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рассвет  作者:
これはただの女子高生だった私が軍人になるまでの話
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これはただの女子高生だった私が軍人になるまでの話:DATA 09

 師匠夫婦は間違いなく普通ではない軍人だ。

 恐らく特殊部隊とかではなく、それは恐らく組織。

 少年兵として活動していたのは反政府組織とかだと思うが、それ以降、どこか特定の組織や機関に所属していた。

 レイチェルさんが師匠を英雄と称したのはその組織での戦いの事を指すのだろう。

 しかし、若い。

 師匠はまだ二十歳ほどだ。

 少年兵として活動していたのなら経験は豊富、なのだろうか?

 だとしても若すぎる。

 自衛隊などではありえないだろう。

 しかしだとすると何故師匠は最初特殊任務警察支隊を名乗ったのだろうか?

 偽りの名義、というよりは、用意された肩書という雰囲気を感じる。

 それはつまり、本来の所属を語ってはならないと同時に、表面上の肩書を用意できるだけのバックボーンがある、という事だろうと思う。

 私はあるいは、踏み込んではいけないゾーンへ踏み込もうとしているのではないかと思う。

 そんなこんなで今日は土曜日である。

 モデリング作業中。

 今私が作っているのは正義の侍が世直しをしていく現代バトルもの。

 設定としては元ヤン侍が世の不条理を直すべく世界中を駆け回り悪を斬って回るというものだ。

 無双物を目指している。

 何だこれ。

 考えれば考えるほどわからん。

 何をしてるんだ? ブギーマン(主人公)

 キャラモデリングはだいぶ慣れてきた。

 キャラクターもめちゃくちゃ増やしてる。

 執筆活動にもこれは活かせていて、まずはなんとなくでもモデリングしてから書き始めるとキャラがぶれにくい、気がする。

 気が付いたら朝とかになってしまうレベルの作業量だけど楽しいならおっけーです。

 ちなみに今がまさにそうで、土曜日と言ったが金曜日の夜からぶっ続けの土曜日の朝型である。

 金曜日の夜と言っても間違いではない感じのする時間帯だ。

 装着したヘッドホンからはリスニングが流れているので勉強もちゃんとしています。

 一問一答式の英単語問題。

 ぶつぶつと日本語を英語に言い換える単語勉強中です。

 そうしながら編集モードとオブジェクトモードを切り替え捲る謎のゾーンに突入。

 これはさすがに死にかけだなあと私は保存を押してからソフトを閉じた。

 ヘッドホンを外して、伸びをする。

 土曜日の朝は、別に見たいアニメはない。

 以前は戦うスピリッツがあったが今はない。

 寝てしまおうか。

 私は朝ごはんというか夜食というかを頂きにリビングへ行こうと部屋を出た。

 ばったりと師匠に出くわした。

 ていうか、待っていた?


「おはようございます」


 まだ実質夜だ、私は小声でそう言った。

 頷く師匠も少し声を抑えて返事をする。


「お前寝てないだろ」


 さすが師匠。

 部屋をお借りしてからまず私がしたのは防音加工だ。

 吸音材、遮音材を重ねた音楽系クリエイターでも納得の防音加工をDIYで施した。

 私なりには出来た方だ。

 外から確認したが某ハンティングゲームのヒーローの証をスピーカー最大音量で流しても何を流しているかわからない程度には遮音が出来ているのを確認している。

 密閉型イヤホンを使っているからそうそう音漏れはしないし音量にも気を使っている(それでも大丈夫なように音質にはこだわっていましてね。例えばですね(ry)。

 夜のキーボードは軸を変えている。

 椅子の音がしないように二段の本棚を買ってきてそこにクッションを置いて、夜にはそれに座る。

 音を極限まで減らしている。

 アリサさんに聞いてみたが聞こえないと言われた。

 気にしてないだけ説もあるが。

 ていうか、そんな聞こえるような物でもないと思うのだが。

 何故わかるのだろうか?

 もしかして監視カメラ?

 いや部屋全部確認したうえで遮音シートで覆っているんだ、それは無理だ。

 気配?

