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4話 初めての魔法


「魔法の発動には『陣』『詠唱』『魔力』の三要素が必要だ」


 手で三と示し、アンリは説明する。


「最初に陣の説明だ。陣は『魔法陣』と呼ばれ、魔法を発動するにあたり一番最初に考えなければならない」


 手頃な紙とペンを持つと、アンリはスラスラと描き始める。


「コレが原型だ。ここから一層、また一層とドンドンと書き増やしていくと解析不能の『魔法陣』が完成する」


 それが魔法に繋がるのか·····。


「手順としては、まず原型を書く。次の層に属性を示す、更に次に効果時間、範囲などを付け加えていくんだ」


 へぇ·····でも戦闘中に魔法陣を書く暇なんてない。それって――


「戦闘には不向きなんじゃないか?」

「そうだ。だからこそ次の『詠唱』が必要となってくる。詠唱はわかりやすく言うと魔法陣を言葉で表現することなんだ」


  頭が痛くなってくるな。そうするとつぎは魔法陣が要らなくなってこないか?


「お前の考えていることは分かるぞ? どうせ魔法陣が要らないとか思ってるんだろう?」


 エスパーかよ。


「それが違うんだ。そもそも魔法陣が完成していないと表現も出来ないだろ?」


 それもそうか。魔法陣を言葉で示すんだから、元々の魔法陣がないと示すも何も無いからな。


「話を戻すが、詠唱とはまず 《顕現せよ》 が第一節で最初に言わなければならない。これが魔法陣の原型の意味を指す。次に属性の意味を指す第二節をもってくる。例えば火属性なら 《偉大なる火よ》 的な感じだな。そして、範囲を示す時は·····そうだな····· 《神をも滅する》 でもいいな。持続時間は····· 《標的の命が散らん限り》 でもいい。とりあえず自分がイメージ出来ればいいんだ」


  話から察するにコレが必要な才能なのか? 魔法をイメージする力が長けていればいいということか。


「そして最後に魔力。コレが一番重要だ。魔力とは魔素のことを言うからな」


 んー? 分からんぞ?


「魔素と魔力は同一だ。体内の魔素を利用するんだよ」


 ややこしいな。そうならそうと魔素と言えよ。


「基本はこの三つだ。どれ手本を見せよう」


 そして紙に向かって手刀を振り上げる。


「《顕現せよ》《偉大なる風よ》《我が腕に疾風を纏わせ》《眼前の物を切り裂きたまえ》」


  瞬間魔法陣が手の上に現れ、腕を通ると風が腕に纏うように発生した。


 そしてゆっくりと腕を下ろしていくと、触れた瞬間に魔法陣が描かれた紙がまるで刃に切り裂かれたように切れた。


「おぉ! すげぇ」


 思わず身を乗り出して見てしまった。

  それぐらい俺には魔法は魅力的に見えたのだ。


「すげぇよアンリ!」


 そしてアンリを見れば――


「はぁ、はぁ」


  酷く疲れたように肩を上下に揺らし、額には汗を滲ませていた。


「アンリ? おい、大丈夫か?」


 やばいな。そこまで深刻って訳じゃないが、汗が多い。これじゃあ風邪を引くかもしれないタオルをっと。


  軽く汗を拭ってやると、もう大丈夫なのかゆっくりとアンリの様態は回復していった。


「おい大丈夫か?」

「あぁ悪かった。心配をかけてしまったな」


 ったく。とりあえず俺はお姫様抱っこの要領で抱き上げ、ベッドにへと向かう。


「あ、あれ? お、おい!?」


  アンリが困惑しているが関係ない。


  優しく病人を労りながらゆっくりベッドに下ろして寝転がせる。


「まだ辛いならとりあえずベッドでゆっくりしとけよ?」


 俺が心配して優しい言葉を投げかければ、何故かアンリはジト目で俺を見てきた。


「紛らわしいことをするな!」


  あっれぇ? 俺、心配してあげたのになんで怒られてるんだ?

  まぁそれを気にしたところで·····という話なので魔法を早速使ってみよう。


 女心は難しいものだと教わったのでスルーし魔法を行使するため魔法陣を描いていると。


「そんなすぐには出来んよ。いくら才能があろうと私でも時間はかかったのだ」


  嫌がらせなのか腹立つことを言ってくるな。

 そんなアイツの驚いた顔が楽しみだ。


「·····よしっ!」


 数十分の時間を要し、魔法陣を描き終わった。

 今回イメージするのは先程のアンリが見せたアレだ。


「《顕現せよ》《偉大なる風よ》《我が腕に疾風を纏わせ》《眼前の物を切り裂きたまえ》」

「だから無理だって·····えっ?」


 すると俺の振り上げた手に魔法陣が通っていく。それは先程俺が書き上げた魔法陣で魔法陣が通り過ぎれば風が纏った。

  そして紙に近づければ切り裂かれ、バラバラとなった紙くずが完成した。


「出来たァ!」

「嘘·····」


  どうだ! アンリ!


 ドヤ顔をアンリに向けると、アンリは驚きの顔から優しい笑みに浮かび変え俺の頭を撫でてくれた。

 それに動揺すればアンリが笑い出す。


「な、なんだよ?」

「いや·····まさか魔法を使いこなせるなんて思ってもなかったからな·····ここまで来ると笑うしかないよ」


  いつの間にか不機嫌なのは無くなり、アンリはにこやかに俺の頭を撫で続ける。


「魔法ってのは理を大事にしろ。さすれば魔法はツカサの全ての可能性を否定しない。モンスターだって、いや世界だって無双できるさ」


 その言葉を深く胸に刻み込んだのと同時に脱力感が俺を襲い、次いで俺の意識はだんだんと薄れていったのだった。

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