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рассвет  作者:
これはただの女子高生だった私が軍人になるまでの話
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これはただの女子高生だった私が軍人になるまでの話:DATA 04

 今日は土曜日。

 少し暑くなってきた季節だ。

 私は朝から勉強をしていた。

 土曜日は勉強の日だ。

 平日の授業で取ったノートを読み返し、要点をまとめる。

 気になったら調べ直す。

 やってることは読書と変わらない。

 しかしノートを読み返す、または言葉にして表現するだけで復習の密度は高くなる。

 私はそう考えている。

 これを土曜日は繰り返す。

 読み返して調べてまとめるだけだから一教科はそう時間もかからずやれる。

 そして大体それで午前中が終わる。

 昼食(特に目立ってないので省略)を終えた後は毎月買っている科学雑誌を読むんで、それをまとめたり、そこから得られた発想を文章化したりしている。

 要するに、土曜日はインプットの日だ。

 別に科学系の小説を書こうとはしていない。

 単に、好きなだけ。

 宇宙とか。

 動物とか。

 最近の私のブームは進化論。

 余談。

 そんなこんなでお昼過ぎ。

 二時ごろだ。

 少し暑くなってクーラーを付けようかとそう思ったところ、外から声が聞こえた。

 そう言えば少し前に車の音がしたなと思い出して椅子から立ち上がる。

 部屋から出る。

 移動して、リビングへ。

 そう言えばリビングとダイニングの違いはリビングが居間で、ダイニングが食事場というイメージらしい。

 なるほどわからん。

 リビングへ足音を殺して向かう。

 リビング前の扉の前でストップし、聞き耳を立てる。

 女性の声だ。

 それも、日本語ではないようだ。

 しかし扉越しだと会話の内容は聞こえない。

 私は思い切ってリビングの中へ。

 キッチンの方では師匠が煙草を咥えている。

 いつも以上に不機嫌そうに顔をしかめている。

 奥さんはいないようだ。

 別件だが、奥さんと師匠の間には第二子がいる。

 今は出産後、未発達な状態だったとのことで入院中だ。

 今は安定しているので命には別状はないがお医者さん管理の元療養中。

 奥さんはそちらに行っているのだろう。

 しかし奥さんもよく立ち入る場所だからか師匠は加えているだけで煙草に火を点けていない。

 そういう気遣いが出来る人なのだ。

 師匠はこちらに一瞬目線を送り、すぐに反らした。

 リビングの机の椅子に座っている女性がいた。

 長身で、色白。

 金髪で、鋭い目。

 白いスーツを着ている。

 その女性はロシア語で話している。

 師匠もロシア語だ。


「あれは私だけが悪いんじゃない。私は波に乗っただけで、事を起こしたのは『血の吹雪』じゃないか。私は便乗しただけだって」


「それが迷惑だと言っている」


「強情な男だね。でもなんだかんだあの戦いで有名なのはやっぱり『赤線』かな? あとは『凍傷』だったっけ? ああそうだ、知ってるかい? 君の所の『悪人達』を参考にした犯罪者集団を結成しようって計画が立案中らしいね。名前は確か『あだ名』」


「おい誘拐魔。そこら辺にしとけ。聞いてる」


「……おいおいロシア語を理解できるのなら言ってくれよ『死線』」


 私は素知らぬ顔で聞き耳を立てようとしたがバレてしまったので金髪の女性に会釈をしてキッチンへ。

 水を飲むためにコップに水を灌ぐ

 師匠は私をちらりと見て、しかし何も言わなかった。

『死線』って、なんだろう?

