影のあるおばけちゃん
白いおばけちゃんには、影がありました。
道ゆくシルクハットを被った紳士が、影を指さしておばけちゃんを怒りました。
「なんだこのおばけは! 影があるぞ!」
「おばけは影があったらダメだって、学校で習わなかったのか!」
「ほら、ハサミで、切りなさい!」
紳士はおばけちゃんに、ハサミを渡しました。
おばけちゃんは、地面につかない足元に伸びる影を見ました。
おばけちゃんにうりふたつの黒いおばけちゃんが、おばけちゃんのことを見つめていました。
でもおばけちゃんは、紳士のことがこわくて、こわかったので、ハサミで影を切りました。
ジョキ、ジョキ、ジョキ。
影のおばけちゃんは、白いおばけちゃんの前にふわっと浮かび上がりました。
それはまるで、もうひとりのおばけちゃんです。
影のおばけちゃんは、白いおばけちゃんの気持ちがよくわかるようでした。
ふたりの気持ちは、伝わりあっていました。
なので、泣いている白いおばけちゃんに、ただ、「バイバイ」と手を振って。
影のおばけちゃんは、光に溶け込むように、どこかへ消えて行きました。
白いおばけちゃんは、何も言わなくても気持ちの伝わる相手を失ってしまいました。
だれかに怒られたくらいで。
どうして、あんなにやさしい、唯一無二の親友を手放してしまったのだろう。
おばけちゃんは涙をぽろぽろ流して、泣きました。




