09.恋愛
勉強とピアノしかしてこなかったから、高校に入ってピアノを弾くことがなくなってからはアルバイトをしていた。
したくてしていたというか、暇だったから。
この時、バイト先で
1つ年上の【山口 春樹】に出会った。
彼は私の初めての彼氏になる人。
同じ時間帯にアルバイトに入ることも多く、
惹かれ合うのにはそう時間はかからなかった。
春樹は明るくて気さくで気がきく人だった。
私は、そんな彼に気づいたら恋をしていた。
かなり昔のことだから、好きになったきっかけとか
そういう事は細かく覚えてはいないけれど
とにかく自分にないものを持っているように見えて
とっても眩しく見えていた。
『一緒に帰らない?』
歩き出そうとしていた時、春樹が声をかけてきて
自転車で二人乗りをして、家まで送ってくれた。
その日からは、シフトがかぶる日は毎回送ってくれた。
1ヶ月くらいたった頃だった。
春樹がいつも通り送ってくれて、
バイバイしようとした時
『ちょっと待って!…あのさ、俺たち付き合わない?』
心臓が止まるかと思った瞬間だった。
固まる私。
焦る春樹。
私は慌てて「あの、、その、、うん。私でよければ」
そう答えた。
春樹はほっとした顔で『やったー!嬉しい!また明日!』と言って爆走して帰って行った。
久しぶりに私も
心から笑ってしまった。
恋ってこんなにドキドキして
どうにかなりそうになってしまうものなんだなって
初めて知った時だった。
春樹とは高校は遠かったけど、家はそこまで遠く無かったから、学校から一度帰ってから会うことが多かった。
アルバイトをしていたから、出かけられる場所も多くて
いろんなところに出かけて思い出を作った。
プリクラも毎回撮って、大好きとかずっと一緒とか
そんなことばかり書いていた。
付き合ってから1年ほど経って
春樹は受験生になった。大学受験だ。
春樹は、慶應か明治大学に行きたいと言っていた。
元々、春樹の今の偏差値だと
かなり厳しいラインだったみたいで
相当勉強をしていた。
偏差値を15上げると言って。
私は応援していたけど、会える時間も減って
2人で聞いていたスキマスイッチのライブも行けず
模試の結果が悪い時は、ドタキャンされることも増えた。
アルバイトも週一しか春樹は入れないから
もう会えるタイミングがほぼ無いに等しかった。
私は耐えていた。
頑張っている人を止めたりワガママを言うことや
自分の意見を押し付けることは絶対にしたくない。
そう思って、必死に寂しさを堪えていた。
それから半年が経って、受験も追い込みに入り
ついにLINEすら1日に1件になった。
私も限界で、春樹はもう受験のことしか頭になかった。
「春樹、話したいことがあるの」
『LINEじゃダメなの?』
「大事なことだから電話したい」
『ごめん、今日は難しいから明日電話する』
「わかった。勉強頑張ってね」
この日に話せていたら、別れてなかったかもしれない。
でももう気持ちの整理がこの会話でついてしまった。
次の日、電話をした。
お互い気持ちはあることが感じられる空気の中で
私たちの一年半の恋はおわった。




