3話
〜1年生教室〜
「タカタカ!メンバー集めどうだった!?」
「あぁカワハラ!全然集まってないぞ!」
先輩に声はかけた。やってない訳では無い。
「おいおい文化祭出る気ないのかよお前は〜」
「無理してまで出る気はねぇよ。昨日も言ったろ2、3年もでるんだからな。」
「でも去年1年だったオオモリ先輩出てたらしいじゃんかよ。」
「それは特例だ、その前年度に姉ちゃんが出たのも特例だ。」
「じゃあ今年も特例あってもいいよな!俺今日バイトないから探しに行こうぜ!」
「やだね。」
「いいじゃんかよ〜頼むよ〜な?な?」
「来年でもいいじゃん。急ぐ必要あるか?」
「どうせ暇じゃん?それにバンド組んだら楽器に触れるじゃん!」
うちの軽音部は幽霊部員含め相当数いる。うちの学校は何か部活動に入らなければならない。そのため部室がただのたまり場にならないようバンド名と人数、利用時間を部長に提出しないと部室が使えないようになっている。逆に言えばバンドに所属してないと使えない。
「お前ん家シアタールームを楽器置き場にしてるんじゃなかったっけか、そこで出来るじゃん。」
「親父の趣味でアコギとかエレキとかベース、キーボードはあるけどドラムがねぇんだよ!1番やりてぇのに!」
無い物ねだりだろそれは、逆に家にドラムしかないのであればその他の楽器をしたがっていたろうに。
「頼む〜お前の姉ちゃんからギター教わってたとはいえ人前でライブなんてした事ないだろ!?新しい事やってみようぜ〜頼む頼む頼む頼む頼む」
「新しい事…ねぇ」
「食いついた!俺の勝ち!じゃあ行くぞ!」
「わかったわかったやるから。もし文化祭出られなくても文句言うなよ。」
「いいんだよ!友達となんかやってみたかったんだ!青春っぽいだろ?」
何故か心が痛くなった。こいつはこんなにも好きなものに夢中であるのに、全力で俺の事を友達と思い誘っているのに、俺のヲタク趣味以前に俺はカワハラに俺の素を見せられているのだろうか。
〜3年生教室〜
「こんちはー部長!」
「こんにちは〜、あらタカヒロ!学校で私に会いに来るなんて〜!中学では1回もなかったのに!このこの〜」
「あの挨拶したの俺なんすけど…1年軽音部カワハラです!軽音部の名簿って持ってますか!」
「タカヒロ〜今日お姉ちゃんがご飯作るからゆっくり帰ってきていいぞ♡」
「無視しないでください…」
「あらごめんなさい、タカヒロが会いに来るだなんて珍しくて。部室にあるから勝手に持ってっちゃっていいわよ。はい鍵。」
「ありがとうございます…なんか腑に落ちない…」
「鍵は最終的に部長の元に戻ればいいから鍵閉めちゃったら私の元かタカヒロにでも渡せば家で私に返してくれるでしょ?」
「わかったよ姉さん…」
「ん?姉さん呼び?まあいいわ行ってらっしゃい〜悪用しないでね。」
「しないよありがとう。」
「お前よく今日3年が模試がないってわかったな。」
「ふっふーん、俺は本気だからな!バイトのシフトも調整した!」
こいつどんだけガチなんだよ…
〜軽音部部室棟〜
「部室ついたな〜なんでこんな本館と離れてんだ?」
「騒音なんだろ、吹奏楽と違って。」
「なにぃ〜???同じ音楽じゃねェか!ロックを舐めてんじゃねぇ!」
「素行の問題じゃね?実際不良っぽいの多いじゃん軽音部。」
「なんで真面目に音楽やろうとする生徒の邪魔すんだよ!くっそ。」
なんか部活に入らなければ行けない学校のシステムの中、何もしない奴らはボランティア部が無難ではあるがそれすら面倒と思うような連中がおおく流れ込んでくる。このシステムは正直欠陥である。
「その点に関しては同感だな。」
「お!ということはお前は真面目にやる気があるんだな!関心関心。」
「まあ多少はね。」
