代書の字が上手いからといって、好いた人に少しでも好印象をもってもらいたいからといって、自分の気持ちは自分の文字で伝えたほうが伝わるとのではないかしら。
しかも字が書ける人に限って「細かいところはおまかせ」なのだ。こうなってはもう依頼者からウェンディール様へのではなく、私からウェンディール様への恋文ではないのか。そう不満に思いながらも、報酬がいいので、私は断ることはできなかった。毎日唸りながら美辞麗句をひねりだす羽目になっていた。
あなたの美しい瞳に吸い込まれそう、だとか、太い腕に抱かれたいだとか、夢で一度お会いしましただとか、依頼主のタイプに合わせて言葉を書き続ける。
代筆をわざわざ頼むのはわからない、と思うけれど、ウェンディール様が魅力的な人だということは否定できないな、と思う。
一度だけウェンディール様を近くで見たことがある。ウェンディール様への恋文依頼が舞い込み始めたころ、噂では聞いたことがあるけれど、実際の彼を知らないと真実味のある恋文が書けないと思い立ち、ウェンディール様の来る夜会に参加することを決めた。実家の伯爵家に届いた招待状の中から、招待客が多くウェンディール様も参加しそうな会を選び、参加することにした。
夜会は久しぶりだった。家が貧乏になってからは一度も参加していなかったので、ドレスは母の古臭いシンプルな形のお下がりで、少し恥ずかしかった。しかし、結婚相手を探しに行くわけではないのだから、と思い直して、私は会場へ向かった。
その夜会は大規模に行われた。あまりの豪華さに目が眩みそうになりながら、私は地味で目立たない壁の花として、会場の隅にいた。一方、ウェンディール様は会場の中心にいて、ひっきりなしに人とお話をされている。基本的に女性から男性に話しかけるのは無礼とされているので、女性と話すことはなかったけれど、男性とお話をされている周りには女性たちが円陣のように周りに並んで様子をうかがっている。
そんなわけなので、ウェンディール様の周りには2重3重に人垣ができて、とてもではないが、近づける状況ではなかった。
しかし、曲が始まると、ホールの真ん中は踊る人たちのスペースになる。ウェンディール様は誰も誘わなかったので、驚いたことに壁ぎわでワインを飲んでいる私のすぐそばに来たのだ。
女性たちは本命ではなくても誘われた男性と踊りながら、自分の魅力をウェンディール様にアピールしようとしている。できれば、直接話して情報を集めたいところだったけれど、女性たちの意識は踊りながらもウェンディール様に向いている。
そんな状況では怖くて話しかけることはできず、横顔を見ることしかできなかった。
軍人らしく姿勢よくされている。きりりとした目元は涼やかで、鼻は高く整っている。輝くような金の髪をきっちりと整え、軍服の着こなしは規定通りから少し外して、襟もとを崩している。胸に差したハンカチーフはその瞳と同じ青色だ。
「そのワイン、おいしいですか?」
小さな声で話しかけられて、私はびっくりして手に持ったワインを落としそうになった。ウェンディール様は話しかけながらも、視線は会場の中心を見ている。
初めて聞いたウェンディール様の声は、澄んでよくとおる聞き心地のいい声だった。美味しいか聞かれた手元のワインはあまり飲んだことのないくらい上質なものだったので、驚きながらも素直に答えた。
「ええ、とても」
「じゃあ、次はそれを飲んでみようかな」
そう言って、口角を軽く上げ、一瞬だけ目線を私に寄越した。
いたずらっ子のようなしぐさに、私はドキッとして、目を伏せた。そして急に古いドレスが恥ずかしくてたまらなくなった。おそらくウェンディール様にとっては、大したことのない一言なのだけれど、こんなことを日常的にされていれば、勘違いしてしまう女性が多いのもうなずける。
そのあと、もしほかの女性たちに気付かれていたらと思うと怖くなって、曲が終わる前にそそくさと会場を後にした。真実味のある恋文を書くには、十分な接触ができたと思う。
実際、その日以降、私の書く恋文の評判は上がった。依頼数も増え、書く筆にも力がこもる。
――あなたのことを考えない日はありません。
書いているうちに分からなくなる。依頼者の望み通りに書いているはずの恋文だけど、毎日毎日書いているうちに、私もウェンディール様のことが好きかのように思えてくる。実際どうだろうか、あの日見たウェンディール様の姿、声を思い出して、頬を熱くした。
しかし、私は首を振って、その考えを頭から消した。ウェンディール様のことが好きでも、この恋は叶わないと誰もが思うだろう。それは家と家の釣り合いを大切にする貴族社会で、我が家の状況と彼の立場を考えれば明白なことだった。
ウェンディール様は伯爵家の4男だ。それだけを考えれば、伯爵家の我が家とはつり合いが悪くないようにも見える。しかしウェンディール様は英雄であり、4男でありながら、一代限りの子爵位を国王から賜っている。
