2話
軽音部、ヲタク、元サッカー部のどこにでもいそうではあるけど結構珍しいタイプの高校生ヨシタカタカヒロ。誰もいないであろう電車の中で大人気ソシャゲFGODをやろうとしたがイヤホンの故障からか萌え声のタイトルコールを爆音で電車の中で鳴り響いた。
そんな電車の中に実は同じクラスのコトウナオが乗っていて…
「タカヒロくん?それ読んでるの?」
「え?ああっこれは」
バサッ
「何この絵…」
「いやっこれは絵は露出多いんだけどちゃんとしたファンタジーでここは主人公が告白した後の重要なシーンであって」
「ふーん、、、なんかごめん。こんなオタクっぽいの読んでるんだ。イメージと違うね。」
「あ…」
何こんな時に昔の嫌な思い出を思い出してるんだ!
女ってのはデリカシーがない!偏見を持たないと思ってはいたがなんで人のプライバシーを覗いてくるんだ話しかけてくるんだ!
「これって…もしかして…」
今同じクラスのコトウさんに俺の趣味がバレそうになってる詳しくは1話を見てくれ。
どうしようどうしようどう言い訳しよ
「FGODだよね!!!!!!!!」
え?
「あぁ、うんそうだよ汗汗汗」
「へぇー!なんか意外!もしかしてお姉さんの影響?」
「そうそうそうそうそう」
「私もやってるんだー!フレンドなろうよ!」
「いや別に俺は自らやろうとは思ってないよ、ただ姉ちゃんがやれってうるさくてね、いや〜姉のヲタクっぷりには俺も勘弁して欲しいよホント。」
「?ヨシタカくん?」
「はいぃぃぃぃぃいい!?なんでしょう!?」
「動機がなんであれ同士を見つけられて嬉しいよ!フレンド!フレンド!」
「わかりましたぁ!!!!」
これは…回避成功??????
良かった1人殺さなくてよくなったな、こんな可愛い子を殺すなんて世界の損傷に当たるからな!!
「というかなんでこの時間に帰ってるんだ?いつも俺1人ぐらいしかいない時間だし。」
「委員会があったんだ。図書室閉めるまでの貸し出し係。」
「図書委員って残らなきゃ行けないのかよ…ならなくて良かった。」
本当はなりたかったけど図書委員ってなんかヲタクっぽくね?という酷い偏見を持っていたためなるのをやめた。
「部活に入ってる人は基本貸し出し係を免除されてるから私みたいな何の部活にも入ってない人がするんだよ〜。よしフレンド成立!結構レベル高いねぇ〜」
「レベべべべべレベルね!これは〜あれだよ!姉ちゃん受験勉強に専念したいって言ってたから代わりにやっといてくれってあれだよ!アカウントの引き継ぎ!貰ったの!アカウント!」
「お姉さんのねぇ〜、いいなぁ〜」
「え?何が?」
「ヨシタカくんのお姉さんみたいなお姉さんが欲しいなぁ〜って。」
「え?そうなのか?」
「そうだよ〜有名人だよ?部活動紹介ライブの時に堂々とアニソンをバンドでやってさ?カッコイイ感じの曲だったしマイナーアニメのOPだったから殆どの人は気づいて無かったけど相当原作再現してたのよね。」
知ってる〜全く同じ服装で演奏してたから我が姉ながら少しイタイと思った。
「それにね、見ちゃったんだ。」
「何を?」
「弟のあの微妙な顔。」
「微妙ってお前。」
「いや別に貶してるわけじゃないんだよ!?ただあのお姉さんの楽しそうな演奏をして周りが盛り上がってる中であのヨシタカくんのなにやってんのばっかじゃねーのって思ってそうなのになんか微笑んでてなんか…なんか…こうお姉さんのこと好きなんだろうな〜って感じを表現しきれなくて微妙って言ったって言うか」
「そうだね、結構好きだよ。」
「え、もしかしてシスコン?」
「尊敬だよ!リスペクト!」
「ふーむ、、、」
「あんなに自分の好きな事に没頭して好き勝手やってみんなに認められて、俺もあんなふうになりたいなって…何言ってんだろな!俺!ははは」
「なんかその言い方あれだね?素直に笑いきれなかったのはヨシタカくんが成れなさそうな、成らなさそうな言い方だね?」
なんだこの人は
「どうゆうことだ、あれだのなんかだの語彙力無いようで難しいことを言うな。」
「ごめんねぇラノベの読みすぎか変な言い方にハマってるのかな。でもね、ヨシタカくんはなんか変わる気がない…みたいな感じがする。またなんかって言っちゃった、気が触れたなら謝るよ。」
「いや…いいよ。」
なんか見透かされてんな、嫌だねぇ…
「でも同じだね、私も全力で好きなことしてるあなたのお姉さんに憧れたんだもの。」
「そっか…」
ガタンゴトン〜ガタンゴトン
自ら静寂を作ってしまったやばいぃぃぃ
こいつが変なこと言うから少し気がたったけど冷静になったらなったで気まずい今日は無言が多いなこんなコミュ障だったっけ俺ぇ!
