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Winter,Again

作者: 風海南都


 風の音がする。 

 耳をすませば、微かに遠く小さな歌声。

 雪がぶつかり合う音に混じって、僕の耳の奥にだけ響く君の小さなつぶやき。

 北の大地はどこまでも広くて、どこまでも白くて、凍てついたため息は結晶となってひらひら落ちていく。



 ──大人になったら、きっと。

 あの頃はいつだってそう思っていた。

 ──大人になったら、きっと。

 この真っ白な道に二人で足跡をつけて、振り返りながら笑いあえると思っていた。

 君の手を取って、この道を歩けると思っていた。

 ──大人になったらきっと。

 二人でそう信じていた。

 時の流れと一緒に、僕の心の中の雪は灰色に濁ってきたような気がする。 

 大人になったら白い雪はどこかへ消えて、乾いたアスファルトの上で右往左往する毎日に流されて。

 僕は君の足跡を見つけることができなくて。


「会いたいの……」

 受話器の向こうで歌うようにつぶやく君の声。

 僕は、街の喧騒にかき消され聞こえないフリをした。

 あれからいくつもの季節が過ぎて、いくつもの足跡が僕の心については消えて。


 たった一つだけ残っていたのは君の足跡。

 遠い北の大地の雪の下で、ずっと眠っていたそれを見つけたときにはもう遅すぎて。

 氷の華に閉じ込められた君の心を抱きしめる。

 指先から伝わるのは凍えた君の痛み。

 頬を伝う一粒の雫は、愚かな僕の言い訳。


 真っ白な北の大地で、僕は君の足跡を探す。

 


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