表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/14

8話 紅蓮の鬼姫


『紅蓮の鬼姫』


 それが彼女の二つ名である。


 マザーから生み出されしモンスターとの戦いにおいて鬼の如き働きを見せ、

 固有魔器の属性が『火』であることから紅蓮の名を政府から貰い、

 その美しさから姫と呼ばれる彼女。


 名を赤院 クレハ。


 彼女は数多の活躍の末、現役を退いたがその力は健在。

 現在は、ここソルム学園の学園長という立場についている。


 そして彼女こそが俺を拾ってくれた恩人である。


「失礼します」

「入っていいわよ」


 学園長室の戸を叩き、女性の声が返ってきたので俺は静かに戸を開く。


「お呼びでしょうか学園長先生」


 学園長室で俺を出迎えたのは、

 髪を腰まで伸ばし、その髪は二つ名に相応しい紅蓮の如く綺麗な紅。

 姫の名に恥じない整った顔立ちの可愛いではなく、美しさを感じさせる彼女こそがクレハその人である。


「もう、二人きりの時は違うでしょ?」

「·····はい、クレハさん」


 昔、俺が家族をモンスターに殺された時、助けてくれたのが彼女である。その時俺は気を失っていたのだが、目が覚めた時パニックに陥った俺を優しくしてくれた。

 それから育ての親として俺を養ってくれているのだ。そして俺がソルム学園にいれる理由でもある。


「今日呼び出した理由は分かっているかしら?」

「はい、実力テストの話ですよね?」


 先日行われた実力テストにて、C級である俺がB級である悪を倒したのは既に学園中に知れ渡っている。

 大半の生徒たちが何かしらの不正をしたと結論づけて俺を敵対視しているのだが、恐らくクレハが俺を呼び出したのはその件だろう。


 つまり、どうやって勝てたのか。


 という話だ。この話をされると前もって予測出来ていたので今回はアンリを寮に置いてきた。

 俺の体の中にいるとバレればアンリのことを言及される可能性があるからだ。


 あの『紅蓮の鬼姫』のことだ。

 他人の些細な変化すらも見逃さないであろうしな。


「今回の実力テストにおけるツカサくんの勝利·····」


 プルプルと震えている。

 きっと怒りに耐えているのだろう。


「とっても素晴らしいわぁ!」


 ·····えっ!?


「え? あ、あの」

「さすがツカサくん、私の息子だけあるわ!」


 クレハは俺の話を聞かずに大いに盛り上がっている。


「えっちょっと!?」

「どうしたのかしら?」

「俺がどうやって勝ったのか聞かないのか? ほら、噂になっているだろ!?」


 しかし、俺の叫びをなんの事か分からないと言った感じで小首を傾げるクレハ。

 可愛いけど、可愛いけど·····!


「あら、ツカサくんが誰よりも練習していたのは知ってるわ」

「そ、そうだけどさ」

「それに――」


 そこで止まり、彼女は学園長が座る高級なイスから立ち上がり、俺の元へと近づいてくる。


「――それに、ツカサくんがなにをしたにしろ、あなたが勝った事実は変わらないわ。もっと、堂々としてなさい。もしかしたらC級から上がれるかもしれないのよ?」


 それだけ言うと、彼女は俺を抱きしめる。

 抱きしめられる度に、豊満に実ったたわわな果実が俺の胸を刺激して頬に熱がこもる。


「とりあえずおめでとう。私の話はこれで終わりよ」


 長かったような短かったような抱擁から解放された俺は学園長室から出る。

 が、そこをクレハが止めた。


「あ、あと、辛かったら私たちの家に帰ってきてもいいのよ?」

「いえ、心配は無用ですよ」


 そして俺は今度こそ学園長室を出た。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