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рассвет  作者:
これはただの女子高生だった私が軍人になるまでの話
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これはただの女子高生だった私が軍人になるまでの話:DATA 10

 日曜日。

 アリサさんと共にソファに座ってニチアサを消費する。

 私は特撮と魔法少女系でテンション上がる系の人だが、アリサさんは動くものを目で追っている程度に見ている感じだ。

 後ろの椅子では師匠も見ている。

 もちろんニチアサを見ているのではなく保護者として私達を見ているのだろうけれど。

 しかし師匠には面白い部分があるのだ。

 ニチアサが終わり、アリサさんが二度寝だったり庭に出たり好きにし始める頃、午前十時ごろ。

 師匠は誰もいなくなったリビングのテレビを点ける。

 私達が座っていたソファに座り、膝に両腕を置いて前のめりな座り方。

 ヤンキーっぽい。

 しかし。

 しばらくして、テレビに映し出されたのは丸い装飾の中から吠えるライオン。

 軽快な音楽。

 英語の文章。

 悪戯好きそうに笑う茶色っぽいネズミ。

 それに起こされて起こった藍色?っぽいネコ。

 そして始まる追いかけっこ。

 奇想天外に遊び回るネズミとネコ。

 仲良く喧嘩しな。

 イエス。

 ト○とジェ○ーである。

 師匠は日曜日の十時に、必ずこれを見る。

 皆それが分かっているので自然にテレビを明け渡す。

 私は師匠の横から人一人分くらい離れて座る。


「師匠」


「何」


「どうしていつもト○とジェ○ーを見るんです?」


「自衛隊時代な。いつも娯楽室で日曜日に一人でこればっかり見てる奴がいてな。なんか、それを思い出してから見るようになった。一年前くらいか」


「どんな人です?」


「話さない奴だったな。点呼とかの時以外で声を聞いたことがない」


「……私みたいな人ですかね」


「俺が部屋に入ると固まるから話しかけられなかった。だから名前もあんまり憶えていない」


 そりゃ師匠が入ると怖いだろうなあ。


「でも未成年喫煙してたな」


「それは師匠もですけどね」


 ああ、と忘れてたと言わんばかりに言う師匠。

 師匠は割と忘れんぼさんです。


「だが、時々ト○とジェ○ーじゃなくなるよな」


「ああ、バック○バニー○ョー」


「嫌いじゃないけどな」


「みっ、み!」


「びっくりしたなんだお前」


 思い切ってロードランナーの声真似をしてみた。

 キャラじゃないことをしたから師匠もびっくりしたらしい。

 恥ずかしい。

 顔が真っ赤になってる気がする。

 でもなんか勝った気分。

 何となく師匠の顔を見てみる。

 師匠もそういう趣味があるんだなあって。


「うるせえよ」


「何も言ってないです」


「俺もこういうの見るんだ意外だなって顔に書いてる。顔がうるさい」


 さすがとしか言えない。

 今日の師匠は少し喋るな。

 思い切って話題を広げてみる。


「他にどんな人がいましたか? 自衛隊」


「ト○とジェ○ー見てる奴と仲がいい奴らがいたな。この四人が一番有名だったと思うぞ」


「四人」


「ト○とジェ○ー、走ってる奴、ヤンキー、なんか、おかんみたいな奴の四人だな」


 師匠もおかんとか言うんだな。


「こいつらは優秀だった。成績優秀で、人間性も悪くない。走ってる奴を除いてな。それ以外はみんな普通だ。その走ってる奴が中心にいるイメージだ。いつも土曜日、日曜日は四人で走ってたな」


 走ってる人だけは普通じゃなかったのか。

 陸のマグロのイメージがもう定着しつつあります。


「仲が良かったんですね」


「誕生日が同じなんだと」


「四人全員ですか?」


「らしいよ」


 運命じゃん。


「多分全員まだ自衛隊にいるんじゃないか? いい軍人になるだろうな。走ってる奴以外はな」


「確か、カミヤマコトさん、ですよね」


 師匠が言うほどだ、余程何か問題がある人なのだろうか?


「別に悪い人間じゃないんだが、何かを抱えている人間なのはわかる。恨み辛みというかな、周りに放出しているんだよ。だからあいつ、その四人組が出来てなかったら、友達いなかったんじゃないか? 教官連中も距離置いてたからな」


 いや何者だよ。

 怖いな。

 関わりたくない。

 確か第一狂ってる団に行ったんだっけ。

 良かった。

 一生関わりを持つことはなさそうだ。

 ト○とジェ○ーが何篇か流れて、一時間弱。

 師匠はテレビを消した。

 パワー○○がーるずは見ないらしい。


「今日何すんの?」


 師匠が聞いてくる。


「執筆をしようかと」


 あそう、と師匠。

 それ以降何も言わず師匠はリビングを出ていった。

 私も少しして自室へ戻り執筆作業を始めた。

 真琴さんは今日も病院である。

 師匠は基本的にはアリサさんの面倒を見るために家にいる。

 次女さんの事に対して放任とか真琴さんに押し付けている訳ではなく、役割分担。

 師匠がいつも自室の窓から庭で遊ぶアリサさんを見ているのを知っている。

 親が見ていると本当にやりたいことを出来ていないかもしれないからあえて離れて見ているらしいと真琴さん談。

 本当に危ないと判断した時には部屋から飛び出して止めるらしい。

 私も一度二階から師匠が飛び降りてくるのを目撃したことがあったなあと思い出す。

 窓を少し開けて庭の音が聞こえるようにする。


「なんだこのトンボ!」


 アリサさんの声だ。

 それはね、トンボだと思うよ。

 覗き込んでみる。

 オニヤンマを鷲掴みにしていた。

 強し。


「離してやれ」


 隣の部屋から師匠の声だ。

 やはり見ているらしい。

 言われてすぐにオニヤンマをパッと離すアリサさん。

 力加減は出来ていたようで羽も足も健在で、すぐに逃げていった。

 オニヤンマはスズメバチなどの天敵でもあるのでいるというだけでなんだか安心感があると思っていた時期が私にもあってですね。

 しばらく庭で遊んでいるアリサさんを眺めていると車が入ってきた。

 真琴さんが帰ってきたらしい。

 真琴さんはすぐに庭に入ってきて、二階を見上げた。

 私を見た。

 私は会釈をする。

 真琴さんは頷いてすぐに横を見た。

 師匠を見たのだろう。

 同じく頷いた。

 真琴さんは庭のアリサさんの所に行ってしゃがんだ。

 何だろうと思っていると部屋がノックされた。

 師匠かな?と私はどうぞと言った。

 入ってきた師匠は、手にヘルメットを持っていた。


「バイク乗るぞ」


 師匠はそう言って、ヘルメットを差し出してきた。

 師匠がいつも被っているのとは違う、もう一回り小さいフルフェイスヘルメット。


「え?」


 私はただ硬直するだけだった。

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