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高校生の僕…家路

「やった!!!やった!!!すげー!!!」

  

 僕は足の傷も忘れて、黒羽(くろば)に駆け寄った。


 紫の液体と、汗と血と泥で、黒羽(くろば)の体は汚れている。酒の匂いと、魚のような生臭い匂いが、鼻を突いた。


「う…なんか、変なにおいするけど?」

「戦った証なんだから、仕方ないだろ?大目に見てくれよ」


 黒羽(くろば)は頬を膨らませると、すぐに表情を戻して、僕に向かってしゃがみこんだ。


「はい」

「え…なに?」

「その傷じゃ家まで帰れないでしょ?俺がおぶっていくよ」


 僕は黒羽(くろば)に肩車してもらいながら、(せん)の森を下っていく。


 ◆


 森の中だから、町と違って白んできた夜空には空いっぱいの満点の星が広がっていた。


 僕はゆさゆさとゆすられながら、黒羽(くろば)の細いけどたくましい背中と、この星空を一生忘れないだろう、と思う。



黒羽(くろば)、めちゃくちゃかっこよかったよ」

「ありがとう。…かっこいいのは顔だけじゃないだろ?」

「ほんとだよ!すげー、すげーな」

「さっきからすげーばっか」


 辺りは真暗で、虫の声と、黒羽(くろば)が砂利を踏む音しかしない。


 僕は贅沢な夜だな、とじんわりと感動している。

 僕はふと思うことがあって、話しを切り出した。



「これから、どうするの?」

「これからって?」

「だって、大鬼丸(おおおにまる)は倒したんだろ?」

「それは分からないさ。続きがないんだもの。もうこの漫画はおしまいだろ?まあ、また鬼が現れるかもしれないし、俺はもう戦わないのかもしれない」


 黒羽(くろば)がなんとなしに言った言葉に、僕は胸を突かれた。


 続きがないーーーー。


 僕はその言葉に、思わず黙り込んでしまった。 


 ◆


 僕が黙り込んだまま、僕たちは家に帰って来た。

 

 2階の窓からこっそりと戻ると、親はまだ寝ているらしい。

 黒羽(くろば)は僕を部屋に下ろすと、窓枠に手をかけた。


「じゃあね、(あきら)くん」


 別れの挨拶をする黒羽(くろば)を僕は呼び止めた。


「待って、…もう、会えないの?」

「俺が漫画のキャラクターだってこと、忘れてない?また会えるさ。作者の君が望むならね」



 黒羽(くろば)は微笑んでそう言うと、明け方の空に吸い込まれるように軽やかに跳んでいった。



 僕はその後ろ姿をいつまでも見ていたいと思っていたが、すぐに僕には猛烈な眠気が襲ってきて、僕はそのまま床で寝てしまった。

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