表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/14

13話 絶対支配計画


 目が覚めるとそこは、見知らぬ天井だった。


 上体を起こせば、ズキリと激痛が走る。


「いっつ……<迅雷装甲>の反動か」


 そんな痛みに耐えながら、上体を起こしきり、辺りを見渡す。

 どうやら、ここは医務室のようだ。四方はカーテンに囲まれ、俺が寝てたのは医務室のベッド。今まで、戦闘をほとんどしてこなかったので、無縁だったものだ。


 ──と、ここで俺は下半身に乗っかった重みに気づく。


「アンリ?」


 いつの間に、俺から出ていたのだろうか?

 

「ん……」


 どうやら、眠っていたらしい。俺の言葉に反応し、その綺麗な黄金なる双眸がパチリと見開く。


「あぁ、起きたか」

「おはよ……であっているかな?」

「いや、今は夜だ」


 カーテンのせいで、気づかなかった。アンリが立ち上がり、カーテンをめくれば、見慣れた月が俺を出迎える。


「この感じだと、心配をかけたかな?」

「当たり前であろう? ツカサは私の宿主だ。死んでもらっては困る」


 そこは嘘でも──


「当たり前だろう? 心配かけおって(むぎゅ)」


 そう言って俺に抱きついてくれたら、良かったのに。


「どうした? 雷のせいで頭をおかしくしたか?」

「おい、なんで俺の考えていることがわかったんだ?」

「私はお前と一心同体だったんだぞ? そのぐらい分かる」


 だったらやってくれても良かったのに……


「そうか。ならば、木属性の魔法でむぎゅっとしてやろう」

「それだとむぎゅっとじゃなくて、バキっと骨が折れるんですけど!?」


 そこまで言って笑い合う。


「ここまで、元気なら大丈夫だろう」

「……そういえばさ。俺ってどのくらい気を失っていたの?」

「うーん。だいたい一日ぐらいか、そこいらだったぞ?」


 それだと、姉さんやクレハさんがうるさそうだな。


「誰か、俺に見舞いしにきた奴はいたか?」

「……そこそこだな。まず、あの氷姫にどうかったのか? という疑問を聞きに来た生徒。あとは私の正体を聞きに来た生徒だな」

「それ、全員見舞いじゃないぜ」

「まぁあ、二人……女生徒と女教師。お前の姉さんと母さんは来たぞ」


 なら、先にそう言ってくれ。

 なんで、俺の気分を下げる事を先に言ったんだ。


「それは……私の勝手だろう!?」

「平気に俺の心と会話しないで」

 

 怖いわ。


「それよりも、アンリ。お前姿見せて本当に良かったのか?」

「前も言ったが、別にそう決めたわけではない」

「だけど、俺の体内に初めて入る時言っていただろ? 休ませてくれって。何かに追われていたんじゃないのか?」


 俺の言葉にアンリの顔が沈む。


「俺はお前の事を知らない。だが、お前が言いたくないのなら別に無理して聞こうとは思わない。だけどな、俺のせいでアンリがってことにはなりたくないんだ」


 アンリは驚き、そして一瞬顔を歪めた後、ゆっくりと語り始めた。


「私は、最初話した通り、魔素で作られた人工生命体だ。そしてそれを実行したのは政府だ」

「なんだと?」

「私の試験体ナンバーはE01。通称アンリと名付けられていた」


 語っているアンリは、少し身を震わせ、今のにも壊れそうで、消えそうな感じを纏っている。

 そんなアンリを見て、思わずその手を握った。


 握った手はいつになく冷たくて、凍えそうだったけど。手放さない。手放したくない。すると、少しだけだが、震えが収まった気がした。

 幾分か落ち着きを取り戻したアンリは続ける。


「モンスターとは、マザーと呼ばれる始まりの魔物の子供。モンスターの体を形成する物質の名が魔素ということは知っているな?」

「あぁ」

「だから、人間……政府はこう考えた──『魔素でなら人工的に人間を生み出せるのでないか?』と」


 俺は聞いててバカらしく思えてくる。


「なんの為にそんなことをしなきゃいけないんだ!?」

「忠実な道具が欲しかったんだ……」

「え……?」

「人間とは感情があり、感性があり、心がある。それ故に、モンスターの脅威から身を隠してしまう」


 ここ、ソルム学園にモンスターは来ない。

 世界最高峰の警備システムと、クレハさんの力により、我々生徒の目に留まる前に処理されるのだ。


「だから政府はこんな学園を創設したんだ。兵という名の道具を作るために……だが、それでも忠実な道具になるとは限らない。先程も言った通り、人には心がある。そう上手く思い通りにはならないんだ。だから作ることにした。感情や心を持たない兵……魔素による人工生命体を」


 なんだそれ?


「それは秘密裏に進行され、国家機密としてこう呼ばれていた──絶対支配計画と」

「絶対支配計画?」

「そうだ。その計画の唯一の成功例なのさ。私は……」

「アンリ……」


 手を握っているから分かる。

 彼女の心には、人間に対する恨みや憎しみなどの憎悪が渦巻いていることが。


「アンリ……何故お前はそこまで計画に熟知しているんだ? それに──何故アンリに感情が、心があるんだ?」

「それは──」


 ドゴォォン! と爆音が鳴り響く。


「これは?」


 医務室の扉が燃えている?


「ツカサくん……知っちゃったんだね? それを……」

「クレハさん!?」


 医務室に入って来んのはクレハその人だった。

ここから物語が加速していきます。

一応短期連載なので、あしからず。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