No.8 運命のダイスロール
選択肢は2つだった。
MP:2の「ダイスロール」を使い6分の1に掛けて、ラッキーラビットを倒すか。
一度きりのMP:5の「コイントス」を使い2分の1に人生をかけて逃げるか。
どっちが生存率が高いのかを考える暇はなかった。
「『ダイスロール』!!!!」
そう叫ぶと、空中に一辺1メートルぐらいの立方体が構築され、完成と同時に空中から自然落下して落ちてきた。
真上で起きたその光景、初めて使ったスキルに見とれてしまったために、その物体をキャッチすることができず顔面にクリーンヒットし、自分とラッキーラビット間に転がっていった。
転がる立方体をを見れば、予想通りそれぞれの面に1から6目を持つサイコロであった。
それを攻撃と感じたのか、ラッキーラビットは自分の方に飛んでくるサイコロを避けて、そのままカケル攻撃を仕掛けてきた。
今回は、ラッキーラビットがスキルを使用したことにより、全身に赤いオーラまとって近づいてくる姿がはっきり見えた。
しかし、避けることはできない。まだ座ってる状態だし、顔面は二重に痛いし、サイコロから目が離せないからだ。
あっ、これ死んだなと思いつつサイコロが止まるのを待つ。
ゴロゴロゴロゴロ、スン。
「『5』が出たあぁぁぁぁぁ..................」
正面からくる衝撃に吹き飛ばされるのを耐えながら出目を確認して、『5の目』によりHPが1になり、綺麗に吹き飛んでいった。
吹き飛んだ先では、
「もう....やだ....。絶対死んだ。今ので腹に穴が開いてる。」
そう泣き言を言いながらも自身の体を確認する。
幸いお腹に穴は開いてなかったが、全身の服はボロボロの状態だった。
ラッキーラビットが軽快にピョンピョンと近づいてくる。
それを傍目に、もうやけくそ気味にカケルは叫んだ。
「『ダイスロール』『ダイスロール』『ダイスロール』」
残りMP全ツッパである。そうすると頭上に3つのサイコロが現れて落ちてくる。
真上から落ちてくる1つのサイコロを片手を振り上げてラッキーラビット方へぶん殴る。残り2つはカケルの左右に自然落下し転がっていく。ぶん殴ったサイコロはラッキーラビットに当たり、はじかれ転がる。
それぞれがゴロゴロと転がり、停止する。
出目は『3』『6』そして、『1』
自身のHPとMPを100回復(全回復)し、〈ダンジョン脱出不可〉が付与された。
ラッキーラビットの方は上空から謎の光の攻撃(固定ダメージ100)を受けて消滅した。
最後に残ったのは、レベルアップ音と
「倒したのか.....。」
といった呟きだった。
☆☆☆☆☆
しばらく呆然と座っていたが、ここがまだダンジョンであることに気づき、現在の状況を確認した。
体力は回復したが、ボロボロ状態は治らない。全身はまだあちこち痛く、頭から血を流している。
戦闘によって吹き飛んでいたバックを片足を引きずりながらも探し出し、タオルで頭の血を拭き、中に常備していた包帯を取り出し頭に巻いた。
やっとのことで一息ついたところで、ろくに動けないので休憩を兼ねて、ステータスの確認を行った。
おまけ
①
魔物のステータスを見るには、魔物に向かって「指をさし、【ロックオン】」
と唱えることで見ることができる。
魔物に右上にずっと表示されるので、主人公のように戦闘の邪魔になる場合は、
【ロックオフ】と唱えることで、表示を消すことができる。
魔物が消滅すると自然にステータスも消滅する。
②
【ロックオン】
複数の魔物と相対した時は、それぞれに唱えることでそれぞれの魔物のステータスを表示させ続けることができる。
【ロックオフ】
逆に、こちらを唱えると今まで表示してきたステータス表示はすべて消すことになる。あの魔物のステータスだけ消したいといった調整はできない。
③
【ロックオン】は相手に刺激を与える(少なからずヘイト稼ぐ)行為なので、奇襲攻撃したい場合は避ける。
④
アメリカの冒険者により発見された、ステータス表示外スキルである。
弓使いである斥候の冒険者が、癖で弓を引きながら魔物に人差しで指をさしを行い、ロックオンと呟いたのが始まりとなった。ロックオフは研究により発見された。