表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
рассвет  作者:
これはまだ私がただの女子高生だったころのお話
3/29

これはまだ私がただの女子高生だったころのお話:DATA 2

 時間は過ぎて昼休み。

 教室が途端に騒がしくなり、一斉に教室を出て走り出す者。

 机をくっ付けてお弁当箱を向き合わせる者。

 五時限目の課題を必死にやり始める者。

 各々の過ごし方を始める、そんな昼休み。

 私は朝渡されたお弁当箱を取り出す。

 三段重ねになった大きな四角いお弁当箱。

 あれだ。

 御節とか入れるあれだ。

 私は小さい。

 何もかもが小さい。

 ついでに気も小さい。

 しかし食は大きいのだ。

 意気揚々と、しかしそれを顔には出さずに弁当箱を開ける。

 カロリーしっかり。

 ロシアで生活していた時期も長い母らしい、そんなお弁当だった。

 振り返る男子生徒など気にもせず私はお弁当のおかずを食べていく。

 四時間耐えた空腹だ。

 満たさねばならない。

 私は徐々にかき込むようになりつつお弁当を減らしていく。

 十分もせず、私はお弁当を空にした。

 一息ついて、お弁当をリュックに直す。

 ふとその時男子生徒と目が合った。

 視線を感じて廊下を見た瞬間だった。

 少しガラの悪そうな、目のつり上がって眉の薄い男子生徒がこちらを見ていた。

 同級生ではない。

 恐らく上級生。

 背が高く180近い。

 周りの男子生徒たちも心なしか静かになっている。

 そんな人物と今私は目が合っている。

 すぐに我に返り、途端に上級生に三段のお弁当を平らげた瞬間を見られたのだと気付き、恥ずかしくなり目を背けた。

 その時その恐らくは先輩であろう方に同じくガラの悪い、というかチャラそうな人が声を掛けた。


「なにしてんの? バスケ行くんでしょ」


「うん」


「なに? 可愛い子でもいたん?」


「元気な子なら」


「??」


 そんな会話が聞こえてきて、恥ずかしさで、死にそうになりつつ寝たふりに移行。

 昼休みが過ぎていく。

 そして午後の授業もいつも通りに過ぎていく。

 気付けば放課後である。

 部活など入っていない私は帰りのホームルームが終わると同時に荷物をまとめて誰よりも早いのではないかというタイムで教室を出る。

 しかし、歩幅という圧倒的アドバンテージによりその先手のタイムは一瞬で埋め尽くされ結局私は日知の波から弾かれるようにして、昇降口でも後ろから待つことになる。

 これが毎日の基本だった。

 やはり気遣いも何もない位置にある昇降口の私のロッカーは高い。

 ので、人が少し減った所でロッカー横においてある台を持ってきてそれで高さを補い靴を入れ替える。

 朝はいいのだ。

 人がいないから。

 帰りはどうしても人が多いから待たねばならない。

 これが本当に嫌だ。

 しかし言っても仕方がない。

 靴を履き替えて校舎から出て、門も出る。

 また歩いて帰る。

 iPhoneに繋げた有線イヤフォンから聞こえるのは某ハンティングゲームのBGMだ。

 気分によっては、某もう一人の自分と向き合う系ゲームのBGMである。

 ちなみにだが私はiPhoneを「あいぽん」と言う。

 余談だが。

 というか、今この段階で気付いたと思う。

 私はボッチである。

 友達が一人もいないのだ。

 元々内気だし、最初から金髪碧眼ということで悪目立ちをして、結局友人など出来なかった。

 ゲームをするのだろう男子生徒が私もしているゲームの話題で盛り上がっているのも寝たふりをしながら聞く生活。

 あまりにも拷問。

 びばボッチ。

 やかましいわ。

 歩いて帰る。

 本屋に寄るのもいいなあ。

 先週は推してるラノベの発売日だったはずだと思い、道を少しだけ外れる。

 TU○○YAへ。

 CDコーナーやゲームコーナー、カードゲームコーナーもあるそこそこ大きな店舗故に騒がしいが、品揃えがいいので苦手意識を持ちつつもここに来てしまう。

 入店し、ラノベコーナーへ。

 アニメ化した某小説投稿サイト作品群の区画を通り抜けて電○文庫と角○文庫の所へ向かう。

 真のボッチは、本屋に長居しない。

 予め新作が出たら置かれるポイント。

 新作コーナーに置かれた後に次に置かれるポイントを把握し、素早くそこを通過し、停止せず、探すのもわずか二秒ほどで発見し三本のラノベを入手。

