高校生の僕…黒羽と大鬼丸の戦い②
「なんで、そこまでするんだよ。死ぬかもしれないんだぞ!?」
と、僕は大声で黒羽を呼び止める。
黒羽の足なら、ここからでも逃げられる、と僕はそんな淡い期待をしていた。
黒羽は逆境に立たされているというのに、振り返った時、僕を見て笑っていた。僕は、その笑顔に強く引き付けられる一方、なぜそんな顔をするのか不思議に思う。
「俺は、この町と大切な人を守るために戦うんだ。
…君が、そんな風に俺を産んだんじゃないか」
僕は、はっとして、流れてくる涙をぬぐうこともせずに黒羽の後ろ姿をただ見つめていた。
僕は、黒羽が命を懸けて戦う姿を見て、恐怖とは違った涙が頬を伝うのを感じる。
僕と同じ、高校生なのに。
僕がただぼんやり日々を過ごしている一方で、黒羽は宿命ともいえるものに立ち向かっている…。
そして、黒羽は、戦う理由に僕がいるといってくれた…。
僕がみんなにイラストを描いて、見せて回っては遊んでいた時間。『紅の鬼炎刀』を描いた小学生のとき。はじめてGペンに触った瞬間。漫画を描き終えた喜び。
それらが、僕の頭の中でぐるぐると巡った。
「それじゃあ、勝ってくるよ」
黒羽はあの、優しく明瞭な声で言うと、軽々と地面を蹴り上げた。