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11話 氷姫の魔器


 ソルム学園とは、実力至上主義と前に説明したが、そう言われる所以は実力テストも一つであるが、やはり『決闘(デュエル)』であろう。

 基本、一体一の決闘スタイルで、相手の降参か、魔器の破壊で勝敗が決まる。


 決闘(デュエル)は、学園長と相互の同意があって初めて成立するもので、決闘(デュエル)中は授業はない。が、その勝敗によって成績が付けられるということがあって、好んでやる者は少ない。

 以前までの俺なら、絶対に決闘(デュエル)なんて了承しなかったが、魔法という力を得たことで姉さんとの決闘(デュエル)を受けた。


『ツカサ……お前に限ってないとは思うが、魔法という力は己の身も滅ぼす。決して、傲慢になるなよ?』


 わかってる。


『ならいい。急に力を得たことで、その力に溺れてもしたらその時は私が殺してでも止めるからな』


 怖いけど、いいよ。そんな事にならないから。


『私もそう信じたい』


 俺も、薄々感じてはいた。

 魔法を手にして、それに頼っていることに……


 だけど、今のアンリとの会話で確信した。

 俺はそんなことにならないと……俺が道を違えたら、アンリがそれを正してくれる。


 そしてまた逆も然り。

 

 アンリが、なにか問題にぶち当たったら、俺が助ける。

 もう俺らは見ず知らずの他人でない、友人でもない、運命共同体と言っても過言でないと思っている。


『おぉ、嬉しいことを言ってくれるな。少し恥ずかしいじゃないか』


 後、前々からわかりきっていることだったが、アンリが可愛い。

 まぁ、この話は置いといて、決闘(デュエル)の話に戻ろう。


 

 決闘(デュエル)が行われる場所については、学園に設立されている『決闘場』と呼ばれる場所を利用する。

 リングというものは存在していなく、感覚で言えば広い校庭であろう。


 決闘に使用する服は、制服でも構わないが動きにくいという事もあるので、戦闘服と呼ばれる、魔器と同じく渡される服を使用しても良いとされている。


 戦闘服は、所有している魔器に合った服の為、決闘(デュエル)では重宝される。

 そして、今はというと、姉さんの着替え待ちだ。


 俺はもう決闘場でスタンばっている。


 使用する魔器は、いつもの汎用魔器で、刀状のモノだ。


「ごめん……待たせた」


 どうやら、着替えが終わったようだ。


「別にいいよ。俺は着替える必要が無かっただけだから」

 

 先ほども言った通り、魔器に合った服を渡されるため、専用の固有魔器がない俺には当然渡されることは無かった。

 そんな、諦めの意味を込めた俺の言葉に、少し悲しげに眉を下げる姉さん。しかし、それも一瞬で直ぐにいつもの無表情に戻ったが。


「ツカサの力は強い。だけど、素直に負けるつもりない」

「わかっているよ。姉さん、俺について調べてきたんでしょ」


 俺の言葉に小さく頷く姉さん。


 俺の噂が出回ってから、しばらくして姉さんは訪ねてきた。

 その時は、いつものマイペースさ故だと思っていたが、それは違うと気づいた。


 姉さんは恐らく、俺の元に来る前にクラスメイトや、教師、俺の戦いを見た者たちの元に訪れて情報を集めてから来たのだろう。

 

 姉さんが、氷姫と呼ばれるのは普段の彼女の言動も名の由来だが、戦闘に置いて観察と思考を繰り返し、勝つビジョンが浮かんだところで、初めて勝負を申し込む。

 一度、戦場に上がれば、作業が如く、淡々と試合が運ぶことからという理由がでかい。


 だが、それも含めてあえて俺は勝負を受けた。


「さぁ、始めよう姉さん」

「ん」


 この戦いに審判はいない、いるとするならば観客だろう。


 今回、俺とあの氷姫が決闘をするにあたって、俺の無様な倒れ方を期待してか、観客が多い。


 これだけの大衆の面だと、不正することも難しいだろう。 

 まぁ、元よりそのつもりはないが。


「じゃあ、このコインが地面に落ちたらスタートで」

「ん、わかった」


 よし、空高くコインを弾き飛ばす。


 コインは回転しながら、そして重力のままに落ちる。


 コインが地面に落ち、跳ねる。


「<氷剣>」


 姉さんの魔器は氷属性という珍しい属性だ。

 水属性の派生であるこの氷属性と正面からやるのは得策でない。


 魔器の形状は双剣。スピードも兼ね備えているこの魔器は非常に厄介だ。


「《速くなれ》」


 双剣に対応できるようにスピードを上げ、


「《力よ強くなれ》」


 同時に力も上げる。


 これで──行こうとしたら、姉さんに先手を打たれた。


「魔器能力──<氷雪の世界>」


 足が……


「魔法の話を聞いて考えた。魔法には及ばないけど、一瞬の隙を作る技」


 氷属性を利用した擬似魔法だと!?


 範囲はそこまでないが、戦闘では一瞬の隙が命取りだ。

 見れば、姉さんが直ぐそこまできている。


 魔器を壊して、勝負を決める気か。

 汎用と固有のスペックの違いは、誰もが知っている。


 恐らく、当たり所が悪ければ一太刀で折れる。


「させるか──《感覚を》」


 感覚を身体能力強化の容量で比較的に底上げし、急な攻撃を避ける。


「<氷華の舞>」


 双剣による、連続技。

 剣筋が精錬され、それは舞の如く、俺に襲いかかる。

 

 舞なだけに避けることが至難であり、感覚を上げても、今ので数箇所かすり傷が出来た。


「やっぱり強いな……」


 今の技、一つ見てもあの完成度。

 研鑽に研鑽を重ねた姉さんの技。


「ツカサも今ので終わると計算していたのに、その魔法があるとは知らなかった」


 <氷雪の世界>からの<氷華の舞>であれば、俺だけでなくほとんどの生徒が負けるだろう。

 まぁ、姉さんの階級はA。それも当たり前か。


 しかし、負ける訳には行かない。

 逃げてばかりのあの頃とはもう違うんだ。


「だから、勝たせてもらうよ。姉さん」

「勝てるものなら、勝ってみろ」

まだ続きます。

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