 存在感を殺すの、癖になってんだ。

 というか、少しでもなんか目立つようなことしたくないし、視界に入るのが何か嫌って理由で身に着けたこの術。

 買い物速度は日々向上している。

 何を買うか。

 どこにあるかの店内配置。

 そこまでのルート。

 店舗に到着するまでの道をメモし、想定している。

 完璧。

 真のボッチは、お店であっても人と接しないのである。

 レジは……さすがにどうしようもない。

 フードをひっぱって気持ち顔をいっそう隠してレジへ。

 気だるそうなバイトの方がレジをしてくれるのを待ち、極力喋らず、最低限の返事だけで終わらせる。

 ポイントカードを聞かれることは想定し、聞かれる前に作っていたし、レジも商品を出すと同時に手に持っていることを明示的に伝わるようにしている。

 これが、コミュニケーションを削減するための最適解である。

 ああこの頃は袋有料ではなかったなあ。

 おっとこれは未来の私の声だ。

 時を超えないでもらいたい。

 ちなみに私は電子版ではなく書籍版が好き。

 閑話休題。

 TU○○YAを出て、あいぽん(iPhone)で時間を確認。

 17時には至らない程度。

 ちらりと横を見るとサイ○とお家形ラーメン屋さん。

 悩み、うーん。

 今日はラノベを買ったしなあ。

 あ、毎月買ってる科学雑誌買ってない!

 ……ああでも同じお店にまた入るのは嫌だ。

 覚えてないと思うし仮に覚えてたとしても買い忘れただけだと判断してくれるとわかっていてもなんかこう、いやだ。

 諦めて、そのまま少し離れた店舗を目指して歩き出す。

 半分ほどまで進み、ただ歩いてるだけの私は死ぬほどの汗をかき、息が乱れていた。

 私は、死ぬほど貧弱なのだ。

 階段は一階上に上がるだけで二回休憩を挟まないといけないし50m走は15秒くらいかかる。

 いや嘘である。

 この前は18秒かかった。

 シャトルランは一回で終わる。

 反復横跳びはよくわからず4回やり直しを言い渡された上でゼロ回判定。

 ハンドボール投げはマイナス3(投げようとした時に振りかぶった時に握力なさ過ぎて落とした)。

 長座体前屈は、奇跡のゼロ。

 ていうか、体育全てがマイナスなのだ。

 素行がいいという理由で、成績は4をもらっている。

 ありがや教師陣。

 とまあ、私は、マジで体力がないのだ。

 汗をかきながらも、しかしいっそ通販でよかったじゃんと思いながらも進み、町の小さな本屋と言った体のTU○YAと比べるとかなり小規模のお店へ入る。

 ……置いてないじゃないか!

 肩を落とす私。

 何も買わずに帰るのは申し訳ないのでちょうど切らしていたメモ帳を買い、退店。

 今度こそ家を目指して帰宅する。

 時間は17時頃。

 そろそろ両親が帰ってくる頃だと私は頑張って歩く。

 ちなみにだが私は両親をそれぞれ「パパン」「ママン」と呼ぶ。

 私は小さい頃までロシアで過ごした。

 小学生に上がるくらいに日本に来て、言葉もわからないまま同じくらいの年齢の子達がパパママと言ったのを真似ようとしたのだが、うまく発音が出来ず後ろに「ん」が付いてしまった。

 それが癖というか馴染んでしまい、パパンママンとなった。

 今更変える気はないのでずっとこうなんじゃないかなと思う。

 ちなみに小学校も割とすぐに行かなくなった。

 私の話は順を置いて話すとして、家が見えてきた。

 時刻は17時半程。

 両親が車を駐車している所だった。

 この時間まで大概どこかで時間を潰すのが私。

 基本的には学校の図書館、本屋さん、サイゼ、ラーメン屋さんなどで過ごす。

 もちろん顔を覚えられる可能性を考慮し、ランダムに周回する。

 完璧である。

 気付いた母が車内から手を振っている。

 少しだけ小走りになり玄関まで。

 駐車する両親の車が敷地内に入っていくに連れ、その向こう側が見えるようになる。

 そこに一人の男性が見えた。

 フードを被った、小太りの男性。

 何もなく、歩道の真ん中で立って、こちらを見ているようなそんな感じ。

 さすがに気になり、そちらを見たが、まあ普通に両親の車が駐車しているを見ているので遠くからそれが完了するのを待っているだけ説も不思議ではない。

 私はすぐに目を離し、玄関へ入った。

 この時の私はまだ、この先未来で何が起こるのかなど、何も考えていなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