 私は疑問に思いながらも、まあ何かゲームとかの話かなと思い、思い込み、何も聞かなかった。

 仕事の話なのだろうなと思いつつもやはり軍隊(だと思っている)にも機密はあるのだろうし、私は詮索はしない主義だ。

 創作者は想像力も大事だ。

 多分。

 金髪の女性は立ち上がり、私に笑顔を向ける。

 師匠の方を見ると、悩ましげに眉根を寄せて悩んで、目を瞑ったまま、頷いた。

 私は頷き返して、金髪の女性の下へ。


「初めまして妖精さん。私はレイチェル・コールフィールドだ。アメリカ国籍の名前だが、血筋はロシア人だ。知らなかったよ。彼に娘が三人いたとは」


 レイチェル・コールフィールドさんは右手を差し出した。

 私はそれを握り返した。

 師匠がキッチンから声を掛ける。


「俺の娘じゃない。預かってる子だ」


「なんだって? おいおい幼女を預かるなんてどういう経緯だ? まだ小学生の年頃だろ? いや高校生や大学生ならいいってことはないが、少なくとも教育に良いとは言えないね」


「そいつ高校生だぞ」


「……私をからかっているのか?」


「十七歳です」


 師匠とレイチェルさんの会話に入ってそう言うと彼女はその顔をひくつかせた。


「……本当に?」


「カワサキ・エラ・ミズキです。本当に十七歳の高校二年生です」


 私の体は確かに小さいので、小学生に見えるのもしょうがないのだろう。

 さすがに慣れた。

 大きな商業施設なんかに行くと迷子だと思われて職員さんによく声を掛けられる。

 それくらいだからもうさすがに慣れた。

 悲しくなんか、ない。

 レイチェルさんは咳払いをして私の手を握りなおした。


「これは失礼したミズキ。改めて私はレイチェル・コールフィールド。彼とは……仕事仲間さ」


「私は……居候です」


「なるほどね」


 お互い手を離した。

 そこで彼女は何かを思い出したように私の前に空間にチョップをするような素振りをする。

 洋画でしか見ない仕草だ。


「君が例の、助けられた民間人、か? そうかそうか!」


 レイチェルさんは何だか嬉しそうにしている。

 私は困惑するが、師匠も特には何も言わずため息を吐くだけ。

 彼女は一人嬉しそうに手を二度叩き、頷いた。


「なるほど。これが、君が最後(・・)か」


 レイチェルさんはよくわからないことを呟いて私の肩を掴んだ。


「人生はいつだって『よくわからないこと』からきっかけを得て構成されている。それが今だよミズキ。君の人生は最良のきっかけを得た。君のこれからが楽しみだよ」


 私の肩を揺らして、彼女は自分の携帯電話を取り出した。

 スマートホンではなく、ガラパゴス携帯だった。

 ガラケーである。


「メールアドレスを交換しないか?」


 そう言って彼女はガラケーの画面をちらりと見せてくる。

 師匠の方を確認すると首を振った。

 ダメらしい。

 レイチェルさんは肩をすくめた。


「保護者からのお許しも大事だが、本当に大事なのはそれを踏まえた上での自主性だ。連絡待ってるよ」


 そう言って彼女はリビングの机の上のメモ帳から一枚千切ってそこにペンを走らせる。

 そしてその紙を私に差し出してくる。

 メールアドレスと電話番号のようだった。

 私は少し悩んだが、受け取らないのは失礼に当たると考えて、受け取るだけ受け取った。

 レイチェルさんは頷いて笑った。


「よし。では世間話もそろそろ切り上げて私はお暇させてもらうよ」


「来てすぐだぞ」


「なんだい? 長居してもいいのなら次の日の朝までいるがね?」


「帰れ」


「ほらそう言う」


 レイチェルさんは寮の掌を天井に向けて肩をすくめた。

 師匠はわかりやすく不愉快そうな顔をする。


「様子を見に来ただけでね。元気そうで何よりだ。しかし」


 レイチェルさんは言葉を区切って、何故か私の方を見る。


「体は、鈍らせない方がいい。君はいつだって、ふとした時に不幸に巻き込まれる」


 師匠が鼻を鳴らした。


「例えば、『S』とかね」


 そう言ってレイチェルさんは私の横を通り過ぎた。

 一体何の話をしたのかはわからないけれど、レイチェルさんは本当に帰っていった。

 師匠は、不服そうに煙草を折った。

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