これはただの女子高生だった私が軍人になるまでの話:DATA 05
私はレイチェル・コールフィールドさんから受け取ったメモ用紙を眺めている。
これをもらった翌日。
今日は日曜日だ。
まだ受け取ったメモ用紙に記載されたメールアドレスと電話番号は連絡帳への登録は出来ていないし、もちろんメッセージを送るなんて事も出来ていない。
師匠は、友人知人が多い。
師匠はその仕事柄日中は家にいる事も多い。(割とバイクですぐどこかに出かけているがどこに行っているかは不明。不定期で数日家を空ける場合もある)
それ故によくその友人知人が顔を出す。
その全員が、ただ者ではない雰囲気を持っている。
見た目で屈強というだけなら鍛えているであるいは済むかも知れないが、明らかにそうではない。
むしろ華奢な人たちも多い。
もちろん鍛え抜かれた肉体の方も多いけれど。
ともかく、皆尋常ではない雰囲気を持っている。
マンガとかで言うと「出来るっ!」って奴ではないだろうか。
私は何も出来ないけれど。
「出来ないっ!」
なんだか逆切れしてるみたいだ。
師匠は朝、アリサさんとプ○キュアまでのニチアサを見てからバイクでどこかへ行ってしまった。
アリサさんは今は二度寝タイムだ。
私は溜まっている深夜アニメを垂れ流しつつ考えている。
画面では戦記な幼女が存在なXにぶちぎれている。
レイチェル・コールフィールドさん。
白いスーツを着た美人。
しかしスーツのジャケット越しにも引き締まった肉体であるとわかった。
多分あの人も軍人だ。
それも、相当上の立場。
師匠も恐らく相当な実力を持っているが、なんだかそれとも相対出来るほどの実力を持っていそうだと感じる雰囲気を持っていた。
ロシア語を話すところからしてロシア人だろう。
顔立ちもそうだった。
一体、何者なのだろうか?
仕事仲間、と言っていた。
同じ部隊にいたのだろうか?
にしては師匠はレイチェルさんをあまり好いてはいない雰囲気だった。
謎だ。
他の師匠への来客は基本謎だ。
明らかにただ者ではないし、どころか体に傷跡がある方々もいた。
彼らが何者なのかは私には知りようがなく、また、師匠がいったい何者なのかも、知りようがないのだ。
聞くな、という雰囲気を師匠はずっと出している。
真琴さんも顔に傷があるから推測で失礼ではあるが元々は同業だったのではないだろうか。
師匠もよく見たら傷だらけだ。
そもそも眼帯してるし。
軍人夫婦か。
私はメモ帳を取り出す。
恐らく師匠夫婦は軍人やそれに類する組織に所属していた。
若いが、そこは問題ではない。
コネとかもあったのかもしれないし。
そもそもいわば少年兵的なものだったかもしれない。
フィクションではありきたりだ。
中学生くらいからバンバン戦っている。
少年兵や、最低年齢からの兵役を経て、今は退役軍人として過ごしている。
その余暇を活かして作家人生。
こんな所だと予想する。
いやこれは、妄想だけれど。
にしてはお家が高給取りのお家だけれど。
ともかく、師匠は本当に謎が多い。
昨日のレイチェルさんとの会話も謎に満ちていた。
ゲームか何かの会話、と受け取っているが恐らくは違うのだろう。
実は元特殊部隊のコックだとかそんな奴だろうか。
コックではないのは明白だった。
いや割と料理スキル高いからコックかもしれない。
置いておこう。
栓のない話だ。
ともかく、師匠は謎だ。
師匠の周りも謎だ。
それを聞いても答えてはくれない。
しかし答えてくれないことが答えなのだ。
私は変に突き過ぎない程度に探りを入れつつ、あとは妄想に妄想を重ねて師匠やそのその友人たちをモデルに設定を練った私の初小説がHand in Handだ。
銃を持たない青年『瀬戸大輝』が裏社会で戦う、そんなありきたりな設定。
何故刀なのかといえば師匠の親指の付け根(親指と人差し指の間)や親指の腹には幾重にも重なった切り傷らしき傷痕と、親指の爪先だけが何度もそこを打ち付けたように他の指とは形が違うのだ。
予測。
親指付近の切り傷は何度も刀を抜いて、または納めた結果切れてそれに年季が入った結果の痕跡。
親指の爪先は抜刀の際に唾を親指で押したり弾いたりする際に軽く爪が削れたり潰れたりした結果その形になって行った。
という妄想から刀使いの設定が出来ました。
何とも、安直なのだよミズキ君。
身体的特徴などほぼ流用だし、キャラとの関係性もほぼイメージと現実の流用。
これを一次創作と言ってしまっていいのかとても疑問。
もちろん他作品も考えている。
今考えているのはHand in Handから派生する作品。
殺人鬼の話と探偵もの(こちらはまだ何も書けていない。何故か事件だけ出来ている)。
時系列的にHand in Handの過去の話になるなのだが、まあそれはゆくゆく。
話は戻して。
レイチェル・コールフィールドさん。
連絡するべきかどうか、悩ましい。
いやする以外の選択肢ある?
ないのではないか?
ないでしょ。
気になるしな。
でも師匠なんか怒りそう。
普通にあの二人、レイチェルさんからの一方的な好意って感じで師匠は普通になんだこいつくらいに思ってそうな雰囲気があった。
一瞬の会話のやり取りしか見ていないがなんかそんなイメージ。
うーん。
どうするか。
私は悩みながら連絡帳にメールアドレスと電話番号を入力していく。
登録するくらいは、いいだろう。
あいぽんを操作しながら考える。
2人はロシア語で会話していた。
その中で出てきた単語。
『血の吹雪』、『赤線』、『凍傷』、『悪人達』、『あだ名』。
これは恐らく人名だ。
ニックネームやコードネーム的な。
そう呼ばれる誰かだ。
恐らくその人たちはこの師匠宅にはまだ来ていない人たちだ。
私の予想の通りの立場に師匠たちがいるのなら、その人物たちは多分敵側の人。
加えて師匠はレイチェルさんを『誘拐魔』と呼んでいた。
これも、何か意味がありそうだ。
私は設定資料集というファイルにそれを書いていく。
これはあくまでも私の妄想である。
ある程度まとめていく。
なるほどなるほどと言いながら妄想の中で相関図などを作成し、それを形にしていく。
こういう時にあると便利なのが、イラストソフトだ。
別にメモ用紙や設計図ソフトでもいいのだがペンタブがあればもう思ったままに書けてしまうからもう便利。
最終的には全部ぐちゃぐちゃになって翌日何かいてるのかわからなくなるまでがセットだ。
今の時点でもうわからない。
そんなことをして、サ○エさんが始まるかなくらいの時間まで気付いたら過ぎている、それが私の最近の日曜日だ。
私はあいぽんのメールアプリを立ち上げて私はメール文を作成する。
ほぼ直感だけで文面を書いて、それを二分ほど悩んだ末に送信した。
返事はすぐに帰ってきた。
もちろん、私の送信先も、返事の送り主も、レイチェル・コールフィールドさんである。
私が送ったメールの本文は一言で言えばこうだ。
『師匠の正体は?』
返事はこうだ。
『英雄さ』