 ニンジャじゃないんだから。

 いや……なんか、ないでもなさそうだな。

 師匠は腕を組んで私を見てる。


「お、おやすみなさい?」


 私が確かめるように言うと師匠は頷いた。


「計画的にやれ。学校の勉強は出来ているんだろう? なら家に帰ってからの予習復習の時間を減らしてもいいだろ。平日の作業時間を伸ばしてやれることを増やしていった方が継続的にインスピレーションは受けやすい。連続で長時間作業するとその時は乗っている気になっても、後で見返すと杜撰なことが多い。楽しくてしょうがないのはわかるが、いや、ただ、意図的に不健康に進もうとするのはよくないって言いたいだけだ。日中、無理して家の手伝いはしなくていい。やりたいことをやれ。ていうか、まずは寝ろ。インスタントのうどんならあったはずだから」


 師匠は歩き出す。

 師匠の言い分は正しい。

 確かに、その時はきたきた私って天才じゃーん!って気分で色々書いたり作ったりして最高傑作が出来た気になるけれど、後で見返すと最早それが何なのかわからなくなったりもする。

 執筆も、書いていれば書けるが、やはり思い付きは減っていくから長時間連続で描いた奴は途中から平坦な物ばかりな印象を受ける。

 今度からは短期集中でやってみようか。

 師匠についていく。

 リビングへ降りる。

 真っ暗だ。

 私はあいぽんのライトを着けようとするが師匠はすたすたと歩いていく。

 見えているのか?

 そしてスイッチを押して天井の、少し暗い明かりをつける。

 キッチンへ行き、収納から二個のカップ麺を取り出し私に見せる。

 顎を差して私に座ってろと伝えてくるので私も部屋に入って椅子に座る。

 お湯を沸かしながら(アリサさん対策でお湯は都度沸かすスタイルのようだ)師匠はぽつりと漏らすように言ってきた。

 押さえつつもギリギリ聞こえるラインで発せられた声。


「俺の事を探って、何がしたんだ?」


 私の方が跳ね上がった。

 これは絶対怒られる奴だ。

 そりゃ自分のいない所で自分の事を探られていると知って気分のいい人はそうそういないだろう。

 師匠は声の抑揚があまり変化しないタイプだ。

 声だけで怒っているかどうかを判断するのは危険だ。

 私はガクブルする。

 わんちゃん追い出される!?などと考えていると師匠は沸いたらしいお湯をカップ麺の容器に注ぎながらまた口を開いた。


「俺はお前が思っているように、軍人だ。それも、少し普通のそれとは違うかもな」


 師匠はトレイに容器を乗せている。


「お前と会ったのは、色々あって除隊して、とりあえずの間借として陸上自衛隊にいたんだ。で、その必要がなくなったんでフリーで何もしてない」


 フリーで何もしてないってそれは、何だろう?

 フリーダムかな?

 トレイから容器を私の前に置く師匠。

 それを受け取ると師匠は私の反対側に座った。

 それに、少しだけ距離を感じてしまった。

 壁なのかもしれない。

 私は何とか会話を繋げようと聞いた。


「自衛隊、では何をしていたんですか?」


 当たって砕けろ。

 答えがないならそれでいいくらいの気持ちだった。

 しかし師匠は答えてくれた。


「世間知らずだからまずは新兵の気持ちをもう一度理解して来いってさ。新隊員教育を受けてきたよ三か月」


 意外過ぎる。

 一人で小隊をボコってそうな雰囲気あるのに。


「何か思い出とか」


「思い出。訓練には特にないな。手を抜いてたし早く終われくらいにしか思っていなかった。ああ、でも、面白い奴がいた」


 師匠が面白いって言う人!?

 絶対化け物だ。


「カミヤマコト、だったか」


 どんな漢字だろう?


「その人はどこがおもしろかったんです?」


「ずっと走ってた」


「は?」


「朝も一番に起きて走ってた。点呼後も走ってた。昼休憩もずっと走ってた。途中の10分休憩中も走ってた。夕方も走ってた。夜も走ってた」


 走りすぎだろ。

 陸のマグロか。


「空挺部隊へ行くことが決まっていたな。教育だから特化大隊か?」


 てことはやはり化け物だ。

 空挺部隊。

 日本唯一の落下傘部隊だ。

 体力的に優れていることが最低条件の部隊。

 卒業することが難しいレンジャー教育とは違い、続けることが難しい空挺部隊。

 そこに行ける時点で化け物確定だ。

 そりゃずっと走ってるわ。

 第一狂ってる団。

 恐るべき。

 師匠がカップうどんの蓋を外した。

 顎でまた私を差した。

 食べろという事らしい。

 私はいただきますして食べ始めた。

 師匠も食べながら私に言ってくる。

 顔は、上げないまま。


「焦んな。そのうち、知ることになる」


 私は頷いた。

 師匠は、それ以降何も言わなかった。

 この時の師匠のこの言葉の意味を知るのは、ずっと先の話である。

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