1話 出会い・1
学園モノを書きたかったので書きました。
──綺麗だ··········
それが俺、新城 ツカサが初めて彼女に会って、抱いた率直な感想だった。
国立ソルム学園。
それが俺の通っている学校だ。ソルム学園は基本的に、実力至上主義である。
それはひとえにモンスターを殺すことが関係している。
ソルム学園とは、モンスターを討伐するための兵士を育てる学園であり、故に、兵士には階級が付けられていた。
階級──ランクには四つの段階があり、順にS級、A級、B級、そしてC級である。
そして俺は、C級だった。
それが運の尽きとも言えよう。その日、その瞬間から、俺へのイジメは絶えなかった。
C級──いわゆる〝落第生〟はソルム学園創立以来、初めての事であった。
兵士に対する全ての適性が皆無であると、学園から見放された証拠だ。俺に対する態度も、教職員から生徒まで一部以外の全ての者が俺を嫌っていた。
そして、例外に漏れず、今日も、俺はイジメにあっていた。
「オラよっ!」
「ガハッ!!」
俺が苦しむ様を、男子生徒五人が見て、笑っていた。
その嘲笑は高らかに響き渡る。俺をいじめて楽しんでいるのだ。
「おいおい、まだ始まったばっかだぜぇ?」
そう言って、俺の前髪を掴み、強引に起き上がらせる男子生徒。
霞む視界の中、捉えたのは金髪をリーゼントにまとめた男──伊地 悪であった。
その名の通り、〝悪〟であるコイツはイジメの主犯格である。
そんな悪が俺の頬を思いっきり殴った。
「──ブヘッ!」
「アハハハっ! おい聞いたか? 『ブヘッ!』だってよっ!」
「やべぇ、めっちゃウケるっ!」
「それなっ!」
俺は、殴られた頬を触りながら、上体を起こす。
「おいおいおいっ! まだ立つのか? 不適合者の割に体だけは丈夫なんだから」
「不適合者って、そこは〝落第生〟って言ってあげなよぉ」
「何を言ってんだ? それは可哀想だろ? 学園から見放された落第生ってよりも、社会不適合者の方がまだマシだろ?」
「ヒュー、悪は優しいね」
「そうだろ? なぁ、ツカサもそう思うよなぁっ!」
「グハッ!」
悪は無慈悲に、俺の顎を蹴りあげた。
それから、体感で一時間ほど殴られた続けた。
「今日はこれぐらいかなぁ」
「アハハハっ! やっぱ、悪は優しいぃ!」
殴られ、殴られ、殴られ続けた俺は立ち上がることすら叶わない。
そんな俺に、悪たちは唾を吐きかけ、笑いながら立ち去った。
················································································。
「──行ったか? いっつうっ!」
起き上がろうとしたら、激痛が全身を巡った。
仕方なく、寝転がる体制をとって、いつの間にか沈みかかった日を浴びながら、空を見上げた。
完全に夕方·····いや、そろそろ夜じゃないか? 俺の思った通り、しばらくすると完璧に日が沈みきり、夜になった。
いつの間にか痛みが消えており、やっと上体が起こせた。
「はぁ」
そんな俺に、ため息一つ。
次いで、知らない声が聞こえてくる。
「無様だな」
その声に嘲笑も、ましてや同情も含まれていない。ただただ、俺を見た感想であった。
その声の方へ向くと──
「あんなことをされ、悔しくないのか?」
この夜の闇にも似た、艶のある黒い髪をなびかせて、月の光と見間違うほどに輝いた黄金の双眸は俺の体を射抜いていた。
作り物と見間違うほどに整った端正な顔立ちと豊満な胸を持つ素晴らしいバディに、俺はついつい見蕩れてしまった。
──綺麗だ··········
少し時間が経てば、そんな美女に話しかけられ、我に返った。
「どうした?」
「えっ? あっ、いや、なんでもない」
間違っても見惚れたなどとは言えない。
「なら、いいんだ。さて、話を戻そう。──悔しくないのか? あんなことをされ、お前は何とも思わないのか?」
──何とも思わないのか?
そんな訳ないだろう。悔しいさ、見返してやりたいさ。
毎日、毎日、右も左も嘲笑や罵声の数々。そんなのに毎回見舞われたら、悔しいと思うのも当たり前だろう? でも、それを覆せないのも、見返せないのも、全ては俺。
そう、俺が悪いんだ。
俺を見て察したのか、美女は笑った。
「その顔は〝悔しい〟っていう顔だな。そうか、そうか。悔しいかっ!」
「当たり前だろっ!?」
「──なら、何故やり返さない? 何故、その立場に収まっているままなのだ?」
「··········やり返す力が、見返す力がないからだ·····」
悪はあんな見た目でも、B級であり、俺よりもよっぽど強くて、よっぽど期待されている。
そんな奴にやり返せるほど、俺は強くない。力があれば、そもそもC級じゃないだろう。
「ほう? 力を欲するか? ならば、問おう。どんな力を欲するか?」
···············どんな力、·····か。
見返すための力。やり返すための力。数えだしたらキリがない。
そんな中で、俺が一番欲しい力──
「··········世界を統べる力」
悪にやり返す、みんなを見返す、そんな力が欲しい。でも、そこで終わりたくない。もっとずっとその先へ。
·····俺の夢をその手で掴む、そんな場所まで行くために──
「ふふふっ、アハハハっ! そうか、世界を統べる力か」
「おかしいか? C級の俺がこんなことを望む事が·····」
「いや、人間とは欲深い生き物であるとは知っている。それがまさかここまでとは、な。と思っただけだ」
まるで自分が人間では無いみたいな物言いだな。だが、彼女の見た目は人間そのものだ。
そんな思考もかき消された。彼女が俺の元へジャンプしてきたからだ。
「··········私が、もし、そんな力を知っている·····と言えば私の手を取るか?」
唐突な話だな。
「私はその力を実際にして知っている。いや、持っていると言うべきか。私の手を取れば、それを与えんでもない」
「·····あなたにとってのメリットは?」
C級の俺に手を伸ばす人なんてそうそういない。更に、ここは学園の敷地内だ。余計にそんな可能性なんてない。
故にメリット。つまり、見返りを疑ったって訳だ。
そんな俺に、彼女は微笑みと共に言った。
「私はお前が欲しい」
「はっ!?」
「詳しい話が知りたいのなら、私の手を取れ」
俺は差し出された手を見た。
傷一つない綺麗で色白な手。
そんな手を、俺は無意識に握った。
どうだったでしょうかっと言っても、魔道士にもなっていないし、抱く感想は対してだと思いますが。
成り上がるまではそんなに長くしないつもりです。
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