「よしじゃあ探すか!」
まあ多少はねと言った時少しヒヤッとした。
ホモガキ用語を現実でも使いだして笑いを取ろうとしてる奴が1番嫌なんだ。体が痒くなってくる。気にしすぎなだけなんだけども。
「あれ、空いてる…」
「ようタカヒロ!お前は確か…カワハラだったっけか。」
「先輩覚えててくれたんですか!?」
「そら部活体験の時にLINKIN PARK叩きに来るようなやつ覚えてるって。」
「くぅ〜感激です!」
こいつまじかよ家にドラムないって言ってたのにゴリゴリのロック叩けてたのかよ。しかも洋楽って1番モテるやつじゃん。かぁ〜、有望だねぇ。
「てかアキさん鍵は?」
「お前らはミズミさんから貰ってきたのか?うちはカイ先生から毎回貸してもらってる。」
カイ先生というのは軽音部の顧問である。ドラムやアンプはカイ先生の私物だそうだ。
「何しに来たんだ?」
「1年の軽音部に誰がいるのか知りたくて名簿見に来ました!」
「ほぉ〜ん?メンバー探しかい?タカヒロもう1人見つけたのか。」
「いや元々カワハラから誘われてたもんで。」
「そうなのかい。恵まれた友人をもったねぇ。」
「そんな賢くカッコイイ友人だなんてでへへ」
「そこまでいってないぞーカワハラ。」
アキさんが1人で部室に通えてる理由は数々のバンドに加入しているからだ。日替わりで勝手にバンドの名前と人数をでっち上げて部室を使っている。ちゃんと他のバンドが練習しに来た日は帰っているらしい。
「それじゃあアキさんさよなら。」
「おう!名簿は返しとけよ〜」
「オオモリ先輩って綺麗だよな。」
「はぁ?好きなのか?」
「はぁってなんだよ。ショートっていう活発さがある髪型してんのに美形って素敵じゃんかよ。俺と話合いそうだし狙っていいか?」
こういう陽キャっぽい話題は苦手だ…
「…なんで俺の許可取ろうとしてんだよ。」
「顔見知りじゃん?ってかお前の姉ちゃんのおかげでお前顔見知り慣れてるってズリーよ。」
「たまたまだよ。」
「ふーん。でも先輩噂で聞いた事あるけど彼氏いるみたいなこと聞いたわ。」
「そうなのか?」
知らなかった。あんなガサツそうなのにいるのか。でもそうだよな、でも無いと俺という男へのちょっかいのかけ方が慣れている。彼氏がいても不思議ではないし自然だ。ラブコメは始まらない。考えたらちょっと虚しい、話変えよ。
「この名簿からとりあえず同じクラスから見てみるか?」
「そうだな…うげ。」
「どうした?」
「こいつらだよ、うちのクラスのオタクグループの。」
「あぁ…こいつら軽音部だったのか。」
「どうせなんかのアニメかなんかの影響で入っただけかボランティア部に入りたくないから入っただけの集団だろ、こんな奴らがいるから軽音部の評判が悪いんだ気持ちわりぃ。」
やめてくれ、それだけで言ったら多分うちの姉もある媒体を見て軽音部に入ったと思う。あれ?姉に憧れて入った俺も同罪か?
「まあまあ決めつけは良くないって、もしかしたらめちゃくちゃ歯ギターとかするかもしれないだろ。」
「そんなこと出来るなら仲良くなってわい。」
「落ち着いてくれ…ん?このマジマミキって…」
「おお、同じクラスのマジマさんだな。軽音部だったのか。」
「どうする?とりあえず同じクラスはマジマさんだけだけども。」
「ん〜マジマさんってあんまり不真面目ってイメージないし、入るとこないから軽音部入ったって感じじゃないと思う。感だけど。」
「感かい、まあ俺もそう思う。いいひとオーラ漂うし。」
「決まり!ダメもとで誘うべ!」
〜教室〜
「帰ってるよね普通。」
「だよな。終礼から結構立ってるし。」
「保留にするか〜、はぁ〜」
ガラッ
「あれ?ヨシタカくんとカワハラくんじゃん?どうかしたの?」
マジマさんきたーーー!!!
