7話 実力テスト
よしっ、今日は待ちに待って·····はないが実力テストの日だ。
防御魔法も身体強化もある程度は完成にまで至った。
後はいかに立ち回れるかだけだろう。
「ではこれより実力テストを始める」
担任の教師の一言により、全員のやる気がみなぎる。
それも当たり前だ。ここで努力と研鑽の成果を認められれば昇格だってありうる。
「じゃあ一組目始めっ!」
実力テストは一日をかけて行われる。
内容としては1体1のバトル。魔器の使用を絶対条件とした戦いだ。
今回の俺の相手はあの悪だ。
B級の中でも上位の力を誇るアイツにどこまで俺の魔法が通じるかたのしみでもあった。
『というか魔法を使って負けることは有り得んだろ』
なぁ、時々思うんだがちょくちょく俺の思考に口出すのやめてくれないかな?
『仕方がなかろう。ツカサの心は私にも伝わってくるんだよ。それに――』
それになんだよ。
『ツカサだってお主誰に状況や実力テストについて説明してるんじゃ?』
仕方がないだろう。そういう事をしなければならないんだ。
『まぁ深く突っ込むことはしないが、程々にな?』
はあ、分かったよ。
『うむっ、よろしい』
なんかコイツ上機嫌だな。
まぁいい。
このやり取りの間に俺の順番が回ってきたようだ。
「じゃあ次の組」
「はい」
そして俺は教師の元へと向かう。
基本戦闘においてはこの特設リングの上にて行われる。ちなみに特別製なのでちょっとやそっとじゃキズ一つ入りやしないものだ。
「では開始」
教師の言葉を合図に実力テストが始まった。
「おいツカサぁ、そんな汎用魔器で俺の魔器を壊せると思ってないかぁ?」
·····挑発か。
いつもなら心に刺さるが、気にせず汎用魔器を構える。
今回チョイスしたのは刀状だ。というより刀しか使えない。一番練習できる武器が刀だったからだ。
「悪も構えたらどうだ?」
「ほぉ言ってくれるねぇ。じゃあ俺のカナボウにどんだけ耐えられるか見物だなぁ」
わざと大きな声でクラスメイトにも聞こえるようにしている。
この声にクラスメイトたちは揃って嘲笑を浮かべるが、俺にとってはそれも意味をなさない。
「――ッ! 気に入らねぇな」
その一言と共に悪はカナボウを肩に乗せる。
『カナボウ』は名前の通り金棒状の魔器だ。恐るべきところはその攻撃力にある。
恐らく·····いや間違いなく一太刀打ち合えば俺の汎用魔器は折れてしまうだろう。
だが、
「おぉらよっ!」
悪がデタラメにカナボウを振り回す、大方俺の汎用魔器を破壊して絶望させようって魂胆であろう。
『使うか·····ツカサ』
もちろんだ。
「《固くなれ》」
「あぁ!?」
そして俺はカナボウを打ち合う。
「どういうことだ!?」
悪は驚いている。が、しっかりとカナボウで俺の攻撃を弾くあたり冷静さは残っているようだ。
これは身体強化の派生、武具強化である。
要領は身体強化と同じで、魔力を薄く纏わせるのだ。これにより耐久度がアップする。
「しゃらくせぇ!」
悪が思いっきしカナボウを振り、俺の汎用魔器に当てる。
くそっ振動が伝わってくる。が、離してはダメだ。
「《速くなれ》」
「クソっなんだそれ」
俺は足に身体強化を発動。
剣技の一つである【縮地】を使う。
「そこだ!」
「チッ! やらせるかよ」
やはりB級っていう階級は伊達じゃない。
C級の俺に本来なら勝ち筋は一つも無いだろうが――
「《力よ強くなれ》」
腕に身体強化で筋力増強。パワーを増した状態で打ち込み続ける。
「ぐっ、突然力が·····」
バランスが崩れ始めてきたな。
『決めろツカサ』
任せとけ!
「【一閃】」
横薙ぎをすれば、汎用魔器は悪の横腹を突いた。そのままリングの外へ、つまり場外へ吹き飛んでゆく。
「ぐうっ」
悪の鈍い声が聞こえてくる。
辺りは見えないが恐らく驚いていることだろう。
「そこまで!」
教師の一言により俺は実力テストを終えた。
ここから少しずつツカサの評価が変わり始めます。