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5話 一心同体


「うっ、うーん」


 ゆっくりと俺の意識は覚醒していく。

  あ、あれ? 辺りを見渡せばいつもと変わりない自分の部屋。


 昨日·····確か·····


  初めて魔法を使ってそれで·····


「あっそうだアンリ!」


 会って一日しか経ってないが、俺に魔法を教えてくれた人だ。

 その時、呼吸音が耳に入ってくる。そこに視線を飛ばせば


 一定のリズムに揺れた肩。艶やかな黒髪から覗かせる恐ろしく整っている横顔。


「おーいアンリ」

「ん、んぅん」


 優しく呼びかけるがまるで起きようとしない。よく見ると目元には隈が出来ており、あれから俺の看病をしてくれたのがよく分かる。


 ··········――それにしても不思議な人だ。夜中に俺を呼びかけ、俺にしかメリットの無い魔法の口伝。

 そして俺やアンリが倒れてしまった原因も含めて全てが不思議だった。


 まだ一日しか経ってないのに·····ん? 一日?


 我ながらに思う程のぎこちない動きで枕元にある時計に目線を転じればそこにうつるは7に指された短針だった。


「やっばっ!! 学園がぁ」


 急いでベッドからはね起き、クローゼットに仕舞われた予備の制服に着替え、飯を作ろうと冷蔵庫を見れば――


「そうだ。昨日の野菜炒めで無くなっちまったんだ」


 仕方がない。


  朝飯抜きで行くとしよう。が、一応アンリに声をかけておく。


「おい、アンリ。俺、学園行ってくっからな」

「うぅん、何をそんなに焦っている?」

「焦るだろ!? こっから学園にある俺のクラスの教室まで行くのに結構時間がかかるんだよ!」


 しかし、俺の焦っている原因を聞いてもアンリは眠たげそうに目元を擦るだけだ。


「だァかぁらぁ、ツカサには魔法があるだろう?」

「あっ·····」

「昨日の今日で忘れてしまったか?」

「でもさ、魔法使ったら昨日は意識が飛んだぞ?」

「それは魔力欠乏症だ」

「なんだそれ?」

「魔力つまり体内にある魔素が急激に減少してしまった時に起こる現象だ」


 でもそれだともう一度魔力欠乏症になるんじゃないか?


「ツカサたち人間の体には体内にある魔素は少ないが故に魔力欠乏症に陥りやすいのだが、ここで私の出番という訳だ」


 上半身を少し反らせ、胸を張るアンリ。

 ·····なんか可愛いな。


「そして話を戻すが、私はお前を欲しいと昨夜言ったな」


 そうだな。確かに言っていた。


「その話も関係している。私は魔素で作られた人間型の生命体でな。俗に言う人造人間というわけさ。なのでお前の体を私に使わせてくれ」


 ·····うん? 人造人間? 使わせてくれ?


「ちょっと待ってくれ! そうすると俺の体は俺のものじゃなくなるのか?」

「すまん言い方を間違えたな。そうではなくて宿主になってくれという訳だ。私はお前の体内で魔素を提供してやる、代わりに私をお前の体の中で休ませてくれ」


 だが、そうすると――


「お前の体が消滅しないか? 魔素を使うんだから」

「いや大丈夫だ。定期的に外に体の一部を出せば、空気中に含まれた魔素を取り込むことが出来るからな」


 そうか。まぁ今のところアンリのせいで実害があるという訳でもないし、第一、魔法を教えてくれる代償で俺が呑んだ条件だ。今更ヤダなんて言わない。


「よし、なら俺の体内に入ってくれ。·····というかどうやって入るんだ?」

「手と手を合わせれば行けるぞ?」


 言われた通りに俺はアンリの手を握る。やはり柔らかいな、本当に人造人間なのか?

 すると、アンリの体は黒い霧となり、それが俺の体にへと侵入してくる。


『これで完了だ』


 うぉ!


『何をそんなに驚いている?』


 あれ? もしかして俺の心が読めるのか?


『当たり前だろう? 今私とツカサは一心同体だ、だから私の心もお前は分かるぞ?』


 何とも便利なものだ。


『それより学園とやらはいいのか?』


 そうだ。やべぇ

 見ると7時半にさしかかろうとしている。


「そうだ。おい魔法ってよ、どこでもドアみたいな感じのもできるのか?」

『どこでもドアは分からんが、イメージと詠唱、魔法陣さえあれば、後は私の魔素を使い発動できる』


 よし、基礎魔法陣を描き、その周りに属性を·····そういやどこでもドアの属性ってなんだ? ドアだから木属性なのか?


『その場合は無属性の陣を付けたしな』


  無属性だと?


『そうだ。どの属性にも含まれないものを総称して無属性と呼ぶ。無属性の陣はほらこれだ』


 すると無属性を示す陣が頭の中に浮かんできた。


 やっぱり便利だな、一心同体って。


「これで完成」


 詠唱は··········よし出来たかな。


「《顕現せよ》《時空歪めし扉》《我が望みし場所へ誘わん》」


 そして長方形に魔力が分散し、目の前に広がるのは学園への入口。


 おぉ流石、魔法だ。


『やはりこやつ·····』


 アンリの呟きは俺の興奮によりかき消された。

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