「そう言えばFGODはコトウさんの友達はやってないのか?クラスのヲタク男子どももやってるみたいだけど。」
「あ、あれってどっちかって言うと男性向けじゃん?可愛い女の子が多くてさ。それにクラスのあの人たちちょっと怖くて…ね?」
まー確かに推しを当てるだけで昼休みガッツポーズし出すやつなんざ怖いわな俺も怖い。
「それに…ね。私も可愛い女の子になりたいんだ。
」
じゅーーーーーぶん可愛いですよコトウさんんんん
「どうして?変な夢だな。」
「中学生までね、私身体が弱かったの。今もまあまあ体調崩しやすいんだけどね。その時に外に出れず学校にも行けなくてね、とりあえず勉強ばかりはしてたんだ。」
「…」
「そんな時に」
「そんな時に出会ったのがラノベだのアニメだの、でその中にでてくる女の子たちが恋愛したり戦ったりしたりして何かを成し遂げたり楽しく日常を過ごしたりするのに憧れた。それが可愛い女の子になりたいって事か?」
「なんでそんなことわかるん!!!!エスパー!?!?」
「いや流れ的にそうだろ。」
「結構いい話しようと思ったのに台無し!」
「いや普通にいい話だよ、ありがとう。」
「ど、どういたしまして?」
そんな過去があったなんてな…
俺も昔の事コトウさんに話してみようか。
「コ、コトウさ」
「あ!次私降りるんだ!フレンド登録ありがとね!」
「あ、ああ。」
タイミング悪!俺の葛藤(1行)返せ!
「ふふっ」
「なにわろてんねん。」
「なんかヨシタカくんがこんなに話してくれるなんてって思って、いつもダウナー系じゃん?」
「コトウさんとこんなに話した事ないから素が出せてなかったってだけよ。」
「そっか、ねぇタカタカくんって呼んでいい?」
「いいけども。」
嬉しいぃぃぃいいやたーーー!!!!