そうなってくると、結婚相手の条件として有利なのは次の通りになる。
まず侯爵家以上の上位の家格の令嬢。次に後継ぎがない貴族家の令嬢。最後に裕福な貴族、または平民の娘。
どれも、結婚するだけで今以上の待遇を得られる相手だ。当然ながら私はこの条件をひとつも満たしていない。そして、彼への求婚者の中には、すべての条件を満たすご令嬢がごろごろいるのだ。
この条件から外れていると、絶世の美女でもない限り、ウェンディール様の目に留まることはないだろう。
大体、持参金も用意できない家の、働いている娘なんて、もらってくれるところがあるかしら。自分で考えていて悲しくなった。
やめよう、そう思ってペンを持つ。今の私にできることは、書くことだけなのだから。今書いている手紙も急ぎと言われているけれど、もう3日も待たせている。恋文だから、なるべく早く届けたい気持ちもわかるし、早く書くようにしているのだけど、丁寧な字で間違いなく、中身も気持ちのこもったものにしてあげたいと思うと、どうしても時間はかかるし、依頼は次から次へとくるので、このところは引き受ける量を制限しているくらいだった。
カランカランと一階のドアベルが鳴る。私が手紙を書いているのは、我が家が代々贔屓にしている文具店の二階だ。主人に手数料を払って、2階の部屋の貸し出しと、代書屋の受付もお願いしている。
文具店は貴族街の外れにあり、貴族たちも利用しやすいし、平民でも来ることができる。手紙を書くための道具を売っている場所でもあるので、インクや便箋を求めにきて、貼ってある代書屋の案内を見て依頼する人も多い。
代書は、家でもできる仕事だけれど、インクや便箋はすぐに選べた方が都合がよく、作業用のこの部屋の方が仕事が捗った。
一階から声が聞こえる。男性の声だ。少し怒っているようにも聞こえて、私はペンを一旦置いて、聞き耳をたてた。
今日の店番は店主のお母さんだ。もう老齢で、耳も遠くなっている。なにかトラブルになっているなら、助けなきゃ、そう思って部屋を出て、階段の踊り場で下の様子を伺った。
下からはほとんど真上になるので見えづらいが、階段の上からだと、ちょうど客と、店番の老婆の様子が見える。声も聞こえた。
「だから、おばあさん、何回も言っているけどね」
「悪いねぇ、大きな声でお願いしますよ」
男の声には聞き覚えがあった。澄んだよく通る声、一度だけ聞いたことがある、ウェンディール様の声だ。
まさかと思って、階段の柵から身を乗り出して覗くと、あの輝くような金色の髪が見えた。間違いない、あの日夜会で見たそのままだ。
でも、なぜここにウェンディール様が来たのだろう? ここは貴族街の端にある道具屋だけど、貴族の使用人が注文書をもってやってくることはあっても、貴族がわざわざ来ることは少なかった。そのため、ますますどうしてここに来たのか、私にはわからなかった。
「ここが、ロゼリアの代書屋で、間違いない?」
ロゼリアは私の仕事で使っている名前だ。本名だと外聞が悪いというので、その名前を使っていた。
「ええ、そうですよ。ご依頼ですか?」
「依頼じゃなくて、これを渡してほしいんだ」
ウェンディール様は懐から封筒を取り出した。
「ああ、ご依頼ですね」
「ちがうんだけど、まあいいか。これで足りる?」
「私じゃ金額がわからなくてね、余分な分は、できたものと一緒に返しますんで、とりあえず預かりますよ」
老婆は手紙と銀貨一枚を受け取った。
「たのんだよ」
「ええ、たのまれましたよ」
ウェンディール様はそのまま出て行った。カランカランとドアベルが鳴る。
「おばあさん」
「ロゼリアちゃんか、ああ、つい今依頼があったよ、これ」
おばあさんは私の本名を知らないから、代書屋の名前、ロゼリアと呼んでいた。
「男の人がロゼリアちゃんにっていうのは珍しいね。普通は男の代書屋に頼むものだけどね」
「そうね、私も初めてだわ。ありがとう、おばあさん」
私は受け取った封筒をじっと見る。しっかりと封蝋もされている。さっきウェンディール様が言っていた、依頼じゃないという言葉も気になって、早く中を見たくて気持ちが焦る。
部屋に持って行って読むことにして、私は階段を駆け上がった。
椅子に座って、ふうと一回深呼吸して、それから便箋を開いた。一枚の半分ほどしか埋まっていない。余計なことが書かれていないシンプルな手紙だった。
少しクセのある字で、力強く書かれている。内容は、令嬢からもらう手紙の中でロゼリアのことを知ったこと、もらう手紙のほとんどをロゼリアが代筆していたことなどが書かれていた。
あるところで目が止まる。
もし、迷惑でなければ、一度お会いしたくて、こうして手紙を書いています。お返事お待ちしています。
簡潔な手紙は用件だけ、そこまでで終わっていた。
読み終えた私は嬉しさと困惑で頭を抱えた。
どうして? 手紙に何か失礼があった? それとも、もしかして、万が一だけど、あのご令嬢たちに大人気のウェンディール様が、まさか、まさか、代書を通じて私に興味を持ったの?
