赤銅館365日あるいは勉強学校
はじめまして。感想をいただけると幸いです。
原風景とも呼べる、思い出がある。
白い病院の、子供部屋のようなところで僕は一人、立っている。多分初めて来た場所だったと思う、隣に母親はおらず、不安な気持ちだったように思う。
周りに何があったのかは覚えていない。ただ覚えているのは、一人の、僕よりも確実に幼いであろう少女が、本をやけに熱心に読んでいたことだけ。
「面白い?」
僕が話しかけると、彼女は何一つ感情の宿っていない瞳で僕を見た。
「ただ、知識の吸収のために読んでいるだけだから」
やけに愛くるしい顔をしていた。そしてそれにそぐわない、やけに大人びた声をしていた。
黒子一つない、瑞々しく白い肌だった。だから、頬骨のあたりにある赤黒い痣が良く目立っていた。
「怪我したの?」
「」
彼女が言ったことは忘れたが、憐みの眼を向けられたのは覚えている。
「何読んでるの?」
彼女は僕に開いている頁を見せてくれた。あの頃は理解できなかったが、靄のかかった記憶と今の知識を統合するに、高校初級の数学の本であったように思う。
それ以降、どんな話をしたのか僕は覚えていない。
ただ、この思い出が、僕の勉強に対する意識を変革させた一因であったと思っている。
明日あたりに更新予定です。ぜひみてください!