これは俺らにとっちゃ運命なんだけども彼女にとってはこれから巻き込まれる悲劇となろう。
「マジマさぁん!丁度よかった!君を探してたんだ!」
「え?え?なに?」
「マジマさんって軽音部なんだよね!?実はさー俺ら文化祭に出る為にバンドメンバー探しててさぁ」
「バンドメンバーかぁ、うーん。ちょっと待ってね?」
「はい!いくらでも返事を待ちます!」
タッタッタッ
「なんで俺ら待たされてんだ?もしかして逃げられた?」
「なんてこと言うんだタカタカ!あのいい人オーラを醸しているマジマさんだぞ!そんな訳ない!」
「えぇ〜待たされてる理由がわからな」
「お待たせしました〜!」
「え?なによミキ?なんで自分の教室に呼んで。」
「この娘はミツタシオリ!私の友達!シオリちゃんが軽音部入るって言うから私入ったんだ!」
「え?え?ミツタ…シオリです?よろしくお願いします?」
「…」
「どうした?おいカワハラ?」
「…一気に2人も!これは4人でもうバンドしよ!運命!ディスティニー!交響曲第5番!」
テンションバカ上がりだなおい。
「シオリちゃんも音楽が大好きでね?シオリちゃんが軽音部入る〜って言ったから私も入ったの!」
「っていっても私もは軽音ってか元々吹奏楽じゃん!あの吹奏楽特有のガチガチの雰囲気が嫌でなんとなく軽音に入ったっていうか…」
「でも!音楽嫌になってないから軽音部には入ってるんだよね!」
「そう…だけど。」
「そ、そうなんだミツタさん、良かったらでいいんだけど一緒にバンドしてくれない?」
「ごめんけど私名乗ったんだよ?名前ぐらい教えてくれない?」
「それもそうだね、俺はヨシタカタカヒロ、こっちのうるさそうなのがカワハラトウカ。」
「ヨシタカ?あぁ噂の部長の弟さんか。」
噂!?もしかして昨日のコトウとの出来事がバレてる!?確かに口止めはしてなかった気がする…
「噂ってなんだよ…」
「いや部長のブラコンぶりで有名になったでしょ。部活体験のときにその場にいた人間全員があんたのこと知ってるわよ。」
まじか…姉ちゃんがいない時に体験いったから知らなかった…でもまあそっちの噂ならセーフかな、アウト寄りだけど。
「と、とりあえず一緒にバンドやらない?嫌になったなら途中で抜けてもらっても全然いいよ。方向性の違いとか体験したことないけどあるみたいだし。」
「…そうね、今からなら途中でやめても取り返しつくし…わかったわ。」
やめる前提かーい。
「やったね!シオリちゃん!一緒に音楽やってくれる人ができて!丁度良かったわ!」
「マキ?なんで人事なの?かなぁ?」
「えぇ!?私もやるの!?」
「そうだよ!?マジマさんむしろこの流れでやらないつもりだったの!?」
「バンドなんだよね?文化祭で人前で出るつもりなんだよね?…私には無理かなぁ無理無理!あはは」
「…」
なんか違和感…
「確かに私は一緒に入ってくれるだけでいいって言ったけどさ…お願い!どうせ暇でしょ!マキさま〜!」
「俺からも頼むよ〜マジマさぁん!同クラのよしみで!!!」
「えぇ!?えぇ〜ぇ〜…」
この人がいい人すぎて断れないタイプなのか、それとも…
「マジマさん、マジで暇な時だけでいいんだ。ミツタさんと同じように途中で辞めてもらっても構わないからさ。何もすることがないならやってみない?」
「…そんな言われるなら…私やる…」
「まじか!?!?マジマさん天使!!エンジェル!!メフィスト!!!」
「カワハラそれは悪魔だ。」
「マキさっすが〜!帰りに行くキャラメルモカフラペチーノ奢ったげる!」
「もうシオリちゃんのせいだから!!ありがとう!」
「よし!じゃあこれでバンド結成!とりあえず4人でやるか!!いつからやる?明日?でも〜明日俺バイトあるだよね〜ごめん!」
「あ、あの。」
「ん?どしたマジマさん?」
「テスト終わってからでもいい?」
「あ」
そーでした。来週テストでした。
「モチベかえぜよおおおおおうわあぁぁあ」
「そうだよね、わかった。とりあえず再来週の月曜でいい?」
「うん!わかった!」
とりあえずバンド出来そうな人数がこれで集まった。以外と簡単だったけどもマジマさんに対する微妙なこの感情はなんだろな…まさか!これが恋!?!?
そんな浅い陽キャの様な感情は俺は抱かないってか抱きたくない。なんだろうかこの感じ。
ご愛読ありがとうございました。




