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スプーンで宝石を食べる犬
スプーンで宝石を食べる犬を飼い始めた。
食料の値段が上がり、宝石の価値がすごく下がったあとで。人間の食べ物もままならない世界で、小さな宝石を銀のスプーン一杯に掬って犬の鼻先に差し出す。白いふわふわとした犬は優雅に宝石を口の中に入れる。
犬は育ち、私は痩せていく。
そのうちに、犬が宝石を食べるときの咀嚼音がおかしいことに気がついた。シャクシャクと、まるで琥珀糖を食べているような音がする。美味しそうだ。お腹が減る。
私は犬のスプーンを奪い、宝石を食べる。
甘くて透き通るような、琥珀糖の味がする。
食べるうちに、私の体は白くふわふわとした犬になる。
犬は私のかたちをとり、人間の姿で「ワン」と言う。犬はもうお腹が減ることがないようだ。
元犬の人間は薄ら笑いを浮かべながら、銀のスプーンを持ち、白く小さな犬の口元へと宝石を運んでいる。




