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рассвет  作者:
これはまだ私がただの女子高生だったころのお話
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これはまだ私がただの女子高生だったころのお話:DATA 4

 アラームが鳴ると同時に止める。

 寝ていません。

 数秒前にようやくイベント終了となり、私はくそでかため息を吐く。


「長いよ。2日連続、寝不足だ」


 クラメンにお疲れ様の挨拶をしてお別れ。

 平然と徹夜ゲームしてんだろ?

 クラメン、社会人なんだぜ?

 ちなみにクラメンたちはボイスチャットを付けている。

 私は無言勢。

 テキストチャットのみだ。

 PCの電源を切って洗面台へ。

 また肌の荒れた寝不足の顔だ。

 歯を磨いて、リビングへ。

 ママンと目が合った。


「まーたゲームしてたね。朝雄たけびが聞こえたよ」


 糖分が枯渇した頭で考える。

 ああ、5人の敵プレイヤーと遭遇した時に私1人で5人を全員倒しきって優勝が決定した時につい叫んでしまったんだった。

 反省反省。

 ところで自分でも思っても見なかった神プレイが出来た後ってお手々ぶるぶる震えませんか?私だけですか?そうですか。


「ごめん」


「程ほどにね。でもひどい顔。学校休む?」


「うーん。行く」


「早退してもいいからね」


 頷く。

 しかし私みたいなボッチは存在感がないので回数で補わないと忘れてしまうのではないか?という不安が常にあるのだ。

 日直の時とかに用事で話しかけたら「えっと、誰だっけ?」と中学の時に言われたのは未だに心に刺さっている。

 だから高校生活では最低でも忘れられないように登校はしっかりと続けようと思う。

「ずっと寝てる人」ポジションでも構わない。

 コーヒーと食パンが出される。

 砂糖とミルクは既に入っている。

 程よくぬるくしてくれているそれを半分ほど一気に飲む。

 エネルギー切れを起こしている体が一気に目覚めたのを感じた。

 あ~これ30分後めっちゃ眠くなる奴~と思いながらも体が糖分の受け入れに喜んでいるのを感じる。

 食パンにバターを塗り、食べる。


「授業中眠くならない?」


 パパンが聞いてくる。


「眠い」


「早寝しないと」


 パパンの苦笑いの言葉にどっちつかずに返事をして、パンを食べきる。


「そう言えば○○通りにあるラーメン屋あるだろ。そこの息子さんミズキと同じ高校の二年生らしいな」


 パパンが思い出したように言ってくる。


「ふーん」


 ラーメンか。

 大盛はあるのだろうか。

 ん?

 同じ高校の人?

 じゃあ、行かないなあ。


 食器を片付けて自室へ。

 今日の時間割を確認する。

 忘れ物はないなと、着替えてからリュックを背負いまたリビングへ。


「あ、そうそう。今度商店街でお祭りがあるらしい。行くか?」


 またパパンが聞いてくる。


「焼きそばあるかなあ」


「そりゃ定番だからね」


「行く」


「わかった」


 両親は、機会があれば私を外に連れ出そうとする。

 もちろん強制ではない。

 私の意見を尊重して私が行かないと言えば無理強いはしてこない。

 しかし行きたいと言えば仕事をお休みしてでも連れて行ってくれる。

 昔、私は引きこもるか入院しているかのどちらかだったので、外の世界を見せたいと思ってくれているのだろうと思う。

 ので私もそれを否定しないし、出来る限り応えたいと思っている。

 いつもと同じようにお弁当を受け取ってから外へ。

 車で出勤していく両親を見送って、学校へ向かう。

 学校に着いてからもいつもと同じ。

 生徒が来るまでゲームで周回をして、素材やお金集め。

 生徒が来たら寝たふり。

 先生が来たら起きたふりをして授業が始まる。

 一時間目が開始して10分ほど。

 いつもの如き前の宮口君の背中で黒板を見るのを苦戦していると廊下から足音。

 授業が一瞬止まる。

 悠然と180㎝程の身長の男子生徒が過ぎ去っていく。

 先生が廊下に出てその男子生徒に声を掛ける。


「おい、リュウ、お前何してんだ?」


「ん? 滝先生が資料運ぶの手伝ってって言うから職員室に行くんすよ」


「なんで1年の教室通るんだよ。遠回りだろ」


「……トイレっすよ」


「トイレは休み時間に行け」


「はい」


 そんな会話をしている。

 私は授業が中断している今がチャンスと黒板を鬼っぱやでノートに写していく。

 その時教室の廊下側の窓が開いた。

 それでも私はシャーペンを止めずにちらっとだけ見てノートを見続ける。

 窓からは先生から'リュウ'と呼ばれた男子生徒がこちらを見ていた。

 ん?

 こちら?

 いや気のせいだ。

 シャーペンを走らせ続ける。


 リュウさんが声を出す。


「先生。多分あの子黒板見えてないぜ。担任に伝えといてあげてほしっす」


「ん? おお、カワサキ。黒板見えてないのか」


 私だった。


「え、あ、ん、ま、え、あ、はい」


 めちゃくちゃキョドってしまった。


「担任の先生には伝えとくから。隣、ノート見せてやれ」


「はい」


 隣の生徒が机を寄せてくるので会釈をして、私も机を寄せる。

 大きさ的に一度立ち上がらねばならず、手間だったが椅子から降りて机を押す。

 もう一度会釈をして席についてノートを見せてもらう。


「おい、リュウ。ちゃんと戻れよ」


「はい」


 言ってリュウさんはいなくなった。

 いい人、なんだろうな。

 不良、みたいだけど。

 この学校でも一定数ガラの悪い人がいるんだよな。

 隣のクラスにもヤンキーカップルがいるって噂だ。

 まあ、考えるのは止めて、ノートを一気に写させてもらう。

 次の授業は担任の先生が受け持ちだったので最初の内に席替え。

 廊下側から2列目、先頭に移動になった。

 めちゃくちゃ、黒板が見えて快適すぎた。

 もうずっと前で良い。

 時間は過ぎて放課後である。

 今日は学校の図書館で過ごして時間を潰してから帰宅です。

 帰り道。

 今日は時間も遅いので寄り道はせず帰ります。

 考える。

 私の体力のなさ。

 帰り道、走ったりすると多少変わるのだろうか。

 でも歩いているだけですぐ限界が来るのだから走ったりなんかすると死んでしまう気しかしない。

 うーん。

 私は8秒ほどで体力をつけるべきかという思考を放棄した。

 私は気持ち早歩きになり、何かをした気になって満足した気分で帰路を辿る。

 また同じくらいの時間。

 両親はさすが自衛官というべきか定刻通りに帰ってくる。

 それと同じタイミングで帰る私の体内時計も、素晴らしく正確ということだ。


 ……私の早歩きは通常の歩きと同じなのかと玄関に入ってから気付いた。

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