プシュー
「それじゃあね!あ!それとこれ!」
「なにこれ?本?」
「おれせいの1巻!学校にいる間に読み直したから貸したげる!アニメも最終回までやったからよかったら見てね!」
「おう、時間があったらなー」
ラノベも4回は16巻まで読み直しましたー
もう語り尽くせますー
手を振ってコトウさんと別れた。
5回目見直すか…これ。
ってかコトウさん自分の趣味を無理強いしないんじゃなかったのかよ。
あの娘が可愛いから悲劇のヒロインに見えて来ただけで俺が昔の嫌だったこと話してもただのブサイクの卑屈にしか聞こえない…か。
〜ヨシタカ家〜
「ただいまー」
「おかえり!兄さん。」
「タカト、いたのか。」
ヨシタカタカト。中学2年生、1年生の頃からサッカー部のレギュラーを貼っており顔はどことなく俺と似てるはずなのに何故こんなにも爽やか度が違うんだ。
ちなみにこの兄弟の中で唯一の非ヲタ、純度百だ。
「早いな、部活はなかったのか?」
「朝練はあったけどそこでね、手をやっちゃったんだ〜今日は休めって。」
「怪我したのか!?大丈夫か!?」
「だ、大丈夫だよ…ブラコンだなぁ兄さんは。」
「うるせ、大丈夫なら良かったわってか料理すんなし変われ。」
「ありがとう。兄さん。」
「おうよ。」
うちは両親共働き。俺と姉ちゃんが面倒見いいってなってから更に夜遅くまで働くようになり少しでも負担を減らせるよう姉弟で家事をやっている。
「兄さんこの本はなんだい?」
「ちょっちょまっちちょっち」
「あぁこの手の本か、丁度僕も怪我して暇な時間増えそうだし貸してくれないか?」
「やめろ読むな絶対やめとけ。」
「えぇ…そんな言うならやめとくよ…」
この弟には俺と同じ道を歩ませたくない。
「たっだいまー!!!」
「姉さんおかえり。」
「姉ちゃん、夕飯作るの手伝ってくれ。」
「タカヒロ!おかえりをいえー!」
「はいはい、おかえり。」
「おかわりーーー!!!」
「自分でつげよ!」
「まっさかタカトが怪我するなんてね〜!」
「あはは…僕もいつの間にか手が腫れてきて原因すら分からないよ。」
「タカトはお兄ちゃんみたいになるなよ〜?」
「なりたくてもなれないよ。」
「ならせてあげねぇよこんな兄にはな。」
「なんでさ、兄さんとサッカーをして楽しいって思ったからサッカー続けてるんだよ僕は。」
「それじゃあその大好きなサッカー様のために早く怪我を治すんだな。」
「…ありがとう兄さん。」
そう、弟は俺のようになるべきではないんだ。
「じゃあ僕は次の練習試合のためにチームのポジショニング確認するね、あんまり第三者から自分のチームを見たこと無かったしこれも勉強になるよ。」
「怪我をもポジティブに捉えられるお前をまた凄いやつと思いましたそのままおやすみ。」
「おやすみ。」
「タカヒロ、大丈夫?」
「え、ええ?何が?」
「いやぁやっぱ気にしてんのかなぁって、丁度今のタカトと同じ時期だったし。」
「タカトは大丈夫だよ。俺のダサい理由とは違うし。」
「ダサいとはいえ怪我は怪我だったでしょ?」
「やめてくれ、それに俺はタカトと違って最初からレギュラーでもなかったし。」
「その割にはあの時凹みまくってたけどねw」
「終わり!この話終わり!とっくに立ち直ってる!」
俺の悲劇エピソードなんてほんとにしょーもない事ばかりだ。今日もどうでもいい事でヲタクがバレる事だったしめちゃくちゃなダメ人間だよ俺は。
〜中学時代〜
「おい!タカ!行ったぞ!」
「りょ〜かい。ほい」
「ナイスパス!」
バシー!
「ゴール!七垣同点!見事武田のドリブルシュートによる華麗な同点ゴールです!!!」
「ナイスパスだったタカ!」
「いやいや武田のポテンシャルあっての事よ。ナイスプレー!」
俺は健全なサッカー少年だった。元々中学のサッカー部は強い方ではなかったが俺の入学と同時に監督が代わり、その監督の指導を受けたいがために強豪サッカーチームからうちの中学に入学したやつが多かった。俺は目立つ方ではなくバックに入って相手を止められる程のフィジカルはなく、フォワードにはなりたくなかったからミッドフィルダーになった。
消去法ではあったがたまたまパスだけは自信があったからその強い奴らに綺麗にパスするだけでチームには貢献していた…と思う。
しかし夏の練習試合
「タカ!頼む!」
うげぇまじかよ…
チームの穴を突かれたのか3人のフォワードが全員マークされており自分自身でゴールまで詰めなければならなかった。
シュートを決める練習はしてきた、むしろフォワードがマークされてる分残り2人程しか残ってない、今までぬすけたプレイをしていた自分をアピールする大チャンスだなと直ぐに切りかえドリブルして駆け上がっていった。
そのときだった。
ただの相手のスライディングだった。1人目を危なげなく避けた先に油断してボールを取られた。
「おいおい横に全速力で俺が上がってだろ?タカらしくねーなぁ、ドンマイ!」
「あ、ああ悪い。」
その日の試合は勝った。帰りのバスの途中だ。
腰が痛くなった、歩く度に激痛が走りバスを降りるのにも一苦労だった。
「おいタカ、大丈夫か?」
「大丈夫だって、スライディングで転んだぐらい。」
大丈夫じゃなかった。相当やばかった。
俺はジジイか、こんなのすぐ治るだろうとその頃は思っていた。
「腰痛って簡単に治らないもんだなぁ…」
なんでよりによって腰痛で練習を辞退しなきゃいけねぇんだよもっと他にあったろ骨折とか!