男女での会いたい、は、一般的には、交際を前提にするのだけど、この場合、それが当てはまるのか、私にはわからなくなってしまう。
だって、ウェンディール様がロゼリアについて知っていることって、私の書く字だけだと思う。私の容姿も、立場もなにも知らずに、会いたいなんていうのかしら。
「どうしよう」
私はしばらく悩んだ。私自身はウェンディール様に好意はあるし、身の程を考えなければ勿体無いくらいの方だと思う。だから、どんな内容でもできればお会いしたい。
その方向で返事を書くとして、でも一体どこで会うことにすればいいだろう。
ウェンディール様は目立つ方だ、外で会うことは論外だし、我が家に来てもらったり相手の家に行くことも、変な噂になることを考えると避けたい。
悩んでから、結局、この店に来てもらうことにした。私は週に一度だけ、店員が出払うタイミングに店番をしている。そんなに人が来る店ではないので、ちょっとした話なら立ち話でも十分だと思う。
私は時間を指定して、来店してくれれば会えます、と返事を書いて、ウェンディール様に届けてもらった。
次の店番の日まではあっという間だった。
「じゃあ、お願いね」
「はい」
おばあさんから店番を引き継いですぐに、ウェンディール様はやってきた。
「こんにちは」
「いらっしゃいませ」
「あなたがロゼリア?」
「ええ」
「会ったことがあるよね、どこだったか、夜会で」
言われて、私はかっと頬が熱くなるのを感じた。覚えられていると思わなかった。母のお下がりを着て、とても見られた姿ではなかったと思う。
「それで、なんのご用でしたか?」
私はそれ以上夜会の話をしたくなくて、話の先を促した。恥ずかしさを隠そうとして、思ったよりも冷たい声が出た。
ウェンディール様は無愛想な返事も意に介さない様子だった。
「交際を申し込むつもりで来たんです」
「交際!?」
聞き間違いかと思って聞き返すと、ウェンディール様はにこりと笑ってもう一度言った。
「そう、交際」
「どうしてですか? ロゼリアが私ってことも知らなかったんでしょう?」
頷くより前に、なんで私なのかがわからなくて、かわいくないと自分でも思いながら、そんなことを聞いてしまう。
ウェンディール様のことなら有名だから誰でも知っているけれど、私は社交会では無名だし、本名も知られていないはずだ。
「そうかな、話したことはないけれど、手紙からだっていろんなことがわかると思う。ロゼリアが書いた手紙なら、誰よりも読んでいる自信がある。最初はきれいな字だなと思っていただけだけど、いくつも読んでいるとちょっとした違いにも気づいたりして、ロゼリアが一から考えた手紙と、単純に代筆だけやっている手紙の違いにもね」
注意深く依頼者によって文体を変えていたつもりだったが、ウェンディール様には分かったらしい。普通は代筆の文章を何人分も読み通したりしないので、私の書き分けは十分だったはずだ。
「手紙はどれも、ほとんど話したことのない令嬢からでね。読むことは読むけど、きりがないからほとんど返事も返さない。でもいつからか、ロゼリアが代筆した手紙だけは心待ちにするようになった。むしろ何度も読み返したりしてね。どんな人が書いているか興味が湧いて、それで会ってみたいと思ったんだ」
「そうでしたか」
「俺の勘違いじゃなければ、君も俺に会いたかったんじゃない? よほど好きじゃないとああいうふうには書けないと思うよ」
図星をつかれて私は自分の顔が真っ赤になるのを感じた。
カウンターの陰に座り込んでしまう。
自分が書いた手紙の内容が次々と思い出す。自分の気持ちを入れて書いたぶん、全部伝わってしまったと思うと恥ずかしくて、とても顔をあげられなかった。
「大丈夫? 具合でも悪い?」
「違うんです、ただ、恥ずかしくて。書いている時は、まさか気づかれるとは思っていなくて」
