ー変化ー
そんな他愛もない話をしながら彼女の食事があまり進んでない事に気付いて心配になった
「それよりあんまり食事すすんでないけど大丈夫?」
「ええ!大丈夫…少し食欲がないだけよ、心配しないで」
僕の心配そうな顔を見てバツが悪そうにしながら笑顔で彼女はそう返した
「そうかい?ステラがそういうなら…あまり無理をしないでおくれよ」
「わかってるわ チェロは心配性なんだから」
食事が終わり後片付けや出る準備をしながら話していると
「チェロ忘れ物ないようにしっかり準備するのよー…ッ!」
急激な頭痛と意識が飛びそうな感覚が彼女を遅いそのまま足から力が抜けるように座り込んでしまった
僕は用意が終わり返事をしながらリビングに向かいキッチンにいる彼女に目をやると
「大丈夫!忘れ物はないよ〜、ステラそろそろ行こうか?」
座り込む彼女を見て慌てて駆け寄りながら声をかけた
「ステラ?…!!ステラ!?大丈夫かい!?」
彼女はすぐに返事を返した
「だ、大丈夫よ…少し立ちくらみがあっただけよ、ごめんなさい心配かけて」
「今日は仕事休んだ方がいいんじゃないか?」
「立ちくらみぐらいで休んだりしないわ、さ!行きましょ!」
「本当に大丈夫かい?」
「大丈夫よ!心配し過ぎよ!」
「君がそこまで言うなら…じゃあ行こうか」
「ええ!働けるのに休むなんて嫌よ!」
「無茶だけはしないでくれよ」
「わかってるわ」
そう言って笑顔で返してゆっくりと立ち上がり元気に振る舞う彼女を見ながら心配しながら出る準備を再開した
「戸締まりは全部大丈夫だよ」
「じゃあ行きましょう」
そうして2人で街に向かって歩き出した
この時の僕は何一つわかっていなかった、この先の苦しみも悲しみも最愛の人の想いもまだちゃんとわかっていなかった…
この時の私はまだ何もわかっていなかった、この先の絶望も孤独も変えられない想いも
そして…
2人で一緒に歩く時は手を繋ぐようにしてる手を繋ごうとかそういう事は言わない、お互いがお互いにそうしたいと思うからいつもそうしている
他愛もない話をしていると顔を覗き込んで彼女が言う
「チェロも無理しないでね」
「大丈夫だよ、君よりは無理をしないからね」
「またーそんな言い方するのね」
「ごめん、ごめん、つい」
「つい、じゃないわ!全くいっつもそんな意地悪な言い方なんだもんね、たまに傷付くのよ」
そっぽを向いて怒った素振りをする彼女が愛おしくなる
「ごめんね」
「ふふ、冗談よ!」
「たまには懲らしめてやらないとね」
「全く君には敵わないよ」
怒ったかと思いきや満面の笑みで返す彼女
彼女が笑っているとそよ風が吹いた
その瞬間両手を広げて風を感じる彼女
「ふふふ…風が気持ちいいわね」
「本当に風を体で感じるの好きだね」
「だってその日その日で風の匂いや暖かさが違うから」
「僕は君ほど匂いも暖かさもわからないからな」
「別に無理して同じ事をする必要はないじゃないそれにチェロだってたまに風を感じてる時あるわよ」
「そうなの?自分ではわからないや」
「ふふ、貴方らしいわね」
そうこうしていると街に着いた
街はそこそこ大きく門を抜け少し歩くと彼女の職場があるのでいつも近くまで着いて行った
大通りを通り真っ直ぐに進んでいくと横道に入れる十字路がありそこを曲がると露店やお店がある道になっている
僕らはその曲がり角でいつも分かれている
曲がり角に着くとステラはいつも僕が見えなくなるぐらいまで見送って行ってから横道に入るようにしていた
前に振り向いて行っていいよって素振りをしたけど僕が歩くまで動かなかったのでそれ以降は分かれてからは振り向かない様にした
「じゃあステラ気を付けて行ってくるんだよ」
「ええ、チェロも頑張ってね!行ってらっしゃい」
「行ってきます」
いつもの様に彼を見送り見えなくなるまで笑顔で手を振る、これが私が毎日している事だ!彼の背中を見ながらそうするのは頑張れ頑張れと念を送りながら見送ると元気に帰ってくる感じがするのでいつの頃からかする様にしている
「…さて、私も行きますか!」
仕事場に向かう途中の雑貨や食べ物のお店を見ながら献立を考えるの楽しくて仕事がある時はそうしている
「…う〜ん今日の晩御飯どうしようかしら、何食べよう?…チェロの好きな物でも作ってあげようかな?それとも今日も起きてくるのが遅かったから嫌いな物を食べさせようかしら♫」
鼻歌交じりにキョロキョロと食材を物色して歩いてると頭が回る感じがした
軽く立ちくらみかと思い足を止めて治るのを少し待つ
「あれ?頭がクラクラする…」
頭痛が激しくなっていき、ズキズキと痛みが増していき
「気持ち悪い…本当に今日は気を付けた方がいいのかしら………イタッ」
最後に大きな痛みがはしった瞬間
ステラは倒れた
周りはざわつき
叫び声や呼びかける声などがステラの意識に入ってくるが、すぐに意識は途切れてしまった