こんなのダサすぎるだろ…
そして俺の穴を埋めるのに恐らく監督が呼んだであろう1年生ミッドフィルダーが入っていた。俺みたいに精密なパスは出来ないようではあったが自身の判断力とフィジカルを持ち味として得点も決めてくれるような頭もキレるような奴だ。
そして冬辺りになってインターハイも終わり、新チームが始動するようになったが、俺はもうレギュラーではなかった。
監督は俺に失望すらしてない。あの1年を育てようとしか思っていないように見えた。
「先輩…大丈夫ですか?」
「俺みたいなぬすけがレギュラーになるより、あいつがレギュラーの方がチームの為になるだろ!」
泣きたかった。悔しいかった。でもあの時の俺はこんなダサいことでレギュラーを取られダサい理由で悔しがるなんて出来なかった。
なんで人間ってカッコつけたがるんだろうな。
別に腰痛が悪化した訳でもなく3学期始まってそうそう部活に行くのをサボりの言い訳に腰痛を使った。風邪気味といって学校にすらしばしば行かなかった。
ぽっかり穴が空いていた。対してサッカーが好きだとは思っていなかったつもりだったが仮にも小さい頃からずっと続けていた為、なんとなくレギュラーになれていたからそれが当たり前だと思っていた。
レギュラーになりたくてもなれないやつの気持ちなんて分からなかった。とんだクズ人間だなと自分を悲観することしか出来なかった。
「そんなときにお姉ちゃんがアニソンとラノベとか教えたのよねぇ〜!!」
「うわっなんだよ!!」
「勝手に回想入るから私置いてけぼりじゃん!!」
「黙れ黙れ!大体音楽を教えてあげる!音楽聞けば気分転換になるっていってその音楽がアニソンだったなんてしらなかったんだよ!!!」
「でもかっこよかったでしょ?ちょっと卑屈な歌もあって中2のタカヒロにはピッタリな痛々しい曲もあったでしょ?」
「作曲家に謝れ。」
「なにか別の物にハマらせてあげてしんぜようって思ったのに音楽の方ではなくラノベ、アニメ方面にハマっていくのはお姉ちゃんもびっくりしたけどね!」
「音楽にもハマってただろ!それにアニソンと一緒に原作勧めてきた姉ちゃんが悪い。」
「でもそれで元気になったじゃん!部活も引退まで続けてくれたしさ!」
それは途中で辞めるなんざ更にダサいと思ってた。
今思えば部活サボってたこと自体が1番ダサいんだよな。
「タカヒロがサッカー部入らずに軽音部入るって言った時はさらに驚いたよ。やりたいこと見つかったのかよく分からないけど。」
「…姉ちゃんがあんなに楽しそうにしてるの見たらやってみたくなったんだよ。」
「あらまあ素直!基本クズのタカヒロが!お赤飯炊こうかしら。」
「茶化すな、クズと言うな、やりたいことかは分からない。けど新しい事に挑戦するキッカケになったよ。ありがとう。」
「………どういたしまして。」
「あっれー!姉ちゃん照れてる!?珍しー!アイス食べようと思ったけど既にあまあまー!!!」
「ちゃかすなー!!!!!!」
ヲタク趣味にハマったせいで少し色々あったけども、元気付けようとする姉のお陰で今まで触れてきて来なかったもの、毛嫌いや偏見、新しいことをやってみようかなって気になれたよ。
…ふと昔のことを思い出して気づいたが
「俺ってフォワードになりたかったのかな。」
感情を押し殺してたのはいつからだったか。
ご愛読ありがとうございました。




