表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/13

高校生の僕…黒羽赤峯、現る①

僕は、漫画を描き終えた夜、疲れ切って、Gペンを握ったまま、机に顔をつけて眠り込んでしまっていた。


 夜も更けてきたころ、浅い眠りの縁にいた僕は、ごそごそという物音が聴こえて、目を覚ます。


 顔を上げると、開け放した窓の向こうから、こちらに向かって部屋に入り込もうとしている男がいた。


 僕は驚きのあまり、ここが2階だということも忘れていたし、声を発するのも忘れて、その男を見つめた。


 顔の右半分は焼けただれて、理知的な瞳をした学ランの男が窓から身を乗り出しているのだ。


「やぁ、文待晃(ふみまつあきら)くんだね」


男はやさしく、明瞭な声でそう言った。


「くくく、黒羽(くろば)だ!!!」


 僕は興奮のあまり、飛び上がった反動で前に倒れ込んだ。がしゃーんという音をたてて、机の上の画材が飛び散り、椅子が横倒しになる。

 黒羽(くろば)がそれを見て、きょとんとした顔をした後、窓から部屋に入って、僕の体を起こしてくれた。


 紛れもなく、僕が描いた漫画の主人公の黒羽赤峯(くろばあかね)がそこにいた。


「大丈夫?僕の生みの親なんだからしゃんとしてくれなきゃ困るよ」


黒羽(くろば)のからかうような口調に、僕の体はふわふわとした高揚感でいっぱいになった。


「うそ?!なにこれ、夢?!夢じゃないよね?!」


 僕は、はっとして口をおおって、声を潜めた。聞き耳を立てたが、下で寝ている親は、起きてくる気配がないので胸を撫で下ろす。


 改めて見た黒羽(くろば)はイケメンという設定にしていたが、俳優をやっています、と言われてもおかしくないほど整った顔をしていた。

 顔の右半分が焼けただれているのは、実際に見ると皮膚が引きつれ、グロテスクにも見える。なかなかインパクトがあるが、それが逆に絹のような白い肌とマッチして、黒羽(くろば)の怪しげな魅力を引き立てているように見える。


「なかなか、いい設定にしたな、俺」

 

と、僕は黒羽(くろば)を凝視し、監督ばりにふむふむ、とその顔を見つめる。


「うーん、どこからどう見ても、俺のイメージ通りだ…」


僕はひとり、噛みしめるように頷いたり、独り言を言ったりを繰り返した。

黒羽(くろば)は落ち着かない様子で、そわそわと耳のあたりをいじっている。



「…なに?俺の顔に何かついてる?」

「うわぁ!声!その声だよ!わぁー、あの声優さんまんまじゃん!」


 僕は思わず黒羽(くろば)を両手で、ゲッツ!のように指さしてしまった。

 黒羽(くろば)の声帯は、僕が大好きな男性声優さんのそのままのものだった。

 喋るたびにいい声が耳元で聴こえてきて、僕はあまりの気持ちよさに昇天しそうになる。


「すげー…。アニメじゃなくて生きてるよ。これが夢なら覚めなくていい」


僕は、自分の作ったキャラクターに、命が宿っていることに、この上ない快感を感じていた。

上から下まで、何度、学生服の彼を見ても見飽きないほどだ。


(あきら)くん、俺、本題に入りたいんだけど…」

「ちょっと待って!その前に刀見せて!」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