否定しながら、顔を上げると、目の前にウェンディール様の顔があって驚いた。
青い目がすぐ近くにある。心臓がせり上がってきて、喉から出てきそうなくらい、バクバクする音が耳に響いた。
カランカランと音が鳴ってドアが開いた。お客様だ。私は勢いよく立ち上がる。
「いらっしゃいませ」
ウェンディール様も立ち上がった。背が高いので、私から入り口の様子は見えなくなる。入ってきたお客様は、私たちの方をチラリと見た後、店内に展示している便箋のコーナーに進み、どれにしようか選んでいる。
「仕事の邪魔になるといけない。そろそろ失礼するよ」
「あの、ちょっと待っててください」
私はカウンターに備え付けているメモ用紙に自宅の住所を書き込んだ。
「これ、私の連絡先です。あと、毎週この時間は店番の当番なので、その、来てもらえれば、お話できると思います」
ウェンディール様は、メモ用紙を受け取って、くすりと笑った。
「つまり、俺は期待してもいいってことかな」
「期待というか、逆に本当に私で良かったか、ちゃんとわかってからにしたほうがいいと思います」
また余計なことを言ってしまった。でも本心だった。私はウェンディール様について、十分に知っているけれど、ウェンディール様は私のことをよく知らないのだ。きっと本名だって、今書いたメモで初めて知って、顔だって、今日来るまでわからなかったくらいなのに、いきなり交際なんて、私には信じきれない。
ウェンディール様がどう思ったかわからなくて、私は伺うように高い位置にある顔を見上げた。
ウェンディール様は私から目線をはずして、左手で口元を覆って、「そうくるか」と小さくつぶやいていた。
「また来るよ。手紙も書くから、返事を待ってるね」
さらっとそのまま私の方を見ずに、カランカランとドアベルの音を残して、ウェンディール様は去っていった。変なことを言うと呆れられたかしら。心配しながら、でもそもそも今日起きたこと自体がなんだか信じられなくて、ふわふわと足元が浮いてしまうような気持ちでいると、お客様の声が私を現実に引き戻した。
「これ、お願いね」
「…はい、便箋二冊なので…」
代金を受け取って、おつりを渡す。
お客様がいなくなった店内で、私は力が抜けて、店番用の椅子に崩れるように座り込んだ。
「信じられない」
何かの悪戯か、夢ではないかと思い始める。そうだった方が気が軽い。だって相手はあのウェンディール様だ。交際したとして、ファンの方々からどのような目で見られることになるか。
そこまで考えて、はっとする。
「え、どうしよう。今の依頼」
すでに受けてしまっているウェンディール様関係の依頼が5件ある。そのうち2件は先方の原稿丸写しなので問題ない。しかし、残りの3件は、私が内容を考えなければいけないのだ。ウェンディール様宛の恋文を、別人のふりをして書かなければならない。しかもウェンディール様自身が、私が代筆していると知っているのに、だ。
「書けるわけないじゃない」
考えるだけで恥ずかしくなる。なんとか断りを考えよう。実入りを考えると惜しいけれど、こうなってしまっては依頼者からしてもウェンディール様の恋人に恋文の代筆をさせるのは不本意だろうし、依頼者に対しても失礼だ。ちゃんと断ろう。
その後、ロゼリアの代書屋で、ウェンディール様宛の恋文は扱わなくなった。そのせいで依頼の数が減るかと思ったけれど、減らなかった。それどころか増えた。どこからかウェンディール様の恋の相手がロゼリアの代書屋を利用していたらしいと噂が広がったからだ。ウェンディール様の心を射止めた代書屋として、図らずも箔がついてしまった。
今、ロゼリアの代書屋がウェンディール様に宛てて書くのは、私こと彼の婚約者である伯爵令嬢アーデリアの恋文だけだ。