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2話 出逢い・2


 俺が手を握ると優しく握り返してくる。


 女性特有の柔らかさが伝わり、俺は緊張してしまったが、それも一瞬のこと。

  直ぐに我に返り、立ち上がる。


「それで、どういうことだ?」

「ああ、説明する前にお前の部屋に行かせてくれ、腹が減っているんだ」

「·····」


 あまりにもマイペースな彼女に俺は呆けてしまったが、時間も時間だ。

  俺も腹に手を当てれば音がなった。


「ほら、お前も腹をへっているだろう?」

「はぁ、分かったよ。その前に名前は? 呼びづらい」


 言動では悟らせないように少々ぶっきらぼう感が否めないが、仕方がない。

 そんな俺に彼女は笑って名前を口にした。


「アンリだ」

「そうか·····俺はツカサだ」


  互いの自己紹介が終わったところで俺は部屋へと向かう。

 正直、今さっき会ったばかりで警戒をしていないと言えば嘘になるが、俺をどうするかなんて部屋に向かう前――つまり、今でも実行出来るがしてこない。


  C級である俺にそこまで警戒する必要も無いだろう。故に俺は信じてみることにした。

 力をくれるといったアンリを·····。




 ソルム学園は全寮制である。

 それは、ひとえに結束力を高めるためにある。同じかまの飯を食って、生活を共にすることにより生徒――未来の兵士の団結力を高めるために


 しかし、それは力をもっているB級から上の奴らの話で、C級である俺に対しそんな思いは全員これっぽっちも思っていないだろう。

 一部俺と共に生活してくれる奴らもいるが、俺と関わり続ければどうなるか分からない。だから俺は基本一人で寮の生活を送っている。


 俺の部屋は差別されているかのように生徒寮の一番端の部屋に位置し、俺の部屋の近くにある部屋には誰も入室していない。

 徹底的な嫌われぶりである。


「ここだよ」

「ほぉ、なかなかに広いんだな」


 アンリの言う通り部屋自体は一生徒にはにつかわしくないが、なんて言ったって国立である。

 馬鹿ならない費用がかかっているのだ。このぐらいの豪華さであればそれも頷ける。


 俺の部屋はシンプルに整っており、必要以上に物を増やさなければ、出しもしない。

 自分で言うのもなんだが実に綺麗に整った清潔感の溢れる部屋だと思う。


「ほら、ではさっさと――」

「へっ?」

「『へっ?』ではない。飯を用意しろ。力が欲しいんだろう?」


 はぁ、思わずため息が漏れる。


 信じてみることにしても多少は警戒していたのが馬鹿みたいになってきた。


「なんだ? 今のため息は!?」


 どんだけ図々しいんだよ。


 しかし、不思議と警戒心はもう湧かなかった。どちらかというとめんどくさいという感想だ。


「簡単なものでいいか?」

「あぁ構わん」


 と言っても俺も料理は出来ない。一人暮らしとも言える今の生活である程度の『食える飯』は作れるが、自信はない。

 まぁ、作れと言ったのはアンリであって俺の料理の腕を気にしていないのだから、これで不味くても悪いのはアンリだろう。


  仕方がないと思いつつ、俺は料理に行動を移した。

 ご飯を炊きつつ、野菜と肉を切り、適当な味付けをふりかけ、野菜炒めを作る。

 ご飯もしばらくすれば炊き終わり、茶碗に盛る。もちろん俺は一人であって二つも茶碗がないので俺の茶碗によそりアンリに渡す。


「おぉ、なかなかに美味しそうではないか」


 そうだろうか? ご飯に簡易的な野菜炒めだ。


「まぁどうぞ」

「うむ、いただきます!」


 そう言ってガツガツ食べ始めた。

  ·····なんか見ていると懐かしい気持ちになるな、昔はよく家族でテーブルを囲って楽しく団欒したものだ。


「んー、おかわり!」


  早いな。


 苦笑しながらも俺は新たに飯をよそい渡すと勢いよく食べ続けた。




「ふぅ、ご馳走様」


 なんとも美味そうに食ったもんだから俺も腹が減ってきた。

 しかし、それよりも興味あるものがある。


「アンリ·····」

「ん? なんだ」

「力の話に戻りたいんだが」


 俺が話を切り出せばポンッと思い出したかのように手を合わせ、アンリは俺に向き直った。


「力·····そうだな。お前は世界を統べる力が欲しいんだっけか?」

「あぁ」

「何故だ?」


 何故? 何故かと言われれば夢のためとしか言いようがない。


「俺の家族はモンスターに殺された。モンスターを殺すには力がいる。それは悪や俺をいじめてきた奴らに仕返しするよりも遥かに強い力で、それこそ『世界を統べる力』が·····」


 モンスターを殺し、俺のような被害者を無くすのが俺の夢。

 モンスターは一体だけではない。何千何百と数も種類も豊富だ。だからこそ、全てのモンスターを駆逐するためにも世界を統べる程の巨大な力がいるのだ。


「·····そうか」


 顔を難しくしていたアンリの顔はふにゃと壊れ、優しい笑みを浮かばせた。


「それを聞いて安心した。では、力をさずけようか·····」


 そして俺は希望を胸に抱きながらアンリの言葉に耳を傾けた。

更新ペースは不定期です。

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